タイトルを考えるのが死ぬほど苦手
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2023/11/20 スモーカー
抱き締めた身体はあまりにも細く・余裕は夜の向こう側・苦い恋を齧る
※なんでも許せる人向け
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牢屋の柵越しに目があったのは麦わらの一味の女。海軍と海賊が牢屋越しに対峙するのはおかしくはない。だけど間違いだ。おれの位置と女の位置が逆なら正しかった。海軍のおれが牢屋の中に身動きを封じられながら放り込まれていて、海賊の女が牢屋の外で海賊らしく自由に振る舞っている。
「……捕まっちゃった?」
「見りゃわかんだろうが」
海賊に憐れまれる海軍なんて聞いたことがない。弱みなんて見せるまいと海楼石で力の抜ける体に鞭打ちながら睨みつける。
「たしぎちゃんは一緒じゃないの?」
「海賊に内情を教えるわけねェだろ」
「別に海軍なんてどうでもいいけどあなたを助けられる人が他に来てるのかを聞きたかっただけ」
あ?と威嚇するような音が喉から鳴るおれのことなんか気にも止めずに牢屋の中とは違って自由とは言え狭くて薄暗い場所をうろうろしだした海賊に眉根を寄せる。海賊が欲しがる金目のものなんてこんな薄暗くて汚い牢屋にあるわけがない。
「うーん、さっきの人かな」
ちょっと待っててね、と軽やかに出ていったかと思えばずるずると何かを引きずる音と共に戻ってくる気配に訝しむ。何もない牢屋に戻ってくる意味なんてないだろう。重たい、と嘆く声に視線を向けて目を見開く。さっきまで散々おれを馬鹿にしていた見張り番が昏倒していて、どうやらそれを引き摺ってきた女に瞬くことしかできない。
「あなたがこんなのに負けるわけないのに、……どうせ人質でもいたんでしょ」
「うるせェ」
図星でしかなくて気力が抜け落ちてしまいそうになるのを耐えながら吐き捨てる。よりにもよって海軍の前で身包みを剥ぎ出した女に、おい、と静止の声をかけたってどうしようもない。くそ、と苛立ちを隠すでもなく舌打ちをしてただ動向を見ることしかできないのが不甲斐ない。
「あ、あったあった」
女の嬉しそうな声と、ちゃり、と音がして鍵束が女の手中におさまるのが見えて固まる。
「もうちょっとだけ我慢してね」
「……海賊に助けられる程落ちぶれてねェ」
「うん、知ってる。助けるつもりなんてないよ」
見張り番の上に座り込んで頬杖をつきながら楽しそうに笑う海賊に舌打ちをした。クソみてェな趣味をしてやがる。海軍が捕まってるのを見るのがそんなに楽しいか。
「ルフィが上で戦ってるの。今あなたをここから出したら邪魔しに行くでしょ?」
「邪魔なのはてめェら海賊どもだ」
「まあそうなんだけど、キャプテンのやりたいことやらせてあげるのがクルーのお仕事だからルフィが満足するまで私が見張らせてもらうね」
くそっ、と掴みかかりたくても気合いは海楼石に吸い取られて無様に床に崩れ落ちる。ごめんね、と申し訳なさそうに笑われても睨むことしかできなかった。
「ひとりで来たの?」
「……」
「こういう時のために仲間もちゃんと連れてこないとだめだよ」
「……」
「……こんな風に海賊と喋りたくないでしょ? 部下を守ったり育てたりするのもいいけど、海軍の中でちゃんと背中守ってくれる仲間見つけないと」
海賊に嗤われて黙らせたくとも今のおれには大人しく聞くことしかできない。女に乗っかられているというのにうんともすんとも言わない見張り番に眉を顰めた。そういえば、あんなにも乱暴に引きずっていたのにぴくりとも動かない。
「おい、殺したのか」
「どっちだと思う?」
かっと目の前が赤くなってこめかみが引き攣る。所詮、海賊は海賊だ。そんなおれを見て不思議そうに首を傾げるから余計に苛立つ。
「海兵さんを捕まえた悪い人の心配してるの?」
上の方で瓦礫が崩れるような一際大きな音と地響きがして意識が逸れる。その一瞬で頭に上った血が循環して冷静になった視界でもう一度女の下敷きになった見張り番を見れば微かに腹が呼吸で動いているのが上下して見えて胸を撫で下ろす。紛らわしい言い方しやがって。
「そろそろルフィも満足したかな」
見張り番の上から降りた女が柵に近付いてきて警戒に体を強張らせる。今のおれは無力で、少しの油断が命取りだ。ちゃり、と鍵の束を指で遊んでおれを見下ろす女を睨みつける。
「助けてほしい?」
「海賊に助けられる程落ちぶれてねェっつったろうが」
あは、と笑う姿に吠える。
「じゃあ助けてあげよっと」
「……あ゛?」
「私は悪い海賊なんだから海兵さんの言うことなんて聞くわけないでしょ」
鍵束を柵の中に放り投げて、全部嫌がらせだよ、と笑って踵を返した女の背中を呆然と見送ることしかできなかった。
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