タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2023/08/01 スモーカー
大事なものなんて他にはないよ・短い爪に唇を落とす・午睡の憂鬱


「お見合いするの?」
「あ?」

 さっきまでお偉いさんの面倒な言葉を右から左に聞き流していたせいで、聞き流す必要のない同僚の言葉まで一瞬聞き流しそうになった。視線をあげて言われた言葉をしっかり脳で繰り返す。お見合いするの? ……見合い?

「誰がだ」
「スモーカーくんが」
「おれが? 誰と」
「? 知らないけど、さっきお見合いの日程組もうとしてたでしょ?」
「あ??」

 クエスチョンマークがそこかしこに飛び散る空間に固まる。待て。待て待て。さっきのクソジジイ、そんなこと喋ってたのか? あまりにも無意味な話しかしねェなと思って途中から本当に何も話を聞いてなかったせいでものすごい弊害が生じていて心臓が変な音を立てる。

「見合いなんてしねェ」

 げっそりと呟いた言葉に、そうだろうね、とくすくす笑われて、疲れ切って何重にも重なった眉間の皺を伸ばす。

「今は結婚に興味ないかもしれないけど、スモーカーくんはきっとお見合い結婚なんだろうなあって思うよ」

 狸ジジイの中で勝手に組まれそうになってる予定をさてどうやって断ろうかと気を揉んでいるおれに悪意も善意もなくただふわりと投げられた言葉に固まる。

「……なんでだ」
「恋愛してるスモーカーくん想像できなくて。でも結婚して穏やかな家庭作ってるところはすごく想像しやすいんだよね、子どもの扱いも上手だし」

 一人納得してころころ笑う姿に今度はこめかみが引き攣る。

「見合いなんざしねェ」
「わかってるよ」

 ただ似合うな、って思っただけ、と想像で勝手におれの家庭を築き上げた目の前の同僚に大きなため息をつく。

「お前は」
「わたし?」
「おれにくるくらいだ、お前にだって見合いの話くるだろ」

 女なら余計に、おれ以上に上から突っつかれて面倒なはずだ。案の定嫌なことでも思い出したのか、うげ、と顔を顰めてひらひらと手を振られる。

「やだやだ。結婚したら昇進しやすくなるスモーカーくんと違ってわたしに持ってこられるお見合い、今すぐじゃなくてもいずれは仕事辞めて家庭に入れ、が結局のところなんだもん。死に物狂いでせっかく海兵になれたのになんで辞めなきゃなんないの」

 やだよやだやだ、と日頃の怨嗟が積もり積もって泣き言のような愚痴を次から次へと溢す姿に笑う。笑い事じゃないんだけど、とげしげし肩を叩かれそうになるのを煙になって避ける。無駄に手を痛めようとするな。

「私はずーっと海兵でいたいの。私が海兵を辞める時は海賊がこの世からいなくなって平和になった時だけだよ」
「いなくなったら見合いするのか?」

 海兵としての矜持に誇らしげに張った胸がまたうげ、と丸まる。

「やだぁ、ちゃんと話聞いてなかったせいで自分がお見合いしなくちゃいけなくなっただけのくせにわたしのこと道連れにしようとしてる?」
「ちげェよ」

 話を聞いてなかったせいで組まれた見合いを早々にあの狸ジジイを追いかけて予定を組もうとするなと忠告しなければいけないことを思い出す。少し思考が逸れた間にぶすくれた同僚の膨れっ面を見下ろして口を開いた。

「お前の見合い相手に立候補する準備を整えておく為だ」
「え、」
「恋愛してるおれは想像つかないらしいからな、見合いで勝負する」