タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2023/07/08 ロー
逃げられないならぶつかるのみ・雪解けのように・拝啓、僕の好きな人


「そういうの、あんまりよそでしない方がいいよ」
「あ?」
「私はわかってるから大丈夫だけど、口説いてるって勘違いされちゃうから」

 そう言われた瞬間、眉を顰めた。そんなおれを見て、どこかほっとしたように笑う女に苛立つ。

「今までの男はそうやって言えば諦めたか? 根性無しの男ばっかりだったようで助かる」

 気付かれてることに気付いてた。やんわりと逃げられているのにだって気付いてた。好きな女のことだ。おれに微塵も興味がないのは見てれば嫌でもわかった。だからこそ告白しなかったのに。告白はせず、だけどそれでもお前はおれにとって特別だと、お前にも、周りにも主張して、少しずつでもおれに興味を持ってもらおうとしていたのに、お前がそれを中途半端にぶち壊した。
 おれのことが嫌いなら迷惑だとストレートに言えばよかった。気付いているのに気付いてないフリをして遠回しに遠ざけようとするから悪い。

「勘違いじゃねェことはお前も気付いてるし、周りの奴らだってわかってるだろ。おれが言い寄ってるせいで、おれ以外の半端な男はお前に言い寄らなくなったしな」

 気不味そうに揺れる目を真っ直ぐ見つめて鼻で笑う。おれが言い寄ってるからって諦める程度の男は問題になんてならねェ。お前だってわからないフリをしていた割には面倒な虫を避けるためにおれを利用していたこともあっただろ。気付かないとでも思ったか。おれに微塵も興味がないくせに面倒そうな男の気配を感じれば恋人のように距離を近付けて虫を払っていたのを知っている。おれだっておれ以外がお前に言い寄る姿は見たくねェし、道具のように使われてもその距離感に満足して利害が一致してたからわざわざ言わなかっただけだ。好きな女に都合良く使われるのは別に構わない。
 ただそれを中途半端に壊しに来たから思わず笑ってしまう。ようやく一番面倒な男が誰だか気付いたか? それとも他に虫除けに都合の良い男でも見つけたか? いや、それはねェな。お前に近寄ろうとする男の存在は全て把握している。お前が楽に使える一番都合の良い男はおれのはずだ。それならお前が言い寄りたい男でも見つけたか? 便利だったはずのおれが邪魔になったか? でももう遅い。

「お前が先にぶち壊したんだ、気付いてないフリはもうできねェな」
「……、私はローの恋人にはなれないよ」

 気付いてないフリをやめてきっちり断る言葉にわかっていても心臓が痛む。

「恋人になってくれだなんて一度も頼んでねェだろ」

 まだ、と心の中で付け足して言い放てば、不思議そうに瞬く姿は初めて見る姿で、好きな女の新しい一面に心臓の痛みが誤魔化される。おれに興味がないというか、そもそもそういうこと自体に興味がないのはわかってた。

「お前は今まで通り適当におれを使えばいい。恋人にならなくても今お前に一番近い男がおれという事実だけでじゅうぶんだ」

 今は、ともう一度心の中で付け足す。理解ができないのか何度もまつげを揺らしてただ不思議そうに頑張って考え込んでいる。これ以上は踏み込まない。面倒なことは言わない。おれのその上辺だけのそれに引っかかって、それならいいのかな、なんて揺らぐ目に小さく笑う。いいわけないだろう。馬鹿なんじゃないか。だからおれみたいなのに目をつけられるんだ。お前このままいくとあと少しで外堀埋めに成功するし、恋愛に興味が湧いても虫ケラはすでに排除してしまったから頭数がもうおれひとりだけになってるんだぞ。

「ええと、つまり、今まで通りでいいってこと、?」
「そうだな」

 周りはそうは取ってくれないと思うが。安心したように笑いながら自ら泥沼に飛び込んできてくれた女に口角を上げた。