タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2024/02/25 ロー
髪に鼻先を埋めた・叩きつけ。る、その言葉・勇気を出す切欠


「キャプテン泳げないんだからもうちょっとだけ気をつけてほしいなあ」

 水を吸って重たいキャプテンを背中に背負いながら言う文句にふん、と鼻を鳴らされて苦く笑う。私たちクルーはキャプテンが一番大事で、なのにキャプテンは私たちのことを自分より大事にしてくれるからしょっちゅう大喧嘩だ。メインのお説教はペンギンやシャチがしてくれるし、一番効くのはベポからの涙だから私はほんの少し苦言を呈すだけだけど、本当に全然反省してくれない。今日はたぶんみんなからフルコースで怒られると思う。だって、空を飛んで応戦しながら敵の海賊を能力で薄切りにして完膚なきまでに勝利したのはいいけど、能力で船に戻ってくるのが面倒だったのかちょうどその下を泳いでいた私と目があった瞬間力を抜いてそのまま海に落っこちてきたから。本当に体力が尽きていてギリギリの戦いをしていたなら仕方ないけど、さっきの敵は別にそこまで手強くなかったし私が真下にいなかったらきっと能力で船に戻ったはず。キャプテンはわざと泳げない海にほんの少し沈んだ。どんな場所にいたって私たちはキャプテンを拾い上げるし、信頼してくれてるのはもちろん嬉しいけど、でも、キャプテンがほんの少しでも海に攫われるのを見るのは心臓に悪い。

「海水でぐったりする方がしんどいと思うんだけどなあ……」
「悪魔の実を食べてないお前に何がわかるんだ。おれは疲れてたんだ。たまには楽をしたっていいだろ。キャプテンを敬え」
「敬ってますよ」

 でもやっぱり体の自由が効かなくなる海水に浸ってぐったりするより能力で体力削られるだけの方が楽だと思う。服だってびちゃびちゃになるし、刀の手入れだってしなくちゃいけなくなるし、後のことを考えるとやっぱり能力使った方がよっぽど楽なのに。食べてないからわからないだろ、って言われちゃったら頷くしかできないのが歯痒い。今度麦わらの一味に会った時に海に落ちて拾ってもらうのと能力でなんとか船に戻るのとどっちが楽?って聞いてみようかな。
 なんて考えてたら私の返事が雑に聞こえたのか海水でぐったりしているくせにごつんと頭突きをしてきたから痛みに呻く。ひどい。命の恩人になんてこと。置いてきますよ、なんて、嘘でも言えなくてため息をつく。

「疲れてたんだ」

 もう一度言われた言葉は確かにぐったりとしていたけれど、空中にいた時の方が明らかに元気そうだったからやっぱり頷けない。

「キャプテンがそういうことにしたいならいいですよ」

 よくわからないけど。まあたまにはキャプテンだって能力を使いたくない時だってあるんだろう。潜水してる最中暇だからって意味もなくペンギンたちの中身をシャッフルする遊びも、自室で読書中にコーヒーを飲みたくなったからってキッチンから人が淹れたばかりのコーヒーをROOMで奪い取ったりする悪戯も体力を削らないけど、ほんの十メートル自分を飛ばすのは海に落ちる方が楽なほど体力が削られるって言うキャプテンのことを信じてあげようと思った。

「これからはコーヒーちゃんと取りに来てくださいね、疲れるでしょう?」

 さすがに嫌味だってわかったのか、ぐ、と呻いたキャプテンに笑う。みんなは既に黄色い潜水艦の甲板に戻っていて、わざと海に落ちたキャプテンを叱ろうと目を釣り上げている人や泣いているクマが見える。早いところあそこへキャプテンを放り投げて反省してもらおうとしたのに。
 ぎゅ、と海水でぐったりしながらもほんの少し力強く抱きしめられて肩に額を擦り付けられて思わず泳ぎが止まる。どうしたんですか、と私が口を開く前にキャプテンが息を吸ったのがわかって耳を澄ます。

「……嘘ついた、悪い」

 素直に謝ったキャプテンに頬が緩む。やっぱり海はぐったりするし、これくらいの範囲ならROOMもきっと体力をそこまで削いでこない。だけどじゃあ、なんでそんな嘘をついてまで、海の中に沈むことを選んだんだろう。

「…………、おれだってたまにはお前らと泳ぎたかった」
「…………なんで急にそんな可愛いこと言うんですか?」

 ぽそりと紡がれた声に、心臓を鷲掴みにされて泳ぎ方を忘れてしまいそうになってしまった。