タイトルを考えるのが死ぬほど苦手
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2023/10/11 ロー
温もりが消えていく・月は遠くとも・サイズの合わない指輪
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「……なにしてるの?」
「指切っていいか」
「だめだよ」
穏やかな波が続いたのが気持ちよくて船の影でうとうとしていたところに人の気配を感じて目を開ければ私の指を刀で斬ろうとしているロー。質問に返ってきた言葉に驚きは一瞬でどこかへ駆け出していってしまって逆に冷静に断れた。既に広げられていた青い膜がパチンと弾けて、あと少しでも目を開けるのが遅かったら勝手に斬られてたのかもしれない事実に気付いて肝が冷える。言葉通り斬られるわけじゃなく、痛くも痒くもなく体の一部が切り離されるだけであとで簡単に副作用も何もなくくっつけられるとわかっていても嫌なものは嫌だと首を振る。起きなかったら勝手に斬ろうとしたくせに、私が起きたおかげで律儀なローは質問をして拒絶されてしまったから大人しく言うことを聞いてくれている。それでもまだ諦めきれていないのか私の手を掴んだまま、むっと唇を引き締めて拗ねたような顔をしているけど。
「なんで起きるんだ」
「危険を感じたからかな」
むにむにと私の手を触りながらあかさらまに拗ねだしたローに呆れる。
「別にいいだろ、指くらい」
「よくないよ」
「ちゃんと返すのにか?」
「……いや、うん、」
私の方が間違ってるかな?なんて一瞬思考が揺らいでしまいそうになる程ローがおれは間違ってないと言わんばかりに言葉を繋ぐから返事に詰まる。
「……でもローもほんとはだめなことってわかってるから私が寝てる隙に勝手に斬ろうとしたんでしょ?」
本当に悪いことだと思っていないなら、断られるとも思わず正々堂々と起きてる私に許可を求めにきたはず。本当はだめなことだとわかっていて、聞けば断られると思ったから、こっそり盗んでいこうとしたくせに。図星だったのか、ぐ、と呻いて俯いて視線を逸らしたローに思わず笑ってしまう。
「いくらねばっても貸さないよ」
むにむにむにむにと名残惜しそうに私の爪やら関節やら指の隙間やらつけ根やらをずっと触りっぱなしのローに再度忠告をする。賢い脳みそをいくらぐるぐる回転させてもばかなお願い事の解決策は絶対に出てこないと思う。
「……これはお前のためでもある」
絞り出すような声に思わず笑ってしまったのがローに勝機ありと思わせてしまったみたい。私の笑い声を聞いて跳ねるようにあげた表情に余計に面白くなる。
「手を貸すのが私のためになるの?」
言った言葉をそのままの意味で放ったら困ってる人に手くらい貸してあげればいいのに意地悪な人間だ、と思われそうだけど、ローの場合は本当に物理的に斬って貸さなきゃいけないから誰だって断ると思う。ちゃんとした理由があれば少しは考えるけど。そう思って首を傾げた。そういえば一番重要な理由を聞いてなかったな。
「理由を教えてよ」
「それは、……」
「言えないの? ローが酷いことしないのはわかってるし、返すって約束守ってくれるのもわかってるけど、理由も聞かずに体の一部は貸せないよ」
諦めて、と触る手をどけようとしたのに一向に離してくれない。理由を聞いた瞬間また拗ねたように唇を引き締めて黙り込む姿はとても大きな懸賞金をかけられて死の外科医と呼ばれている海賊とは思えない。
「いいから貸してくれ」
「だーめ。私のことなのに理由も教えられないんでしょ?」
「……聞かない方がいい」
「どうして?」
それは、とまた口籠る。
「……、……」
ずっと黙ったまま固まる姿をじっと眺める。ローと私が我慢比べをしてもいつもなら私が折れることの方が多いけど、今日はさすがにローに罪悪感の重荷が乗っかっていることが私の勝利に貢献してくれた。
「……お前だって嫌だろ」
「なにが?」
「……間違われるのは嫌だろ」
「?」
なにを? もしかしてこの手、私の手じゃない? だからこっそり元の私の手と入れ替えようとしてた?なんて考えて首を振る。私の指は私の思考通りに動くしこの手は正真正銘私の手だ。じゃあ何を間違えるんだろう。ローが罪悪感に負けてそろりそろりと言葉にするのをどうにか理解したいのに、何もわからない。これじゃあ口を開いてるのに黙り込んでる時と変わらない。
「……………………ぃず、」
「ず?」
今口を動かした?と思うほど小さな動きで放たれた言葉はやっぱりその動き通りものすごく控えめで小さくて一部分しか聞き取れなかった。ん?と少しだけ身を乗り出してローに耳を傾けた。くそ、と小さな悪態をついて、覚悟を決めたのか息を吸い込んだローに今度こそ聞き逃さないように私も集中した。
「…………指輪のサイズ、間違われるのは嫌だろ」
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