タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2023/08/24 ゾロ
抱き締めた身体はあまりにも細く・風に舞い踊る髪・蔑まれてもいい、好きだと言わせて


「全然食ってねェな。食え。おら」
「もが」

 そんなことないよ、と言おうとするために開いた口の中に思いきり肉の塊を突っ込まれる。これサンジくんが焼いてくれたお肉だから口の中でいい感じにほろほろにほどけて喉に詰まらなかっただけで、普通の海賊が焼いたお肉をそのまま口の中に突っ込まれたら窒息死してるからね。そんな怒りは美味しいお肉のほろほろとした食感と共に消えてごきゅんと喉を鳴らす。おいし、と頬をおさえて味の感想を呟くために開いた口の中に再度ゾロの手が肉の塊を持って近寄ってきたから慌てて頬から口へと手を動かしてシャッターをする。

「私の胃袋はゴムじゃないからもうこれ以上はほんとに食べれないから」

 口を手で隠してもゾロの暴挙から逃れるのには若干の力不足を感じて唇をできるだけ動かさずもごもごと伝えた。案の定諦めずに私の手を貫通させようとでもしてるのかぐいぐいとお肉を押し付けてくるゾロに手で口を隠しながらさらに口をぎゅっと引き締めていやだいやだと首を振る。サンジくんの料理はものすごく美味しくて次から次へと胃の中に招待しても飽きないけれど、胃の容量はもう悲鳴をあげている。

「食わなすぎだろ」
「ゾロとかルフィ基準で考えないでよ……」

 あそこまで食えとは言ってねェだろ、と風船のように膨らんで楽しそうなルフィを横目に眉を寄せられたけど、じゅうぶんめちゃくちゃなことを言われている。ものすごく運動をして腹ペコだったのと宴に浮かれてこれでもゾロの暴挙をやんわりと受け取っていつもの二倍は食べた。それなのにまだまだ食べさせようとしてくるのは最早拷問でしかなくてふるふると首を振ってゾロから逃げ出すことしかできない。のに、腰に腕を回されていとも簡単に引き寄せられてしまった。勢い余ってゾロの膝に座ってしまったけど、ゾロは少しも呻きもせず痛くも痒くもなさそう。私の方が硬い筋肉にお尻を攻撃されて呻いてしまった。痛い。

「やっぱ全然だめだな」
「……もうほんとにむり、ごちそうさまなの」

 背後から聞こえたゾロの不穏な言葉に思わず涙声にもなる。まだ入るだろうと確認のようにお腹をそっと撫でられるのも怖い。ほんとにむりだから諦めて。

「お前細すぎんだよな」
「……そんなこともないと思うけど」

 最近は海賊稼業のくせにサンジくんのご飯が美味しくて前の生活をしていた時より健康的な身体つきになったと思う。サンジくんは美味しいだけじゃなくてカロリーの計算もばっちり協力してくれるから、いらないお肉は削ぎ落としてつくべき場所につくお肉はこんなにも魅力的になるんだと鏡の前でびっくりするくらい過去最高のプロポーションになってる。まさかいくら女の体に興味がないからって男の人の体格と私の体格を同じように比べたりなんてするわけ、……しそうだなあ、と遠い目になる。そりゃゾロのような屈強な男の人の体格と比べられてしまえば私は細すぎるに該当してしまう。だからってこれ以上ゾロの暴挙には付き合えない。いい加減にしてよね、と呆れながら怒ろうとしたのにゾロがまたぶつぶつと呟きはじめるからため息をついたのが間違いだった。

「細すぎるから壊しちまいそうで怖いんだよ」

 私が黙った隙にぞっとする言葉が降ってきて固まった。お腹に回った腕がとんでもない凶器に思えて目が泳ぐ。ゾロの膝から逃げたいのに腰も抜けてしまった。どうしよう。

「もっと太れ」
「……そんなこと、いわれても、」

 私だって仲間にペシャッと壊されるのは勘弁願いたいから今すぐ太りたくなったけど、そんな簡単に体重を操れるなら悩む女の子はこの世に存在しない。本当にこれ以上食材の入る隙間はないのかと言わんばかりに私のお腹をさする手をぺしぺし叩いて恐怖を伝えようとしたって全然伝わってくれない。

「ほんとに今日はもう食べられないから、」

 離して、と言おうとした声が遮られて狼狽える。

「おれが全力で抱きしめても壊れないくらい太れよ」