タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2024/01/16 ロー
残された希望・薄氷をゆっくりと踏む・ずるいほど可愛い


「五歳の男の子相手になに、」
「おれが子どもの頃、シスターと結婚するにはどうすればいいと本気で相談してきたのは五歳のガキだった」

 白い頬を片方真っ赤にさせながら続けられた思い出に口を閉じるしかなかった。ひんひん泣きながら追い払われた男の子はベポが肩車をしてすっかり機嫌を直したみたいで安心したけどやっぱりそれとこれとは違う気がする。多少のやきもちを焼くくらいは可愛らしいけれど、二十代後半の海賊が五歳の善良な子どもを泣かせるまで追い詰めるのはどう目を瞑っても擁護できない。

「おねえさん、あのね、」

 もじもじちらちら私を見上げる子どもの頬はつついてしまいたくなるほどふくふくとしていて、それから子ども体温だからってわかじゃなく明らかに私を前にした照れからくる赤に染まっていて愛らしく微笑ましかった。

「おい」

 なのにローは、海賊でも震えあがるその声で子どもをただ一言で威圧した。

「何を言おうとしてる?」
「なに、……なに、……お、おねえさん、の、」

 震える声はもう涙が滲んでいたけどローを見て一目散に逃げる海賊よりよっぽど気概があって思わず感心した。のがいけなかったのかもしれない。帽子のふちが、おでこにぶつかって驚いて目をつぶった瞬間、唇に何かが触れて固まった。

「おれ以外の男によそ見をするな」
「おね、おねえさんが、けっこんしちゃったぁ!」

 ふえええん、と今度こそ大きな声をあげて泣いた男の子に、人前で私の了承もなくキスをされたことに気付いて手が出てしまった。ばちん、と頬が真っ赤に染まるほど平手打ちをしたのに、ふん、と満足そうに泣き喚く五歳の男の子を見下ろすからわなわなと唇を振るわせることしかできなかった私に変わってペンシャチベポがあれやこれやと男の子を連れ立ち慰めてくれたからほっとした。
 そんな経緯を思い出して私の手の形をした赤い紅葉を申し訳なく思いたいのに、肝心のローが開き直り過ぎているせいで素直に謝罪もできずにいる。そもそも人前でキスなんてしなければ私だって手は出なかったから、やっぱりローが悪い。五歳児の中でキスは結婚式の最中にだけ見るものなのか、あんな物言いをされたのも羞恥心をものすごく煽られて恥ずかしい。

「ふ、」
「何笑ってるの、怒ってるんだけど」

 唐突に頬を緩ませて笑う姿にむっとする。片頬に紅葉を咲かせたままかっこつけたってかっこよくなんてない。

「あの身の程知らずのガキ、おれたちが結婚したと思ったのだけは褒めてやってもいいな」
「……」
「……おれと結婚するの、嫌なのか」
「私の話全然聞かないから怒ってる」

 聞いてるが?と不思議そうに首を傾げる様がまさに話を聞いていない証拠でため息をつくことしかできなかった。