タイトルを考えるのが死ぬほど苦手
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2023/06/20 ゾロ
これだけじゃ足りないのです・淋しくても死なないうさぎ・研ぎ澄まされた爪と牙
これの夢主視点
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「好きだ」
「ありがとう」
いつも真っ直ぐ前だけを見て目を逸らさない一本筋の通った男の子がうようよと視線を彷徨わせて震える声で紡がれた言葉は予想通り愛の告白で、好意だけを告げるその告白のあまりの微笑ましさに思わず頬が緩んでしまった。嬉しくて思わずこぼれた本音はいくら色恋を知らない純朴な男の子でも気付くくらい全く色が乗っていなかった。それだけで何かがぽっきりと折れてしまったのがその見開かれた目から伝わって申し訳なく思う。でも、誰しもが通る初恋の相手に私を選んでくれたのは嬉しいけれど、私にとってゾロは可愛い男の子でしかなかったから仕方がない。初恋は実らないっていうし、そういうものなんだよ。去っていく背中がいつもより小さく見えてしょんぼりしてるのも可哀想で思わず駆け寄って慰めたくなるくらいには大好きだけど、それは恋じゃなくて可愛い男の子を愛でる気持ちからで、きっと追い打ちをかけるだけだからと我慢した。
しばらくは警戒する猫のように避けられたり、狭い船の中で逃げられない時は仕方なくそばで気まずそうに鍛錬をしてたり、そっとしておこうと思って話さなければ寂しそうな視線を背中に感じて、普通に話しかければそれはそれで傷付くのか八つ当たりのような可愛らしい睨みがちくりと肌を刺して、思春期の失恋の全てが愛おしかった。
なのに突然、付き合ってくれ、だなんて一歩踏み込んだからほんの少し驚いて、そして困惑した。可愛らしいおままごとから一歩踏み込むなら、私も可愛がるだけじゃなくて一歩踏み込んで応えなくちゃいけない。可愛らしくて柔らかな恋心を現実で傷付けるのが可哀想で私の胸も痛む。血の気が引いたゾロの顔色が可哀想で、抱きしめて慰めたくなってしまう。傷付けた私がそんなことしたって余計に傷を抉るだけ。幸せな夢から現実へと目を覚ますことは自然だけど、こんな風に砕くつもりはなかったのに。
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二年間ずっとみんなのことが心配だった。だけどそんな心配なんてする必要はないくらい立派に身も心も成長したゾロを見て頬が和らぐ。ずっと心配してた。あんな風に恋心を砕いてしまった直後に離れ離れになってしまって、心が折れていないか。だけどそんな心配は無用だった。片目をなくしてしまったことは残念だけど、そんなハンデなんかあるとは思えないほど強くなった姿はとても立派で、私が心配する必要なんて一切なかった。可愛らしい男の子が立派に育って安堵した、はずだったのに。
「好きだ」
粉々に砕いてしまったはずの恋心が砕かれていないことに驚いて、馬鹿にしたわけではないけれど思わず笑ってしまった。ありがとう、と二年前と同じように紡いでも、もうゾロは顔面を蒼白になんてせずに私と同じように口角を上げて笑っている。身も心も成長したはずなのにまだあの時の恋心を大事に抱えてくれていたことが可愛くて、嬉しいよ、と心からの気持ちを告げてもゾロは背中を向けない。
「飽きないね」
「飽きるかよ」
鼻で笑うゾロの頭を思わず撫でようとすれば一歩下がられる。それでも以前のように目も逸らさず背中も向けずまっすぐ私を見つめたままだから首をかしげる。
「お前が触るならおれも触るぞ」
どうぞ、と手を広げようとする私を制してまた口を開いたゾロに今日はよく喋って可愛いな、なんて微笑ましく思う。
「お前がおれをガキ扱いすんのは結構だが、おれだって普通の二十一の男だから下心ある触り方になるからな。ちゃんとそれ覚悟して触れよ」
わかってんのか、と凄まれて、まつげを揺らす。下心。あまりにもゾロに結びつかない単語すぎて現実味が湧かない。ものを知らない男の子が一生懸命背伸びして大人ぶってるように見えてしまう。でも確かにゾロは可愛いけど、二十一歳の男の子で、下心があってもおかしくない年頃で、でもゾロは剣の道一筋の可愛い男の子で、……?
「おい、……そんな意外かよ」
むすっ、と拗ねる様はやっぱり可愛い男の子で安堵した。
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