タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2023/05/25 ゾロ
硝子の器に君の雫・鋭い棘を言葉で包む・ずるいほど可愛い
現パロ


「今度のデートここがいい」
「あ? どこだよ」

 乱暴な物言いで、ともすれば不機嫌なのかと勘違いされそうなゾロだけど、今までいじっていた携帯を置いてすぐさまベッドの上で寝転びながら雑誌を広げる私に近付いてきてくれる優しさがある。ベッドに片肘をついて反対側から覗き込んだゾロが眉を顰めたのを横目で見て笑いそうになるのを堪える。

「お前本当におれをここに連れて行きてェのか」

 全体的に可愛らしい内装に、甘いものしか載っていないだろうメニューばかりがずらりと並んだ喫茶店の特集ページを見つめて口をへの字に曲げたゾロに頷く。

「おれ食うもんねェだろ」
「じゃあペローナちゃん誘っていい? 好きそうでしょ」
「……デートはどうなったんだよ」
「あはは!」

 唸るように更に低くなった声に今度こそ耐えきれなくなって笑って短い髪の毛をくしゃくしゃと撫でて可愛がる。可愛いなあ、と声にも態度にも出して可愛がれば可愛がるほどゾロの顔が怖くなっていくけどそれすらも可愛くて頬がだらしなく緩んで締まらない。

「冗談だよ、ごめんね」
「別に。おれと行くより楽しめるだろうしな」
「ごめんってば、デートなんだからゾロがいなきゃ意味ないでしょ〜?」

 ふん、と鼻を鳴らして拗ねる姿が可愛らしくて反省の色を見せられない。だって可愛い。わしわしとつんつんした髪の毛を撫でながら少しずつゾロににじりよる。

「ふたりでなんたらぱふぇとか食ってくりゃいいじゃねェか」

 なんたらぱふぇ。何もかもあやふやな言葉が可愛くて思わず笑ってしまいそうになって、じわりと焦燥感に駆られる。待って、拗ねてるっていうか、ほんとに怒ってる、? どうしよう、からかいすぎた。携帯をすぐさま置いてまで側に確認しにきてくれたゾロがベッドから肘を浮かせて離れようとするから慌ててその背中に飛びつくようにして引き止める。日頃から鍛えてるゾロに私程度の体重なんかじゃ引き止めるのもできなくて、ずるりと下半身がベッドから落ちてしまったけどゾロの背中と肩にしがみついて離れない。

「ご、ごめん、ゾロ、ね、冗談だよ、ゾロいっつも文句言わずについてきてくれるから、どこまでついてきてくれるのかな、ってちょっと好奇心で、ね、ごめん、ゾロ怒んないで」
「……、」

 私が呼ぶ前の位置に戻って静かに携帯を手に取ったのが肩越しに見えて更に焦る。調子に乗りすぎた。さっと冷える体温を感じながら考える暇もなく次から次へ浮かぶ言葉をとにかく投げつける。ひとつでも打ち返してくれれば突破口が見えるはずなのにゾロはじっと黙ってるから余計に焦って脳がしっかり働かない。

「ぞ、ぞろ、ごめん、ぞろ、こっち見て、ゾロとデートいきたい、ゾロの行きたいところにしよ、ね、だから、おこんないで、ぞろ」

 ゾロにしがみつきながら、ね、ね、と必死で揺らすのにうんともすんとも言ってくれない。こんなに鬱陶しくしがみついて反応を得ようと揺らしてるのに、うんともすんとも言わない……? ふと気付いて首を傾げる。怒ってるならこんな風にしがみついて駄々を捏ねられるのは鬱陶しいはずで、私を退けようと少しは身動いだりしたっていいはず。なのに、びくともしない。まるで反応しまいと頑張っているかのように。見えないゾロの表情を肩越しに見ようとばかり頑張っていた視線をずらせば、携帯をいじってるとばかり思っていた手が少しも動いてなくて画面も待受が光るだけ。ただ持っているだけの携帯。それに気付いた瞬間、緊張が解けて細い息が口からこぼれ落ちる。

「……、ゾロほんとは怒ってないでしょ」
「……」

 へ、と間抜けな笑い声が聞こえてゾロの体が揺れる。からかって遊んでたはずが、いつの間にか立場が逆転してた。安堵に力の抜けた私の体がぐりん、と回転してゾロの腕の中にすっぽりと抱きかかえられる。はは、と声に出して笑うゾロの振動に逆らう気も起きない。

「あんくれェで怒るわけねェだろばーか」
「うぐぐ」

 げらげら笑われても、怒っていないとわかっても、私が先にゾロで遊んだ手前なにも言えなくて腕の中で小さくうずくまった。