タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2023/10/21 ロー
友情の枠をぶち壊す・人肌を求めて・答えは見つからなくても
※ちょっと可哀想かも


「お前はおれのオトモダチなんかじゃねェ」

 そう言えば、馬鹿なこいつでもおれを意識すると思ったんだ。海賊のくせに子どものお遊びのように純粋で無垢でお人好しな麦わらの一味でも、実際は子どもじゃないんだから言葉の意味を理解すると思った。おれにそういう感情が一切なくても少しでも天秤が友情から恋情へとぐらつく可能性にかけて。なのに、

「? 知ってるよ?」

 天秤がぐらつくどころか、最初から友情も恋情も乗っていなかったことを突き付けられて腕を吹っ飛ばされた時にもしなかった気絶をしたんだと思う。気付いたら目の前にあの女はもういなかった。
 おれの言葉に驚くこともせず、怒りもせず、傷つきもされなかった。同盟の意味合いを勘違いしている割合の方が多い馬鹿でお人好しな一味だから、友達じゃないと言えば驚くと思ってしまった。あるいは今までの付き合いはなんだったのかと怒って突っかかってくるのかと。傷付けたいつもりはないが、もしくは泣かせてしまうのかと思った。のに、現実はそのどれでもなかった。海賊の同盟の意味を正しく理解できず、適切な距離感を保っていられなかったのはおれの方だった。お前らを利用して同盟を持ちかけたのはおれのくせに。突き放すおれに根気良く話しかけてくれたのは、別におれを友達だと思ってたわけじゃない。円滑な同盟関係を築くためで、勘違いしたおれが馬鹿だ。利用しておれの目標に巻き込んで一味をめちゃくちゃにしたくせに、自分の問題だけすっきり解決したからって浮かれたおれが馬鹿だった。おれからすればあいつらはおれの問題に命懸けで付き合ってくれた馬鹿でお人好しで気の良い奴らでそのひとりに愛情が芽生えるのも当然の摂理でしかなかったが、あいつらからすればおれは自分のところのキャプテンを利用し問題を持ち込む最低な男だ。友情すら芽生えるはずがない。あいつらがそれを表に出さないお人好しだから、勘違いした。土俵にも立てていないのに意識してほしい、だなんて馬鹿みたいなことを考えてしまった。

「どうしたの? 腕、痛む? チョッパー呼んでこようか?」

 くそ、と目頭が熱くなって手のひらで覆って馬鹿みたいにうずくまったおれに降ってきた声に息を詰める。顔を上げれずにじっと固まることしかできない。友達でもなんでもない男のところになんで戻ってくるんだ。なんで心配なんかするんだ。海賊のくせにお人好しだから馬鹿みたいに勘違いしてお前のことを好きになってしまって浮かれる間抜けな男が生まれたのに。
 そっと布越しに一度はこの身から離れた腕の付け根を労るように優しく撫でられて、ぐ、と呻くことしかできなかった。触れられた腕を痛がってると思ったのかごめんねと見当違いな謝罪を呟いて手の感触が離れていくから、反射的にその手に追い縋ってしまう。顔もあげずに手首を掴んで呼び止めて、どうすればいいのかわからない。

「ね、チョッパー呼んでくるから」
「よばなくていい」
「でも、……そんなになるほど痛いんでしょ?」

 うちのドクターはなんでも治せるんだから、とおれの気を紛らわせるように明るく本音の混じった冗談を紡ぐ声にただ首を振る。お前のところの医者の腕を疑ってるわけじゃない。

「外傷があるわけじゃねェ、」

 震える声は馬鹿みたいに説得力がなくて思わず笑った。馬鹿みたいだ。ふざけたことを抜かして手首を掴む男のことなんて振り払ってでも放っておけばいいのにお人好しはこの場から離れない。

「でも、」
「……いい、」
「ん?」

 訳もわからず手首を掴まれているのに、おれのくぐもった声をしっかり耳に滑らせるために膝をついて横に並んでくれたんだろうことが声の近さでわかる。そんなふうに優しくするから、なんて、懲りもせず何も悪くない女を責め立てる自分に苛立つ。どうしたの、と尚も優しく声かけをしてくれる女に、ぽろりと言葉がこぼれ落ちる。

「……ともだちに、なってくれ、」
「え?」

 友達なんかじゃないと言ったくせに、友達になってくれと乞い願う姿は酷い有様で、でももうそう頼むしかなかった。天秤に乗せられていなかったんだから、もう馬鹿正直に乗せてくれと頼むしかおれには思いつかなかった。

「なんで?」

 お人好しのくせに二つ返事で頷いてくれない。そんなにきっぱりただの同盟相手として立場の線引きをするくらいなら、雑談も、優しさも、おれにぶつけてこなければよかったのに。そうすればお前のことを好きにならずにすんだのに。

「友達でいいの?」
「……、?」

 不思議そうに問われた言葉に思わず顔をあげた。急に視界に光が戻って目が眩んでいる間に、ぺたりと何かが頬をなぞって体がびくつく。何か、なんて今この状況で自分以外におれに触れられるのは目の前にいる女しかいないのに。なんで泣いてるの、と困ったような声が聞こえて瞬いた瞬間にも涙がこぼれおちるのを自覚する。急に飛び込んできた光と、女のよくわからない言動にこれ以上の涙は追加でこぼれ落ちることはない。はずだ。

「私と友達になりたいの?」
「……、ああ、」

 せめて、天秤に乗らせてほしい。

「恋人じゃなくて?」
「……あ、?」
「だってロー、私のこと好きなのに」