タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2023/06/06 ゾロ
拝啓、きみがすきです・余裕は夜の向こう側・君と僕の距離


「好きだ」
「ありがとう」

 一世一代の告白はするりと受け流されてしまった。どれだけ眺めても飽きないくらい好きだった笑顔なのに、おれの告白にもいつも通り変わらず笑顔を浮かべながら礼を言われて以来脈無しにも程があると傷付いてまっすぐその笑顔を見れなくなった。気合を入れて告白をしたのを笑顔で流されればおれだって傷付く。馬鹿みたいに落ち込んで、勝手に気まずくなって、なのにあいつはそんなおれのことを全く気にせず普段通りに接してきて、それにまた傷付いて、負の連鎖に陥ったのをどうにか抜け出そうともがいて気付いた。脈無しにも程があるけど、それでも振られたわけじゃない。

「好きだ」
「ありがとう」
「付き合ってくれ」

 だから、礼を言われただけで腑抜けた心を叱咤して今度はもう一歩踏み出した。前と同じくいつも通り微笑んで礼を言われて、もう一歩踏み出したおれに瞬きを増やした姿にあまり手応えは感じなかった。ぱちぱちとまつげを揺らして、いつも通りの笑顔から困った笑顔に変化する。だけどその表情も見たことがある笑顔だった。ルフィやチョッパーや、はたまた島で出会った見知らぬガキが夢見がちなことを言った時に大人として諌める前触れの柔らかな笑顔。十九の男が一歩踏み出した結果、ガキ扱いされた。女の声が断りを入れる前に結果がわかった。前と同じようにただ落ち込むんじゃなく、ほんの少しの怒りが湧く。

「ゾロはそういうことにうつつを抜かしてる場合じゃないでしょう?」

 好きだと告白した口でおれをガキ扱いするなと詰め寄ろうとした瞬間、冷や水を頭からぶっかけられた感覚に陥る。さあっと体温が冷えて何も言えなくなったおれを見てまた困ったように笑われた。

「好きって言ってくれたのは本当に嬉しいよ、ありがとう」

 でも、私に構ってる場合じゃないでしょう、ともう一度小さなガキに言い含めるように優しくきっぱり突き放されて視線を逸らして俯いた。その通りだと思った。こんなことしてる場合じゃない。ガキ扱いするなと詰め寄る前にガキだと突きつけられてよかった。こんなことにも気付けないガキがガキ扱いされるのは当然だ。

  ▼▼

 好きになるのに理屈なんて関係ない。あの時のおれがガキだったのはそれに自分で気付けなかったことで、好きになったこと自体じゃない。
 二年離れて、倒すべき相手に教えを乞うて、肉体的にも精神的にも強くなった自負がある。それでもおれはお前に一生追いつけない。おれが二年歳をとって成長すれば、お前も二年歳をとって成長する。おれが世界一になるまで何回でも礼を言われて諌められるだけなんだろう。お前にとっておれは永遠にガキだから。開き直ったんじゃない、ただの事実だ。ガキで、それから海賊だ。ガキだから欲しいもんは欲しいと駄々を捏ねるし、海賊だから欲しいもんは全部手に入れる。お前も、世界一も、必ず。順番が変わるだけだ。世界一になってお前を手に入れるか、お前を手に入れて世界一になるか。それだけの違いしかない。

「好きだ」
「ありがとう、嬉しいよ」

 飽きないね、と笑われて、おれも鼻で笑う。飽きるわけねェだろ。せいぜい大人の対応をし続ければいい。ガキで海賊が大人の言うことを聞き入れるわけがないと気付いたところで今更もう遅い。

夢主視点