タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2023/10/04 スモーカー
抱き締めた身体はあまりにも細く・君を喰らわば毒まで・君の手の大きさに慣れた私の手


「荷物貸せ」
「そんなに重たくないよ?」
「いいから」

 偶然出会ったスモーカーくんに突然ひったくるように私がふたつの手で持っていた荷物を奪われる。片手でまとめあげて軽々と持ってくれてありがとうと言うのにちょっとだけ間ができてしまった。遠慮とかじゃなくて本当に見た目より重たくないのに、スモーカーくんだって実際私が持ってたそれをひとつの手で簡単に持ち上げて軽さは理解したはずなのに、こんなもん持ってたのかと言わんばかりにとっとと寄越せよと文句をつけてくるから優しいのか乱暴なのかわからなくなって思わず笑った。

「仕事落ち着いた?」
「馬鹿どもが浮かれる季節のせいで落ち着かねェ」

 大変だね、と言っても荷物をひったくった時と同じテンションでああと頷く姿があまりにも軽くて忘れてしまいそうになるけど、命をかけて戦ってくれてることにいつも本当に感謝してる。

「お前は?」
「スモーカーくんの忙しさに比べれば落ち着いてるよ」

 おれと比べるな、なんて、誰よりも命をかけて戦ってくれているのにまるで私の方が大変な目にあっているかのように心配してくれるのがくすぐったい。いつもよりどこかくたびれた姿のスモーカーくんを私の方こそ心配したいのに、そんな心配はきっと余計なお世話で、きっと平和に暮らしてる私たちの楽しそうな姿を見せるのが一番良い。はず。頭ではわかっていてもやっぱり心配で、大きな怪我をしていないかが気になってスモーカーくんをそっと検分しているところに不可思議な音が響いて思わず足を止めそうになった。

「今の音、何?」

 スモーカーくんが全く警戒していないから害をなす何かではないことは理解したけどやっぱり気になる。きょろきょろとあたりに視線を動かす私に、おれの腹の音、とまた軽く答えるから目を見開いた。お腹の音? 獣のように響く音だったのに。

「朝も昼も海賊どものおかげで食いそびれたからな」
「食べてく?」

 一刻も早く腹拵えをしたいはずなのに帰宅途中に私と出会っちゃったせいで荷物持ちをする羽目になった優しいスモーカーくんに申し訳なくなる。

「いつもお世話になってるし、食べていきなよ」
「いや、……そういうつもりで言ったわけじゃねェから……」

 命を賭けた仕事の話の時ですら重たくならなかった口が重たくなって首を傾げる。

「このあと予定あるならせめておにぎりだけでも。何かお腹に入れないと倒れちゃうよ」
「予定は、ねェ、」
「じゃあ食べてったらいいじゃない」

 どんどん歯切れが悪くなるスモーカーくんがわからない。スモーカーくんが遠慮したり嘘をついたりしてるから歯切れが悪くなるのはありえなくて、だけど他にそこまで渋る理由が思いつかなくてとにかく頭にはてなが浮かぶ。

「予定がねェからだめなんだろ、」
「なんで?」
「……女の家に男が夜行くのはだめだろ」

 優しいけどデリカシーがあるとは言えないスモーカーくんから発せられたとは思えない気遣いに思わず唖然として、それから吹き出してしまった。

「あは、スモーカーくんなら大丈夫でしょ」
「……おれだからだめなんだろうが」

 ついたな、とスモーカーくんが荷物をひったくった時と同じように唐突に返してきたから驚いて返事が脳に届くのに時間がかかる。スモーカーくんだからだめ? 意味がわからない。ぐうぐうと獣のようなお腹の音がずっと鳴ってるのに。はてなが消えない私を置いたまま背中を向けたスモーカーくんは煙になって飛んでいってしまった。