タイトルを考えるのが死ぬほど苦手
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2023/08/03 スモーカー
どこにいけば君に出会えますか・君を喰らわば毒まで・片側だけが上がったくちびる
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お互い小綺麗な正装に身を包んで向かい合い無言で見つめ合う。見つめ合う、なんて言っても私はその目力に圧倒されて時折外の景色に視線を外して現実逃避をしていたけれど。目の前に座っているのは上からの評判は悪く、下からの評判はとても良い正義感に溢れる男の人、で、むっつりと黙り込んで私を見つめる姿は、良い人だとわかっていてもその強面はやっぱりちょっと怖い。目を逸らしてしまうのは目力と、その強面のせいだけじゃない。負目も少し。
「すみません、その、……」
「何がですか」
よく通る低い声で即座に返事が返されて一瞬言葉に詰まる。
「いえ、あの、……貴重なお休みに時間をとらせてしまってすみませ、」
「おれが何か粗相をしましたか」
「?! そんな、そんなことは」
ないです、とばちんと絡み合った視線のおかげで言葉尻が萎んでしまう。良い料亭で、良いお洋服を着て、年頃の男女が向かい合う。所謂お見合いの場は、あまり良い雰囲気じゃない。だって、この場に座っていることが不本意なのはわかりきってる。原因はきっと私。一度だけぽろりと父親の前で目の前に座る人に興味を示してしまった。基本的に良い組織なのは理解しているけれど上下関係が厳しく悪辣な環境に身を置けば悪事に染まることも多々ある海兵という職業の中、自分の信念から外れれば上に反発し、下を全力で守り抜くその背中に背負った正義をずっと貫く姿に好感を持って呟いたのがきっとこの場を設けられてしまった原因、で。あまりの申し訳なさに萎縮する私と、きっと断りきれなかったスモーカーさんの無言の抗議。粗相をしたというのなら父親の前でぽろりと褒めてしまった過去の私。
「……あの、」
「はい」
「ち、父にはきちんと言い繕っておきますので、」
「……はい?」
「父が無理を言って本当にすみません」
「……なんの話だ」
ずっと敬語だった言葉が崩れて眉がぴくりと跳ね上がったのを見て機嫌を損ねてしまったことだけは馬鹿でもわかる。口の中がからからに乾くけど、水で潤してる暇なんてない。せっかくの休日に、これ以上機嫌を損ねてしまわないよう慌てて言葉を重ねる為に息を吸った。
「いえ、あの、……無理を言われてこのお見合いに来させられたんですよね、その、なので、……すみません、きちんとスモーカーさんに迷惑がかからないようになかったことに、」
「待て、なかったことになんてされちゃァ困る」
「え」
がた、と机が揺れて私の肩も揺れる。机が揺れたのは、何故か慌てたスモーカーさんが机に膝をぶつけたからで、結構な音がしたから痛いはずなのにそんな素振りを一切見せずにただ私をまっすぐ貫くその視線に息を呑んだ。今、スモーカーさん、なんて、
「何を勘違いしてるか知らねェが、親父さんに無理を言ってこの場を作ってもらったのはおれの方だ」
「……えっ、」
顰めっ面のようで真正面から見つめることの難しかったスモーカーさんが今日一番の長台詞を喋るから、その勢いにも言葉の内容も頭で処理できなくてただただ困惑する。今、根本から覆るようなことを言われた気がする。
「必死に頼み込んでせっかくの機会に恵まれたはいいもののおれァただでさえ口下手で物を言うのが苦手で、だから喋ることも考えてきたはずなのに、なんで今日そんなにめかしこんでんだ、クソ、考えてたこと全部飛んだ」
やっぱり。根本から全て覆されることをもう一度紡がれて、目の前のスモーカーさんの混乱ぶり以上に私が混乱する。
「無理を言ってこの場に来てもらったのはおれの方だ。……よく知らねェ男と、急な見合いをさせられて、とっとと帰りてェ気持ちはわかる、が、……一度だけ、今日だけでいい、おれにチャンスをくれねェか。頼む」
がばりと綺麗な白髪を携えた頭を机にぶつける勢いで下げて頼み込む姿にばくばくと心臓が変な音を立てて体温が急激に上がっていくのを自覚した。
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