タイトルを考えるのが死ぬほど苦手
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これの続き
2022/03/03
今はまだ見えなくても・二人で辿り着いた未来・悲しみを放り投げて
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せーのっ!
宴だー! サンジ! 誕生日! おめでとー!!
全く揃わない声。私も叫んだけれど、誰とも揃わなくてみんなで大笑いしてしまう。笑顔のみんなの視線の先にはこれまた満面の笑顔を浮かべたサンジくん。回復力が超人染みているサンジくんはたった一日で復活した。メロリンすることすらできなかったのに、夕方にもなれば鼻血を吹き出してしまうくらいには調子を取り戻していて今ではもう完璧にいつも通り元気で優しい紳士なコックさん。
一日ずれたけど盛大なサンジくんの誕生日パーティーの料理の数々は、主役のはずのサンジくんが作ってくれている。だけどサンジくんにとって、主役だから座っていて、だなんて彼から料理をとりあげてしまうことの方が拷問だから、サンジくんの誕生日パーティーはサンジくんが用意した料理を美味しく食べるのがこの船の正解。
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みんなに散々祝われてもみくちゃにされたサンジくんにそっと近寄って口を開く。
「誕生日おめでとう、サンジくん」
「ありがとう、……昨日はごめ、……ありがとう」
ごめんね、と続けそうだったサンジくんにわざとらしく頬を膨らませてみればお礼に切り替えてくれたからよしとする。長年染み付いている考えがそうそう変わらないのはわかってる。それがサンジくんの良いところで、悪いところだということもわかってるから、ほんの少しでも自覚してくれただけで今はじゅうぶん。
「何がほしい?」
「え?」
「誕生日プレゼント」
「もうたくさんもらった、けど……? えっ、もしかして昨日レディと一日中過ごせたのはおれの都合の良い夢?!」
「どうしてそうなるの」
不思議そうに私を見る目が一瞬で絶望に染まって崩れ落ちるから呆れつつも同じように隣にしゃがみこんで覗き込む。うるうると瞳を潤ませながら私を見つめる姿が昨日の体調を崩したサンジくんを思い出させて思わず昨日のように手を差し伸ばしてしまった。慰めようと頬を撫でた瞬間絶望が吹き飛んで今度はでろりと溶けてしまったサンジくんに呆れながらも笑いが込み上げる。うん、それでこそサンジくん。
「夢じゃなくてよかった……誕生日にレディとずっと一緒にいられたってだけで一生分のプレゼント貰ったようなもんなのに、これ以上貰ったらバチが当たっちまうよ」
めろめろしながら謙虚な言葉を紡ぐサンジくんに困ってしまう。
「じゃあ私はこれから先、もう二度とサンジくんと一日ずっと一緒に過ごせないの?」
そんなに貴重な時間だったのなら、私に触れられても鼻血を出さない重症患者だったあの時ベッドに潜り込んでおけばよかった。
「えっ、……えっ?! もぐっ、えっ?!」
どうやら声に出ていたみたいでサンジくんの白い肌が真っ赤に染まる。まあ聞かれて困ることでもないし、そのまま口は閉じない。
「サンジくんの誕生日はこれから何回もあるのに、私は昨日のたった一回しかプレゼントあげられないだなんて思ってなかった」
そもそも昨日のはプレゼントじゃなくて、ただの看病だし、そりゃ一日中一緒にいられて幸せだなと思ったけど、プレゼントのつもりじゃなかったのに。あーあ、としゃがみこんだ膝に頬を引っ付けてわざと大袈裟に拗ねたふりをすれば、優しいサンジくんは前言撤回してくれることを知っている。
「うぐ、ゥ、……じゃ、じゃあ、その、……レディの誕生日におれ、頑張るよ!」
「ん?」
サンジくんの誕生日の話のはずが唐突に私の誕生日の話にすげ変わって瞬く。
「一生分祝ってもらったから、レディの誕生日を一生分以上のお祝いして、そしたら次のおれの誕生日にまた、……また……風邪、引いてなくても一緒にいて、ほしい……」
白い肌を真っ赤に染めたのを長い足に隠れるように顔を埋めてどんどん掻き消えていく小さな声。だけどしっかり耳に届いた。届いたけど、言われた言葉の甘さに頭が働かなくてはくはくと口を動かすだけで声を出せない。
「……誕生日終わったのに、わがまますぎた?」
あまりの衝撃に喋れなかっただけの無言の私に不安になったのか、ちら、と隠れつつも片目だけ覗かせたサンジくんに思わず飛びつく。しゃがみこんでいるところを思い切り勢いよく飛びついたおかげで、いくら体幹がすごいサンジくんでも耐えきれなくてふたりして後ろへ倒れ込んだ。ごつん、と大きな音がしたのはたぶんサンジくんが後頭部を打った音。ごめんなさい。それでも女の人に優しいことが体に染み付いているサンジくんは目を白黒させながらも私の腰に手を添えていて、私の体は甲板に触れることなくサンジくんの体の上に全て乗っかっている。
「エッ待ってやっぱ昨日のも今日のも夢?!?!」
後頭部を打った衝撃でちかちか星が瞬いて、私という女体がサンジくんの上に乗っかっている衝撃でハートもちらちら浮かんでいるサンジくんの瞳の隙間に私が映り込む。
「夢じゃないし、わがままでもないよ。さっきの言葉、本当? 約束してくれる? 絶対?」
目をハートにしながらも私の言葉にこくこくと何度も首を縦に振ろうとして甲板にごつごつ頭を打っているサンジくん。サンジくんの誕生日で私がサンジくんに何かをあげたいと思って聞いたのに、私が約束というプレゼントを貰ってしまった。だけど私はサンジくんと違ってわがままだから、バチが当たるからこれ以上もらっちゃだめだなんて思わないし、もっともっとと欲張る。とりあえず来年はサンジくんのベッドに本当に潜り込んでやる。サンジくんのお返しがどうなるか楽しみで、未だにこくこくごつごつと首を振り続けるサンジくんの首に腕を回してぎゅうっと力強く愛を込めて抱きしめる。ビシッ、と石化したかのような音が下から聞こえて、もうサンジくんの耳が働いていないのはわかっていてもそっと耳元で、おめでとう、と囁いた。
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