タイトルを考えるのが死ぬほど苦手
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2023/09/13 スモーカー
猛毒にも似た君の声・禁じられれば禁じられるほど・勇気を出す切欠
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「スモーカーくんの周りで私と結婚できる男の人っていたりする?」
どこか照れくさそうにする姿をつまみに飲んでいた酒を驚いて吹き出してしまうところだった。なんだこれ、なんの質問なんだ。おれの周りでってことはおれじゃ駄目なのか。相談があるから今日時間取れる?なんて言葉に即座に頷いて犬のように尻尾を振らないよう気を付けながらお前に対峙したおれに意味のわからない言葉をぶつけるのはやめてほしい。
「けっ、……こん、してェのか?」
一瞬声がひっくり返りそうになったのをどうにか誤魔化して酒を置く。たぶんここからずっとこいつに振り回されるだろうから酒を無駄にしないためにだ。
「結婚したくないから結婚しようと思って」
何を言ってるのかさっぱりわからない。やっぱり酒は置いておいて正解だった。
「この歳になると周りがしつこくて、肩書きだけでも既婚者だったらもうそういうこと言われることなくなるでしょ? ……まあ結婚したらしたで今度は子どものこと聞かれるかもしれないけどさすがにそれは下世話すぎるから跳ね除けられるし」
「……そんなことのために好きでもねェ男と結婚すんのか」
デメリットやメリットをぺらぺらヘラヘラと笑いながら重ねていく女の言葉を遮って重要なところだけ問いただす。まさか本当に偽装のためだけに結婚しようとしてるのか。偽装でも本当に結婚するなら周りに勧められる見合いとたいして変わらないだろ。誰でもいいならおれでもいいはずなのに、なんでおれははなから圏外なんだ。そんなに女から見ておれは厄介な人材か?
「ヒナちゃんに相談したらスモーカーくんと話せばいいって言われたから誰かそういう男の人に心当たりがあるのかと思って、」
「……あ?」
ぐるぐると考え込んでいたおれの耳に同期の名前が飛び込んできて意識が飛ぶ。なんだって? もしかして、バレている? もしかしなくてもバレている。くそ。そんなにわかりやすかったかおれは。馬鹿みたいな発想をしたカモをネギを背負わせた状態で獣の前へ解き放ったとしか思えない同期の悪戯に苛立てばいいのやら感謝すればいいのやら散々迷って長いため息をついた。こいつだってあいつにとっては大事な女なはずで、そんな女を厄介な人材のもとへ派遣するはずがない。太鼓判を押してもらったんだからと胸を張ってこのまま善良な協力者のふりをして鴨を囲い込んでもいいのかもしれない、なんて女の馬鹿みたいな発想につられて馬鹿みたいな思考回路になるのを頭を振って考え直す。馬鹿に馬鹿を掛け合わせるのが一番駄目だ。あいつがこれをおれにけしかけたのは付け込ませようと思ったからじゃない。ここで付け込んだらあいつに殺される。うじうじと今の関係に甘んじていたおれに告白なりなんなりしろとおれに発破をかけているだけだ。
「……」
頭ではわかってる。わかってるのに言葉が出てこない。
「やっぱりこんな私にだけ都合の良い話、ないよねえ……」
おれがもたついている間に馬鹿げた発想が萎んでいくのがわかってこのままだんまりを貫くのも手だなと一瞬男らしくないことを考える。だがこれ以上に馬鹿げた発想をして、今度はヒナに相談することもなくそれを実行されたら今度こそ終わりだ。今回の馬鹿げた発想だって思いついた瞬間おれの知らない男に打診をかけてそいつがこいつに好意を持っていたらカモネギをひょいと奪われていた可能性だってあったんだ。こいつが誰のものにもならなかったのはただただ運が良かっただけで、これ以上だんまりを決め込んでもおれに都合よく動くことは絶対にない。おれが動かなければ誰かにさらわれるだけだ。
わかってる、のに。
「……スモーカーくん? そんなに呆れなくってもよくない? 変なこと聞いてごめんね」
「……なんでおれは候補から外れたんだ、一番お前に近い男だろ」
好きだ、と言えばいいだけなのに、口から出た言葉は全く違った。だけど、大事なことだ。告白する前にフられる方が傷は浅くなるだろ。男らしくない遠回りの質問をするおれに気恥ずかしそうに笑う姿をじっと見つめる。
「……笑わない?」
「笑わねェ」
泣くことはあるかもしれないが。
「肩書きだけの結婚のはずなのに、スモーカーくん相手だったら、……ほんとに好きになっちゃいそうで、迷惑かけたくないから」
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