タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2023/09/10 ゾロ
君の欠片に触れていたい・君には分かるまい・いつか君と一緒に
※ネトフリ時空


「麦わらの一味が恋愛禁止なのってゾロのせい?」
「……はあ?」

 何言ってんだ?という言葉は突拍子のない質問に唖然として口から出せなかった。それでもそのふた文字に何言ってんだ?の意味が完全に含まれていたはずで、追加で口を開くこともなくただ見下ろし手続きを促す。意味がわからない。

「恋愛のいざこざ起こして禁止になったの?」
「……あのウェイターならまだしもなんでおれが」

 行く先々で女を口説いていつかトラブルを起こすのはあいつの方だろう。おれは何もしてないし、する気もない。そもそも女好きに見られたことだってない。不名誉でしかない言いがかりに眉を顰めても不躾な質問を投げかけてきた当人は全く納得していないようで首を傾げている。

「そっかあ」

 納得しきれていないのが態度に思いきり出ているが一応はおれの答えを受け入れてくれたらしい相槌にとりあえずは胸を撫で下ろす。とんでもない言いがかりを投げつけられたが、投げつけられなかったら否定も出来ずにこの女の中でおれは不名誉なレッテルを貼られたまま勝手に幻滅されていたかもしれないから聞いてくれて助かったような、やっぱり腹が立つような複雑な気持ちに眉間に皺が寄る。

「…………どうしてそう思ったんだ」
「女の子からの視線、気付いたことない?」
「…………おれが怖いんだろ」

 屈強で無愛想な男が刀を三本も携えて歩いていればそりゃあ男からも女からも視線が飛んでくる。ちらちらとうるさい視線に目を向ければ身の程知らずな男が向かってくるのを追い払ったり、逆に目が合うと体をこわばらせてすっと視線を俯かせる女に危害は加えるつもりはないと店を出たり、そういうことはルフィについていく前からよく繰り返してきた。
 そういうことをかいつまんでいくつか説明すれば途端に可哀想なものを見るような視線を向けられて意味もわからず腹立たしくなる。

「……もしかして恋愛したことない? 一夜限りの恋も?」
「そんなもんにうつつ抜かしてる暇なんてねェ」
「あー……それ、怖がられてるんじゃなくて、緊張してるんだよ」
「……一緒じゃねェか」

 別に誰彼構わず斬ったりしない。目を合わせただけで斬られるかもと緊張に身体をこわばらせてしまうほどおれの顔は怖い造りなのか。喧嘩を売ったつもりはないのに勝手に買い取ってくる男はたまにいるから相手するが、いくら海賊に転向したからって女相手に無意味に斬りかかるほど落ちぶれたわけじゃない。そんな一味ならおれは今もひとり海賊狩りを続けてる。別に何もしていないのに理不尽な言いがかりをぶつけられてぶすくれはじめたおれに慌てたように違う違うと否定し出した女に視線を向ける。否定したくせに、ばち、と真正面からぶつかった視線に目の前の女も一瞬体をこわばらせる。そういえばこいつもそうだった。全部を曝け出したわけじゃなくても少しはおれのことを知っているはずの女にすら怯えられて気落ちする。

「ゾロ、かっこいいから」
「あ?」
「ゾロの顔、綺麗すぎて緊張するの。女の子みんなゾロに見惚れてるだけだよ。怖がってるんじゃなくて、あんまりにもかっこいい人がいるから恥ずかしくてみんな目合わせられないだけ」
「……?」

 ぽかんと口が開いたまま何度も瞬いて意味のわからない言葉を頭の中で何度も反芻する。

「ほんとに気付いてなかったんだ。余計なこと言っちゃったかも。ゾロを守るためのルールだったんだね、ごめん、わかった」

 目の前の女が言葉を重ねてももう何も頭に入ってこない。見惚れてる? おれに? 色恋沙汰を避けてきた脳は何度反芻したところで理解を拒否して混乱するだけ。なのに当事者のおれを差し置いておれを混乱に陥れた張本人は何か納得したように頷いて晴れやかな表情をしてる。

「気にしないで。ゾロは何も悪くないよ」

 おれを守るためのルール? 意味がわからない。そもそもおれに対する不名誉なレッテルを貼られたことが気に食わなかったから理由を知りたかっただけで、うちにそんなルールは存在しない。はずだ。そもそもあの自由を愛するキャプテンが何かを禁止する規律なんて作るわけがない。勝手に思い込んで、更に勝手に納得した女の思考が何もかもわからなくなって事態を飲み込めない。それでもひとつだけだけわかったことがあって、混乱したままのせいで頭の中で浮かんだ答えがそのまま開きっぱなしだった口から転び出た。

「何言ってんだか全く意味がわからないがつまり、……お前はおれの顔に惚れてんだな?」

 今度は意識してしっかり目を合わせた瞬間、ぴく、と体がこわばったのと同時にじわりと皮膚が赤くなるのをじっと見つめる。じり、とあとずさる音が聞こえたのに皮膚がどんどん赤くなるのを見るのに気を取られて油断した。やっぱりゾロのせいで恋愛禁止なんでしょ!と声高に叫んで逃げる後ろ姿をただじっと見つめることしかできなかった。