タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2023/07/17 ゾロ
どこにいけば君に出会えますか・夢でもいい、触れられるのなら・君の手の大きさに慣れた私の手


「ぎゃっ、ロロノア・ゾロ!?」

 思わず声に出してしまった私を私が一番殺したい。だって今までは運良く逃げられてきたけど今回こそ逃げられないかもしれない。というか今までだって“逃げられた”んじゃなくて“逃がしてもらってた”んだから、目の前のロロノア・ゾロの気分次第で私の生死が決まってしまう。今までは酒代にもならねェ弱い海賊狩っても意味ねェよと笑いながら逃がしてもらってた。ちょこちょこ鞘に入りっぱなしとは言え剣先を向けて鬼ごっこのように遊ばれたりしたけど(ロロノア・ゾロにとっては遊びかもしれないけど私にとっては本当に恐怖の時間だった)、それも私に懸賞金がかかっていなかったから。なんの不幸か海賊として懸賞金がかかってしまった今、少しの酒代くらいにはなってしまう。まだ死にたくない。あわててくるりと踵を返したのについさっき十メートル先くらいにいたはずのロロノア・ゾロがもう私の手首を掴んでいてどぱあっと滝のような涙が溢れる。

「待て待て逃げるな」
「海賊なんだから海賊狩りから逃げるのは当然でしょォ……」

 いくら頑張ってもうんともすんとも言わずに私の肩が引っこ抜けてしまいそうな程の力の強さで逃げられないことを悟って涙ながらに抗議する。逃げるな、って言われて逃げない海賊がどこにいるの。死にたくない。ひぐひぐとみっともなく泣いて人生の終わりを感じている私の正面に回り込んできたロロノア・ゾロにただ怯えることしかできない。

「落ち着けって。今はおれも海賊だ」

 死刑宣告を待っていた私の耳にロロノア・ゾロの慌てた声がするりと飛び込んできて瞬く。瞬けば瞬くほど涙がぽろぽろ落ちて、泣くなよ、なんて声も聞こえてきて首を傾げた。今なんて言ったの?

「かいぞく、がり、の、ろろのあ、ぞろ、でしょ?」
「今は海賊のロロノア・ゾロだ」
「……つ、つかまえて、かいぐんに、もっていかない?」
「今海軍のとこ行ったらおれも捕まるしな」

 ほんとに、と掴まれていない方の手で顔中の涙を拭いながら恐る恐る目の前のロロノア・ゾロと目を合わせる。いつも私を遊ぶ憎たらしい笑顔じゃなくて、困り顔で私を見下ろしていてまた瞬いた。混乱しているうちに涙が止まったのかもう瞬いても涙は落ちてこない。

「……うそ、ついてない?」
「おれより弱いお前に嘘ついてなんの得があんだよ」
「し、しつれい、」
「事実だろ」

 困った表情はどこかに消え失せて、はは、と何度か見た意地悪な笑顔で私を見下ろす海賊のロロノア・ゾロ。だけど、だって、海賊狩りじゃなくなったなら余計に私をこうして動けなくする意味がわからない。海軍には連れて行かないけど、捕まったままだ。

「……なん、の用事?」
「?」
「狩るためじゃないのはわかった、けど、何か用事があったから話しかけにきたんじゃない、の?」

 普通の疑問をぶつけただけなのにまるで私の方が変な質問を投げかけたかのように意地悪な笑顔を引っ込ませて不思議そうにしているロロノア・ゾロを私もまた不思議に思いながら見つめる。

「た、宝の地図、とか強奪しにきた……?」
「持ってんのか?」

 海賊同士の争いと言えば宝しか思いつかなくて、だけど私はそんなもの持っていない。自分から話題に出したくせにふるふると全力で頭を振って持っていないと否定する。馬鹿みたいだ。

「……そんなことよりお前なんで海賊やってんだ?」
「私のことなんかより海賊狩りから海賊になった経緯の方が知りたい……」
「別におれのはなんも面白くねェけどお互い聞きてェことあんならちょうどいいな」

 なにが、と出すつもりだった声は、ぎゃ、という悲鳴に変わって喉から出た。うんともすんとも言わなかったはずの手首が離されたのも束の間、ぐるりと視界が反転したのは体が浮き上がったからで、浮き上がったのはロロノア・ゾロが私を肩に担ぎ上げたから。ひゅ、と息を呑んで体が硬直して、目頭がまた熱くなる。うそつき。

「海軍に連れて行かないって言ったのに、」

 ひぐっ、と喉を引き攣らせながら抗議したって逃げられない。

「あ?」

 人一人抱えているのに普通に歩くのと変わらないスピードで歩くロロノア・ゾロの声がお腹に響いて恐怖が増す。うそつき。

「海軍になんか連れてかねェよ、おれのにするんだ」
「んえ、?」
「お前もおれの話聞きてェっつったからちょうどいいしな」

 同じ言葉を操っているはずなのに、ロロノア・ゾロの言っている言葉が何一つ理解できない。

「今まではしょうがねェから逃がしてやってたけど、せっかく海賊になったんだから欲しいもんはちゃんと持って帰らねェとな」