タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2023/11/01 ロビン
誰も知らない二人だけの秘密・ひたひたと迫るのは・障壁はこの手でぶち壊す


「……あなたと私は友達、よね?」

 三十の女が言う言葉じゃないのはわかってる。だけど、安寧の地を見つけたばかりの私には何もかもが初めてのことで、小さな子でも聞かないようなことを逐一聞いてしまう。私の馬鹿げた言葉にいつも根気良く付き合ってくれる彼女に、今日もまた懲りずに尋ねた。笑って頷かれるのがわかっていたくせに、もちろんと予想通りの返事が返ってきて涙が出そうなほどに嬉しくて言葉に詰まる。嘘じゃないのはわかる。わかる、けど。

「隠し事があっても、友達、かしら?」
「言いたくないことは言わなくたっていいんだよ」

 みんなのことが大好きだけれど、みんなと出会う前の私のことはあまり知られたくなかった。アラバスタのお姫様にしたことはみんなにも知られてしまっているけれど、それ以外にだってひどいことをたくさんしてきた。そんな私の過去を知られたくない。私だってそんな風に隠し事がいっぱいあるくせに、なのに、あなたのことで知らないことがあるのは嫌で、全部教えてほしくなる。言いたくないことは言わなくていい、そう言われてほっとしてるくせに、自分は言えないくせに、あなたの秘密を暴きたくなる。私と違って他人を蹴落としたり手を汚したことのない良い人だから悪い隠し事なんてないはずなのに、そんなあなたが私に秘密にしてることがある。それを、暴きたくて仕方がない。私は優しいあなたみたいに言いたくないことは言わなくていいなんて言えない。

「私を嫌いにならないで」
「どうしてそんなこと言うの? ロビンちゃんのこと、嫌いになんてならないよ」
「友達に、優しくできないの」

 不思議そうに首を傾げる姿に口を開いても次の言葉を紡げない。嫌いになんてならないと、世界政府を敵に回してでも私を取り戻しにきてくれた人の言うことに説得力しかないのをわかっているのにそれでも次の言葉を紡ぐことができない。

「別にいいよ。だって友達なら喧嘩しても仲直りすればいいだけだもの。でも私、ロビンちゃんと喧嘩できるかなあ、なんだって許してしまいそう」

 くすくす笑いながらそんなことを言われて瞬く。なんだって許してくれるの? 今でさえ、こんなにも甘いのに? だけど、なんだって許してくれるくらい好きだって言ってくれるのに、あなたは私に秘密にしていることがある。

「……ロビンちゃん?」

 黙り込んだ私としっかり目を合わせてどうしたの、と聞いてくれるあなたに踏み込んで、友達を失いたくない。あなたは私をそっとしてくれるのに、私はあなたの全てを知りたいと思ってしまう。秘密は誰にだってあるものなのに。私だって曝け出せないのに。それでも、あなたが許してくれると言ったから。嫌いにならないと言ってくれたから。それを信じてずっと聞きたかったことをとうとう口にした。

「あなたは私に何を隠してるの?」

 瞬間、後悔した。彼女の表情がわかりやすく歪んで傷付けてしまったことがわかったから。そのわかりやすい反応に自分だって隠し事があるくせに彼女に隠し事をされていることが懸念ではなく事実だとわかってしまったから。傷付けたことに傷付いて、目を伏せて謝る。

「ごめんなさい、私だって言いたくないことはあるのに」
「ううん、……ううん、ロビンちゃんは悪くないよ、違うの、」

 何が違うのかわからない。今私はどんな宝物より一番大事にしなくちゃいけない人を傷付けたのに。

「ロビンちゃんはまだ、色々やり直してる途中だから、」

 意味のわからない言葉に思わず視線を戻してしまう。しどろもどろに意味のない音を出して呻きながら言葉を選ぼうとしてる姿に首を傾げる。支離滅裂な言葉で意味がわからなくても、彼女が私を嫌わずに気遣ってくれてることは全身で伝わる。でもあんなにもわかりやすく私は彼女を傷付けてしまったのは事実なのに、どうして彼女が私を慰めようとしてるんだろう。

「ロビンちゃんにはまだ早いっていうか、私もまだ気持ちの整理がついてないし、」
「……?」
「ごめんね、……好きだよ、ロビンちゃん」

 それだけは信じて、と優しく手を握られる。どうして傷付けた私ではなく彼女が許しを乞うているのかがわからなかった。