タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2023/11/27 19ゾロ
この先に何もないと知っている・柔らかい頬・意地の悪い笑顔でも愛しい
※なんでも許せる人向け


「……ゾロは結構意地悪するタイプだよね」
「お、よくわかったな」

 何度目かの馬鹿みたいな嘘に騙されて揶揄われたことに腹を立てて呟いた言葉に、にか、と悪気無く笑顔を浮かべる姿は全く反省なんてしてなくていらっとする。にやにやと笑いながら私を見下ろす姿にとうとう苛立ちがピークに達して思い切りお腹に向かって拳を突き立てたのに柔らかな腹巻きの奥にある硬い筋肉に負けた。痛い。

「大丈夫か?」

 心配なんかひとかけらもしていない上っ面だけの掛け声に負傷した手をさすりながらそのにやけた表情を睨みつける。

「…………好きな子ができたとき、そういう意地悪なことして嫌われてからじゃ遅いんだからね」
「お前おれのこと嫌いになったか?」

 負け惜しみでしかない私の発言に、ふむ、と一瞬考え込んでから返ってきた質問に、まさかそんな返しがくるなんて思ってなかったから怒りが霧散して首を捻る。まあくだらないからかいをしてくるたびに毎回毎回本気で苛立つけど、それでもやっぱり仲間だから嫌いにまではいかない。気がする。心の底から腹が立つのは本当だけど。

「まあ今のところは嫌いじゃないけど、この先はわかんないよ」

 いつか本当にいらっとするだけじゃ済まない日がくるかもしれないし。そんなのはわからないけど、ゾロにも好きな子に嫌われるよ、なんて俗な説教が効くんだななんてことの方に驚く。サンジくんやウソップ相手ならわかるけど、どんな敵にだって不敵に笑うゾロでも好きな子に嫌われるのは怖いんだ。

「嫌われんのは困るな、どうすりゃいい」
「意地悪しなきゃいいだけの話だけど」
「でもなァ、……膨れっ面が可愛いのが悪くねェか?」

 ゾロの口から膨れっ面が可愛いなんて単語が出てきたことにも、もう既に好きな子がいるらしい事実にも驚いて唖然とする。

「……好きな子の膨れっ面が見たくて揶揄ったり意地悪してるの? そんなの知られたらほんとに嫌われるよ」

 思わずドン引きした私にようやくことの重大さに気付いたのかにやにやした笑顔が引っ込んで何事か考え始めたゾロをじっと見る。

「…………嫌いになったか?」
「私に聞かれても知らないよ、気持ちなんて人それぞれなんだから」

 狼狽えるゾロに首を傾げる。ゾロの好きな子、誰なんだろう。私やウソップやチョッパー、それから島の見知らぬ子どもたちを揶揄う姿はよく見かけるけど、ゾロが今更蒼白になるほど揶揄い倒してた女の子とかいたかなあ。

「お前に聞いてる」
「好きな子がどう思うかなんだから私に聞かれてもその子の気持ちがどうだかなんてわかんないってば」
「だから、……だからお前に聞いてるんだろ」

 うーん、と思い付く限りのゾロの女性遍歴を思い出すために上の空だった私にかけられた言葉に固まる。ゾロを見上げれば困ったように眉を寄せて私の返事を待っていて、さっきのやり取りを頭の中で繰り返す。

「……まさか私のことが好きだから意地悪してたとか言ってる?」

 重苦しい空気があたりに広がって、ゆっくり頷いたゾロをじっと見つめる。本意を探ろうとじっと合わせた目が気まずそうに逸らされてなるほどと納得した。

「ふうん、そうやってまた揶揄うんだ?」
「……は?」
「さっき騙されたとこなんだよ、さすがに今日はもう騙されないよ。ていうかそういう人の気持ちで騙したりするのよくないよ。ほんとに好きな子できた時手遅れになっても知らないから。ゾロのばーか!」

 いつもならチョッパーたちと一緒にころっと騙されてしまうけど、さすがにさっきの今で騙されるわけがない。いつもと違って騙されない私に驚いたのか目をまんまるく見開いて唖然としてるゾロに、ふん、と怒りをあらわにして踵を返す。全く失礼しちゃう。私だってさすがにそれくらい盛大な嘘は見抜けるけど、だからって限度はある。些細でくだらない意地悪や揶揄いはその都度怒りはするもののその後に引きずることもないけど、人の気持ちで揶揄ったりするのは意地悪の度を超えてしまってる。

「ちょっ、おい、待て、」
「ウソップに線引き教えてもらった方がいいよ」

 手首を掴まれて思わずつんのめってしまったけどゾロのそのごつい手を顔も見ずに思い切り振り払う。さすがにその類の嘘はわかっても気分のいいものじゃない。ゾロはウソップに弟子入りすべきだよ。