タイトルを考えるのが死ぬほど苦手
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2023/11/04 スモーカー
言葉にも声にも出来ない・吊り上った唇に目を奪われる・恋をしましょう
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「スモーカーくんの初恋ってどんな人?」
「知らねェ」
「……そんなあからさまに話題ぶったぎらなくてもいいじゃん。冷たい」
そりゃスモーカーくんに振る話題としては適切じゃないって分かってるけど、でもそんなスモーカーくんの初恋の話だからこそ気になるから聞いたのに。ちょっとした世間話も相手にしてくれない。視線も合わせず食い気味に切り捨てられて唇を尖らせる。
「…………」
おしゃべりは鬱陶しい気分だったのかなと口を噤んだのにちらちら気まずそうな視線が刺さって顔を向ける。やべ、と反射的に視線を逸らされたもののゆっくりまた視線が戻ってきたから傷心のまま何と尋ねた。ちょっとぶっきらぼうな聞き方になってしまって、やつ当たりしちゃったことにちょっとだけ後悔する。だって冷たい返事にしょげてしまったけど、そもそも私の方がスモーカーくんのプライバシーに土足で踏み込んでしまっただけで、別にスモーカーくんは悪くない。ただちょっと、せっかく仲良くなれたと思ってたのに、そういう会話はまだできない程度の仲なんだって理解して、勝手に傷付いただけ。
私が勝手に拗ねてるだけなのに気まずそうに視線をうろつかせて口をもごつかせる姿をじっと見る。
「別に、……冷たくしたつもりはねェ、……ないものはない、から、そう言うしかねェだろ、……悪かった」
いつもたくさんの部下に届く大きな声が近くにいる私にしか聞こえないような細々とした小さな声で紡がれた言葉に目を何度も瞬かせる。ばち、とあった視線がまた気まずそうに逸らされてがりがりと髪の毛をかきむしる姿を呆然と見上げることしかできない。
「こい、……したことないの?」
「…………さっきも言っただろ」
何も考えずにぽろりと落ちてきた言葉に肯定が返ってきてようやく止まっていた思考回路が再起動した。スモーカーくんが仕事に打ち込んでいる今、そんな暇はないと一蹴されるのも、興味がないとあしらわれるのも想像できた。恋人に構う時間も、好きな人を作る時間もないだろうから。だけどまさか、恋をしたことすらないなんて思わなかった。だってスモーカーくんはたまにほんの少しだけデリカシーが足りないところもあるけれど、この荒れた世界で正義を貫く善い人で良い男だから、仕事に明け暮れる前の思春期には普通に恋をして和やかな日常をおくっているところを想像できて、だから、ええと。
「年上のきれいなお姉さんとか好きにならなかったの?」
小さな頃に素敵なお姉さんやお兄さんに心奪われるのはよくあることで、スモーカーくんだって誰かにどぎまぎしたり、……なんて考える前に、ねェ、とまたばっさり斬られた。私がさっき、冷たい、だなんて理不尽なことを言ったから、ものすごく柔らかくて出来る限りの優しい否定の二文字だった。
「……スモーカーくん、初恋、まだなんだ」
「……ああ」
気まずそうに頷くスモーカーくんを見て、改めて反省する。
「ごめんね、変なこと聞いた上に勝手にいじけて」
「いや、……」
なんて返事をすればいいのか戸惑ってもごもごと口籠る姿に反省はしつつも微笑ましくなってしまう。だって、スモーカーくんの初恋に立ち会えるかもしれないと思うとわくわくする。さっきみたいに余計なことを言って困らせたり、からかったりなんて絶対しないと固く誓いながら、でも見守るのはいいでしょ、なんて勝手な判断をして頬が緩んだ。
「そっかあ、これからなんだね」
まあそうなるな、と相槌を打つスモーカーくんをじっと見上げる。
「スモーカーくんでも恋したら浮かれたりするのかな」
「……知らん」
眉間に皺が寄っていることの方が多くて、どちらかと言えば乱暴な言葉遣いの男の人が好きな人にだけ甘くなる姿は愛に満ち溢れていて想像だけで可愛く思う。
「その人だけきらきら輝いて見えて、その人のことを想うと幸せな気持ちになったり、恋は楽しいよ」
切ないこともたくさんあるけど、初恋を迎えたことのない人にわざわざマイナスなイメージを植え付けなくてもいいかと煌びやかな部分だけ口にして微笑む。
「……へえ」
「気付いたら目で追いかけてたり、胸がいっぱいになってごはんが食べられなくなったり、寝る前に急にその人のこと思い出しちゃって眠れなくなっちゃったり、」
会話を打ち切るわけでもなく寧ろなんだか興味深そうに聞いてくれる相槌に私もつい調子に乗って指折り数えて初恋の感覚をあげつらねてしまう。だけどふと、大人になってからの初恋だともうちょっと落ち着いてるのかな、なんて思って指が止まった。たくさん言っちゃったけど、これは思春期によくある初恋の感覚で、もう立派に大人に成長しきったスモーカーくんには当てはまらないかもしれない。せっかく耳を傾けてくれているスモーカーくんに偏った知識を教えてしまって逆に恋から遠ざかってしまったら申し訳ない。今更ながらに個人の差があるからね、なんて切り上げようとしたのに、なるほど、なんて納得されてしまって焦る。
「それがそうなら初恋は今お前にしてるな」
なんだ、これがそうなのか、と長年の謎が解けたかのようにすっきりと眉間の皺を解いて告げられた言葉にぽかんと口を開けて固まることしかできなかった。
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