タイトルを考えるのが死ぬほど苦手
← →
2022/03/21
▼
サンジくんは忙しい。食べても食べてもお腹の空く育ち盛りが多いクルーたちのお腹を満たす本業はもちろんのこと、掃除洗濯戦闘その他もろもろ。麦わらの一味が快適で健康的な暮らしを穏やかにおくれているのはひとえにサンジくんのおかげ。
だからそんな忙しいサンジくんの手を煩わせないように、自分でできることは自分で、サンジくんに甘えずに頑張ろうと思った。なんだか母親から独り立ちする子どものような決意に自分のことながら笑えばいいのか呆れればいいのかわからなくなったけど、さて頑張るぞ、と、意気込んだは良いものの。
「寝坊しちゃってごめんなさい!!」
サンジくんに見つかってしまえば、レディはそんなことしなくたって良いんだよぉ〜!とあれやそれやと鮮やかに仕事を奪われてしまうからサンジくんが寝静まってからひっそりとサンジくんじゃなくても私にできることを。中途半端にしてしまえば余計にサンジくんの仕事が増えてしまうからときっちり全て完璧に仕上げるために時間がかかって眠るのが遅くなってしまった結果がこれだった。
ナミちゃんやロビンちゃんは優しさから、眠れる時に眠っておかないと、と私をそっとしておいてくれて、起きたのは結局太陽が真上で輝くお昼時で。寝癖を直すのもそこそこに大慌てでダイニングの扉を開くと同時にサンジくんに謝った。
「レディおはようううわ! 寝癖だァ! かわいい! 触りたい! 触っていい?! だめだよね! ごめん! ここ座って!」
どたばた騒がしかっただろう私を上回る騒がしさに思わず目を白黒させているうちにいつのまにか着席させられていた。あれ? おかしい、私が謝っていたはずなのにサンジくんが謝っている。なんで? 目の前には続々と色とりどりに美味しそうな朝ごはん(お昼ごはん?)が並べられていってまた心臓が罪悪感に軋む。サンジくんの忙しさを減らそうと努力をしたはずなのにこの温かな湯気の立つ出来立てのごはんは、寝坊をしたせいで予定の狂った料理たち。温かなごはんたちを並べ終えたのかサンジくんが召し上がれ、と楽しそうに言うから、ごめんなさい、ともう一度呟けば不思議そうに首を傾げられる。サンジくんが悲しむのは料理に手をつけないことで、だから、両手を合わせていただきますと呟いてカトラリーを手に取った。出来立ての料理を舌に乗せて、美味しい、と心の声が落ちればそれはそれは嬉しそうに笑うサンジくん。サンジくんにとっての幸せはこうして、美味しい、と笑ってもらうことだということはわかってる。わかってても私もサンジくんの役に立ちたかった。サンジくんの仕事を少しでも減らして、時間の空いたサンジくんとのんびりお喋りがしたかった。一気に全てをやろうとしたのがきっとダメだった。気合を入れすぎて時間がかかってしまったのが寝坊の原因。何事も最初は少しずつ。次は寝坊をしないようなスケジュールを立ててサンジくんの役に立とう。美味しいごはんに気分を持ち直す私の前の席にサンジくんがにこにこしながら座って瞬く。
「今日はいい日だなァ」
「え?」
寝坊をして出鼻を挫かれてしまった私とは正反対に楽しげに呟いたサンジくんに思わず聞き返す。
「だってレディが寝坊してくれたおかげで、こうしてレディを独り占めできてるから」
私の努力が空回ってサンジくんの手間を増やしてしまった、はずなのに、サンジくんはそれが幸せだと笑うから私の寝起きの頭ではもう何もわからなくなってしまった。
← →