タイトルを考えるのが死ぬほど苦手
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2023/07/13 ロー
見たいのは夢じゃない・身体の内側から冒される・愛で地球は救えなくても僕は救えます
※現パロ
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「付き合いは長いのか」
「ん? うーん、そうだね、二年くらいかな」
「……そうか」
馬鹿みたいに女に媚びへつらう奇行にギョッとしたのも束の間、好きな女がそれを当たり前のように受け入れたから心臓がじくじくと痛んだ。おれとは指がほんの少し触れ合うだけで慌てて距離を離してごめんね、なんて謝ったくせに、あの金髪で髭面の男には映画のワンシーンのように手を取られて指先にキスをされても全く動じずそれが当たり前かのように普通に喋ってた。照れたように笑いながら謝る姿に、ちょっとは脈があるんじゃないかと浮かれてたおれが馬鹿みたいだ。それでも僅かな希望に縋って探りを入れて、付き合ってなんかないよ、の言葉を引き出そうとしたのに、そうか、二年か。まだおれはお前と出会えてないな。おれの方が先にお前と出会えていたら、お前の指先にキスを贈れたのはおれだったんだろうか。そんな馬鹿みたいなもしもを考えて鼻で笑う。
仕事だからと名残惜しそうに大袈裟に悲しみながら手を振りながらもぎろりとおれに威嚇したあの金髪に目を逸らすことしかできなかった時点で負けだ。宣戦布告もできずただ威嚇を受け入れて、なのにみみっちくも探りを入れて、そして当然のように馬鹿みたいな夢想は押しつぶされた。
「いつもあんな感じなの、かわいいよね」
「……、」
ころころと楽しそうに笑いながら同意を求められてもただでさえ傷心中だし、好きな女に話を合わせたくてもどう頑張ってもアレは可愛くはなくて黙り込むことしかできない。何がかわいいんだ。目ん玉腐ってんじゃねェのか。専門外だが目玉を診察してやろうか。おれに対する威嚇はまるでチンピラで、かわいいとは対極にある存在だった。でもアレが可愛く見える目のおかしさなら、おれだってお前には可愛く見えたりしないのか。女の言う可愛いはいつも当てにならない。別に可愛がられたいわけじゃないが、それがお前にとって良く見えるなら努力したのに。
「……ああいうのが好きなのか」
「うーん、好きっていうか……、他の人がすると下心感じてちょっとヤなんだけど、でもサンジくんはあれが素だからただお姫様になったみたいで楽しくて」
つまり、あいつが特別だ、の一言に全て詰まる返答に口を噤むことしかできなかった。お前がそういうのに好感を持つならおれだって頑張れると思っても、おれが頑張ったところであいつ以外がすればそれは好ましくない行動だから距離を取られてしまう。下心を感じるも何も、実際おれには下心しかないから確実に嫌われてしまう。嫌われるくらいなら友達の座に甘んじて、お姫様扱いをされる好きな女を側で見てる方がまだマシだ。心臓を何度も何度もメスで切りつけられる痛みに耐えて側で見守る方が良い。
「……もしあいつに泣かされたら言えよ。愚痴くらいなら聞いてやれる」
「あは、サンジくんが女の子泣かせるわけないよ」
側で見守る方が良いだなんて思っておきながら醜い嫉妬心からこぼれた言葉は自業自得にも見事に空振った。割り込む隙なんて一ミリも存在しない絆を見せつけられて視線を逸らす。そうか、と頷くことしかできない。
「サンジくんの彼女になる人は幸せそうだよね」
「────………………あ゛?」
「ん?」
あの男を誉めそやす言葉をこれ以上聞きたくなくて地面ばかり睨みつけていたせいで反応に遅れた。まるで他人事のようなおかしな言葉を吐いた女に思わず人生で初めてとも言えるくらい低い声が喉で鳴る。
「……二年の付き合いだ、って」
「バラティエって美味しいレストランがあるんだけど知ってる? 二年前に初めて行った時からずっとあんな感じで面白くって」
ほんとにすごく美味しいんだよ、なんでも美味しいの、ちょっと苦手だなって思ってたものもすごく美味しく作ってくれて食べられるようになったし、デザートも美味しくてね、あとお酒も美味しいの、ととにかく美味しいことだけは十分に伝わる言葉を次から次へと繰り出しておれの混乱に鈍くなった脳では処理しきれず口を挟む隙もない。でも、絶望に叩き落とされたはずの世界にほんの少しの希望が生まれた、気がする。また浮かれた男の浮かれた勘違いだったらどうしよう、なんて考えながら、これ以上落ちる地獄もないと本能のままに口を開く。
「あの金髪の男はお前の彼氏じゃねェのか?」
「……?」
話を遮られたからかさっきのおれみたいに反応に遅れただけなのか、それともあまりにも見当違いなことを聞くから反応に困っているだけなのかの判断がつかなくて焦りにどんどん口の中が乾いていく気がする。料理の腕を褒める口は止まったものの完全な答えは返ってこなくてからからに乾いた口をもう一度開く。
「……さっきの、やつ、……お前の彼氏か」
今度はおれだけの声がしっかり響いてよっぽどおれの声を聞きたくないとかじゃない限り聞こえなかったなんてことにはならないはず。
「えっ。ち、ちがう、ちがうよ! 彼氏じゃない!」
おれの声なんかよりよっぽど大きく響いた返事は聞き間違いをする余地なんてないほどしっかりはっきり否定の言葉を紡いでぼろぼろに刻まれたはずの心臓が治療されていく。
「えっ、なんでそう思っ、あっ、さ、サンジくんの態度はあれほんとに世の中の女の人全員にしてるから別にそんな深い意味なんてなくて、そっ、そっか、サンジくん知らないとそう思っても仕方ないのか、私たちはもう慣れっこだったから、えと、……」
彼氏じゃないよ、ともう一度困ったように笑われてほっとする。
「そうか、よかった」
「よかっ、……え?」
「……あ?」
だから思わず油断して、心の底からの安堵の声が体から溢れて固まった。
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