タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2024/01/21 ゾロ
今ならしんでもいいよ・一度でいいからキスをください・息をひそめてやり過ごす


「酔っ払ったの?」
「酔うわけねェだろおれが」

 ずっとあちらこちらにふらついていた女がようやくおれの元に帰ってきたと思ったら、ふ、と息を吐くように笑われて睨みつける。酔うわけねェだろ。別に、いくら飲んだって酒はうめェだけだ。酔うわけがない。

「なんでジンベエに勝負ふっかけちゃったの?」
「おれが勝った」
「うーん、……大人の対応されただけだと思うけど」
「おれが、勝った」

 おれのこの姿を見ても呆れたように笑うのに眉を顰める。大人の対応ってなんだ。ジンベエが降参って言ったんだからおれの勝ちだろ。勝負事なのになんでわざと負ける必要があるんだ。意味がわからないことを言うな。もうこれで最後にした方がいいよ、なんて言いながらおれの股座から酒瓶を取り上げようとしたから慌ててそれを阻止する。確かに十分楽しんだし酒はこのジョッキの中に入っている分を飲み干したら仕舞いにしようとしてた。が、まるでおれが酔っ払っているかのように労いながら酒瓶を取り上げようとするなら話は別だ。おれはまだまだ飲める。売られた喧嘩は買わねばならない。ジョッキの中に酒瓶の残りをひっくり返せば、あーあーと呆れたように声を漏らす女を横目に喉を潤す。ほら見ろ、酔ってねェ。酔っ払ってたら飲めねェんだ。あそこに突っ伏してる馬鹿どもみたいになるのが酔っ払いって言う。

「明日しんどくなっちゃうよ?」
「ならねェ」

 全くもう、なんて言いながらおれの横に座る女を見下ろす。なんでおれが嗜められてるみたいな雰囲気を出すんだ。お前の方が嗜められるべきだろ。

「酔ってねェ、し、勝った」
「よかったね」

 ようやく笑いながら頷くからおれも頷く。笑われた、が、まあ馬鹿にする笑みじゃなかったからとりあえず放置だ。このままじゃいつまで経っても本題に入れない。

「勝者には褒美があるもんだろ」
「ご褒美ほしいの?」

 目を丸くさせて驚く様に眉を顰めた。白々しい。

「チッ、……クソコックにはやってたろ」
「サンジくんに? ゾロが欲しがるようなご褒美サンジくんにあげたっけ……」

 舌打ちしながら吐き捨ててもしらを切り続ける姿にもう一度舌打ちをする。

「やってた。おれにもやれ。コックには二度とやるな」

 うーん、といまだに考え込むフリをしてしらを切る。嫌なのか。あいつにはねだられて仕方ないなあなんて言いながら、それでもすぐにしてたじゃねェか。なんでおれは駄目なんだよ。なんであいつは良くておれは駄目なんだ。

「ここに! ご褒美だっつって、してただろうが……」

 勇んで先陣を切った言葉尻が萎んでいった。だって、嫌なんだろ。ジョッキを持っていない左手で頬を示していた指を下ろす。無理矢理貰うもんでもねェ。わかってる。あいつは料理を作って褒美をもらって、おれは、……だから、勝ったのに。ちゃんと褒美をもらうための理由を作ったのに。
 手だけじゃなくて視線も落としてジョッキの中で揺れる酒をじっと睨みつける。勝ったのに。

「……えっ、」

 女の声が溢れてつい視線を向ける。散々おれのことを酔っ払い扱いしたくせに、お前の方こそ耳まで真っ赤で人のことなんざとても言える風貌じゃなかった。お前こそ正真正銘の酔っ払いだ。ふん、と負け惜しみだとわかっていても鼻で笑う。別にいい。おれが酒で勝つのは当たり前だ。当たり前のことを褒めてもらえるわけねェ。じゃあなんだったらお前はおれに褒美をくれるんだ。考えても何も思いつかなかった。おれには刀と、酒くらいしか取り柄がなくて、またむくれる。

「……ご、ご褒美、の、きす、欲しいの?」

 小さな声で問われても黙り込む。だってお前、くれなかったじゃねェか。おれが返事してなんか変わるのか。

「あ、……あした、」

 今の話をしてるのに急に未来の明日の話を持ち出してきた女に眉を上げる。

「明日、ご褒美欲しいって言えたら、あげる」
「……なんで今は駄目なんだ」

 唐突に餌をぶら下げられて瞬く。だが、それに飛び付くよりも先に意味がわからなくてつい口から疑問が飛び出る。だって酒飲み勝負で勝ったのは今で、別に明日に持ち越すような準備のいる褒美でもない。なんで明日に持ち越さなきゃいけないんだ。

「だめっていうか、……明日になったら気が変わるかもしれないでしょう?」
「あ? 変わんねェよ」
「……今のゾロ酔っ……ちょっとおかしいから」
「は? おかしくねェ」

 意味のわからないことばかりぐだぐだ言う女にイライラし始めて睨みつけても酔って赤くなった頬を緩めてへらへら笑うだけ。仕方ない。意味も訳もわからないことを言うのが酔っ払いだ。酔った女に無理強いするのは違う。明日になったらいいと言うんだから、酔っ払いのルールを尊重することにした。

「わかった。明日言ったら、くれんだな?」
「……うん」
「約束だぞ」
「……、約束、」

 小さな声だったがしっかり言質をとれて満足する。おれと約束して逃げられると思うなよ。