タイトルを考えるのが死ぬほど苦手
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2023/08/18 ゾロ
アンバランスな心・夢でなら逢える・ずるいほど可愛い
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女どもの言う可愛いなんざ一切当てにならない。おれ自身、可愛いが何かなんてあんまりわからないが、それでも世間一般的に何がどう見えるのかそれくらいはおれだってわかる。例えば赤ん坊だったり、花だったり、とにかく、守らなければいけない庇護欲をくすぐられるような存在を可愛いと思うのが普通だ。赤ん坊に泣かれるくらいいかつい男に向ける言葉じゃない。それだけははっきり言える。のに、今日もこいつは懲りもせずおれに向かって可愛いと宣う。今のおれの姿は返り血を浴びていて微塵も可愛い要素なんてありやしない。返り血だぞ。背後には身の程知らずな馬鹿どもが血まみれの山になって呻いている。可愛いとは正反対で、寧ろどちらかといえば修羅だ。
「かわいい顔がもったいない」
あらあらとおれの顔に飛び散っていたらしい血痕を躊躇いもせずハンカチで拭われて身動ぐ。それ昨日ロビンとおそろいで買ったって嬉しそうにしてたハンカチじゃないのか。それが汚れる方がよっぽどもったいないはずなのに顔を背けるおれの気遣いなんて全く無視してべたべたと顔にハンカチを押し付けてくるから逃げるのも面倒になって好きなようにさせた。
「怪我してない?」
「おれよりお前の目ん玉チョッパーに診てもらったほうがいいだろ」
「ええ?」
なに急に、と笑いながらまたかわいいと呟くから眉を顰める。
「ちょっと一回離れろ」
なんでえ、と名残惜しそうな女から離れて無傷のくせにさっきから死んだふりをしてる男の首根っこを掴んで持ち上げた。ウヒャアだのなんだの情けない悲鳴をあげたくせに持ち上げられながらもまだ死んだふりを頑張る馬鹿を小突いて強制的に目を合わせる。何してるの、と不思議そうな女の声が背中に降りかかるのと同時に口を開いた。
「おい、おれは可愛いか」
「ヒッ」
えっやだかわいい、と後ろから声がして舌打ちをする。今はお前に聞いたんじゃねェ。おい、と首根っこを揺らせば喉が締まる音がする。せっかく無傷なんだから落ちる前にとっとと答えろよ。
「おれは可愛くなんかねェよな?」
「お、鬼のように怖いでしゅ……!」
叫んだと同時に喉に服が食い込んだのか、きゅう、と気絶した男を地面に落とす。その答えに満足して振り返ったのに輝いた目と視線が交わってぎょっとする。
「やだぁ……かわいいかかわいくないか気にしてるのかわいすぎない……?」
「あ?」
「変な心配しなくてもゾロは世界一かわいいよ」
悪化した言葉に刀の鞘で、おい、と転がした男に再度判定を下してもらおうとしても今度こそ本当に気絶したのかぴくりとも動かない。目の前の女はきらきら輝いた目をして興奮気味に何度もかわいいと呻いていてたじろぐ。可愛いか可愛くないかを気にしてさっきの男に質問したんじゃない。おれはただお前の目ん玉が腐っていることを証明しようとしただけなのに、まるで正反対の証明を求めていたかのような反応に頭を抱えてしまう。
「でも確かに他の人には可愛く見えないかも」
どうしようもなく手詰まったおれに、なぜか急にほんの少し目の異常が治った発言に顔をあげる。うんうんと一人納得しながらまたおれの顔についているらしい返り血をハンカチで拭き始めた姿を見下ろす。なんでかわからないが目の異常がほんの少しでも治ったんなら僥倖だ。
「だってゾロがかわいくなるのは私にだけだもんね」
「……っは?」
ぎし、と固まる。
「耳まで真っ赤」
かァわいい、と耳を撫でられながら笑われても意味がわからない。
「ん、なとこに、血、はついてねェ、だろ」
べし、と払った細い指にはやっぱり血なんてついてなくて、揶揄われていることだけはわかって苛立つ。痛くもないくせに痛いと手を振りながら笑っていておれの苛立ちなんて全く気にも止めていない。
「血はついてないよ。でもね、ゾロ、私といる時いっつも耳まで真っ赤になって照れてるの」
本当にかわいい、とまた耳に触れられる。ぶわ、と体温が急激に上がった気がして触れる指から逃げるために後ずさる。違う。別に照れてなんかねェ。そんなわけねェ。触んな。見んな。うるせェかわいくねェ!!
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