タイトルを考えるのが死ぬほど苦手
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2024/02/06 ルフィ
声帯を震わす激しい感情・無垢な瞳が瞬く・苦い恋を齧る
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冒険のことしか頭にないルフィに恋をしてしまったのが間違いで、思わず笑ってしまったのはもう遠い過去のこと。恋をしてしまったことに気付いた瞬間、同時に失恋も自覚したけど胸が苦しくなったりはしなかった。だってルフィは世界で一番自由な男だから。私のものにもなってくれないけど、誰のものにもならないのがわかっているから、やきもきすることが何もなかった。自由なルフィを見習って、私も自由に恋をする。叶うことはないけれど、私が好きでいる限り、好きの気持ちは自由で終わることはない。好きな人がいると毎日が薔薇色で楽しい。ルフィは楽しいことを見つける天才だから毎日ずっと楽しそうで、好きな人が楽しそうにしてる姿を見ると私も楽しくて毎日頬が緩みっぱなし。
なのに、最近ルフィの様子がおかしかった。うんうん考え込む姿が増えて、ぼうっとすることがよくある。みんなも気付いているようであれやこれやとルフィを笑顔にさせようと頑張っているし、構われると途端に意識が逸れて楽しそうにする。でも悩みを聞き出すことだけはみんなできなくて、今日もまたうんうんと考え込んでいた。
「ルフィ、」
「なァ」
だから今日は私がルフィの悩みを解決、とまではいかなくてもみんなと同じように少しでも気を逸らせてあげられたらと釣り道具を手に背後から話しかけようとして出鼻をくじかれる。あんなにうんうん唸ってたのに、私が背後から近付いてたのに気付いてたんだ。驚いて固まる私を振り返って今度は名前を呼んで隣へこいと言わんばかりにべちべちと船縁を叩くから、とりあえず釣り道具は置いて隣へ腰掛けた。
「あのな、……うーん、……」
いつも本能のままに生きているルフィでも悩んだりすることあるんだなあ、なんて他人事みたいに思いながらじっと見守る。
「おれたちは自由な海賊だろ?」
「うん」
「自由は楽しいよな?」
「うん」
だよなァ、と頷きながらうんうんまた唸り出したルフィに首を傾げる。
「次の島が遠くって退屈?」
「……そォ……れもある!」
暇だよなァと早速悩みを一瞬頭から消し去って目先の暇に思考を奪われた結果、つまらなそうに唇を尖らせて拗ねる姿が可愛くて笑ってしまう。
「そうじゃねェんだよ! みんなして話逸らすな!」
「…………そらしてるのはルフィだと思うけど、まあ、ごめん?」
みんなも私もルフィを笑顔にさせようと頑張ってるだけで、勝手に悩みから気がそれちゃうのはルフィが原因だと思うんだけど、まあ確かに邪魔をしているのも事実だから一応謝る。ぷんすこしながらうんうんまた唸り出したルフィを邪魔しないように今度はじっと横顔を眺めるだけにとどめた。のに、
「んぐぅ……! じっと見んな!」
「ひとりの方が悩み事はかどる?」
隣へべしべしと勧誘してきたのはルフィだけどそれなら移動しようか、と上げかけた私の腰をぎゅるんと長いゴムが阻止してくる。
「勝手にどっか行くな!」
「も〜……何がしたいの」
お腹にぎゅるんと巻き付いたゴムをぺちぺち叩いてほんの少し力を緩めてもらう。危ない危ない。締め落とされるところだった。ぷんすこ怒ったり、しょんぼり落ち込んだり、本能のままに自由気ままというよりはどこか情緒不安定なルフィがとうとう心配になって拘束されたまま顔を覗き込む。
「見ッ……んな!」
途端、普通の人体ではとてもできない顔の逸らし方をしたルフィに面白さより動揺の方が勝ってしまった。
「え、ほんとルフィどうしたの? 大丈夫? 見ちゃだめなの? 顔隠せばいい?」
様子のおかしいルフィに自由な腕を動かして目元を両手で覆い隠しながら尋ねる。真っ暗な視界でぎゅうぎゅうとお腹を締め付けられて、んぎんぎと変な唸り声を上げるおかしなルフィをチョッパーのところへどう誘導すればいいのか考えながら気配を伺う。
「……最近おれ、おかしーんだ」
「うん」
目を隠してじっとしていればルフィも落ち着いたのか逸らしていた顔が元の位置に戻ったんであろうばちんという音と、落ち込んだ声がゆっくり聞こえてとりあえず頷く。
「海賊は、自由だろ?」
「うん」
「自由を奪って支配する奴は、ぶっ飛ばしてェ」
「うん、知ってるよ」
幾度となく誰かの自由を奪う支配者をぶっ飛ばす姿をこの目で見てきた。暗い視界のおかげでよく思い出せて口元が緩む。ルフィは世界一自由で、それから、みんなにも自由はどういうことか教えてくれる。
「なのに、……」
いつも溌剌としている声が落ち込んでいて、頭を撫でてあげたくなったけどルフィは今、顔を見られたくなくて、珍しく思考が逸れずに悩みを吐き出せている。慰めも大事だけど、このまま黙って聴くことがきっといま一番の正解だからとぐっと我慢して耳をすませた。
「……おれ、お前の自由を……邪魔したくなる」
「……、?」
ルフィの言葉の意味がわからなくて首を傾げる。ルフィの言葉はもちろん聞き取れた。聞き取れた、けど、意味がわからなかった。だってルフィがそんなことするわけないのに。
「お前がおれ以外と楽しそうに話したりしてんの見るの、いやだ」
肩にとん、と何かがぶつかって、ルフィの声が近くなる。肩にもたれかかられたんだ、とわかったのはいいものの言われた言葉に固まって身動ぎできない。
「お前が傷付けられてるわけじゃなくて、笑ってんのに、……笑ってんだからイイことのはずなのに、なんか、ムカつく。でもそんなん、サイテーだ。お前の自由を奪いたいわけじゃねェのに」
ぐりぐりとおでこを擦り付けられているのか体が揺れて思考も揺れる。だってそんなの、……そんなの、まるで、
「お前がおれの目の届かねェとこにいるの、すげェやだ。ずっとおれの目の届くところにいてほしい。でもそんなの、自由じゃねェ」
サイアクなんだ、おれは、とぎゅうぎゅう抱きしめられながら落とされた言葉に頭が爆発しそうになる。
「聞いてるか?」
「きいてる……」
「……やっぱ、怒ってんのか。そうだよな、……嫌だよな、自由なのが海賊なのに、おれ、お前の邪魔しようとしてるし、……くそォ……、」
口を開くだけで精一杯の私の返事を聞いて、ううう、と呻いて落ち込むルフィとは正反対にばくばくと心臓がうるさく動いて気持ちが昂揚するのを抑えることなんてできない。見るな、と言われたからルフィがどんな顔であんなことを紡いだのか見れなかったけれど、それのおかげで茹でたタコもびっくりなほど真っ赤な顔をルフィに見られなくて済んだ。
今尚紡がれるルフィの言葉の羅列は、ルフィがわかっていなくても、世間一般的にそれは、きっと、愛の告白、と言っても差し支えない、はず。心臓がきゅうっと痛む。
「あとで気が済むまでおれのこと怒ってくれ。もうこの際だから全部言っちまう。あのな、他のやつの前で笑ってるのもムカつくんだけど、お前がおれの前で笑うのも、ちょっと困る」
「こまる……?」
「なんかうまく言えねェんだけど、困る。お前、なんか時々、変な目でおれのこと見るだろ? 嫌なわけじゃねェんだ、当たり前だけど、でもなんか、むずむずする」
変な目、ってなんだろう。ルフィのこと、好きだなあってしみじみ思う時があるけど、もしかしてそれのことかな。自分のことすらわからないくせに、そういう機微を感じ取ってしまうルフィの鋭さに本当に体が燃え上がってしまいそうなほど体温が高くなる。
「……お前の邪魔、したくねェ、のに、……なんか変なんだ」
ゴメンナサイ、としょんぼり謝るルフィに、邪魔されたい、って言葉にしたらどうなるんだろう。
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