タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2022/03/19


 かわいい、きれい、美しい女神、おれの天使えとせとらえとせとら。朝の挨拶と同じくらい、寧ろそれ以上の頻度で耳にする大仰な褒め言葉の羅列に苦笑する。

「君のことが好きなんだ」

 だから、驚いて固まった。また朝の挨拶が始まったなあ、なんて朝のレディ専用スペシャルドリンクで喉を潤しながらいつものようにふんふん聞き流していたはずなのに、急に心臓に直接響くような音で言われた言葉に固まってしまった。眼球だけは動いてどうにか視線を向ければ、ぴったり合わさったサンジくんのまっすぐで重たい熱を感じる目に耐えられなくて目が泳ぐ。

「おれの言葉が信じられないのはわかってる。こうして君を前にして愛を囁けるだけで世界で一番幸せな男だ。受け入れてもらえなくたっていい。でも、君のことが本当に好きだってことだけは知っていてほしい。知っていてくれるだけでいいから」

 お願いだ、と静かな音で真っ直ぐな声でうようよと泳ぐ視線を捕まえられる。ごくん、と口の中にとどまっていたドリンクを飲み干して、まだ頭が働いていないのに口を開く。

「し、しらなかった……」

 間抜けにも飛び出た言葉にサンジくんも私も、二人して目を見開く。知らなかった。何も考えずに口から零れ落ちた言葉を頭で繰り返して納得する。知らなかった。だってサンジくんはいつも、きれいだかわいい素敵だ女神だ、それしか言わなくて、サンジくんなりの挨拶だと思ってて、だから、

「信じられないも何も好きだなんて、はじめて聞いた、から……」

 しらなかった、と小さくなる声でまた呟けば、うそだろ、と呆然と呟く声。サンジくんの白い肌が点滅するように青くなったり赤くなったりして、私の心臓が変な動き方を始める。ぴかぴか点滅していたサンジくんが赤に止まって一歩私に近付いて跪く。跪かれるのはいつものこと。手を取られるのだって、たまにされてた。なのに今までと違って私の体の中で心臓が大暴れして落ち着いてくれない。サンジくんの挨拶が挨拶じゃなかったことを知った私と違って、私の中の心臓が大暴れしてることなんて知らないサンジくんがまた口を開く。どうしよう、挨拶じゃなかった。

「好きだ」

 サンジくんの口から放たれるのは挨拶じゃなくて、愛の告白。