タイトルを考えるのが死ぬほど苦手
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2024/03/07 ロー
声は途切れて・闇に紛れて・唐突すぎて心が置き去りになる
※現パロ
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「今日仕事終わったら家行っていいか」
「あ、今日は駄目なの、ごめんね、合鍵返してくれる?」
ごめんね、までは、仕方ないな、お前にだって都合はあるもんな、なんて余裕ぶれていたのに、続いた言葉に頭が真っ白になった。合鍵返してくれる? 合鍵、返してくれる、? 何を言ってるんだこの女は。理解する前に体が勝手に動いて、ぐ、とキーケースが入ってるポケットに手をやって上からぎゅうっと握り込む。絶対に嫌だ。そこに鍵を乗せろと言わんばかりに手のひらを差し出されて逃げるように一歩後ずさる。絶対に嫌だ。渡さない。
余裕ぶれていた言葉まで疑ってしまう。今日は駄目なの。おれの他に誰か家に来る予定でもあるのか。だから駄目なのか。だから、謝ったのか。罷り間違って乗り込まれないように合鍵も回収して、それで、おれといちゃついた部屋で、誰か他のやつとも。考えたくもなくて頭を振ってその想像を追い払う。
「ろぉ?」
猫を可愛がるようにおれの名前を柔らかく呼ぶくせに、おれのことを捨てるのか。拾った責任は最後まで持てよ。なあ。嫌だ。捨てられたくない。二人目でも何人目でもいいから、おれのことを捨てないでくれ。
「どうしたの?」
「……ちゃんと、お前が来るなって言う日は行かねェから、だから、……返したく、ない」
ぐ、と服が破れてしまいそうなほど爪を立てて押さえ込んで、布越しの肌が傷付いた感覚がしても力を緩めることはできなかった。都合の良い男になんかなりたくない。でも、それ以上に捨てられたくなかった。なんで急に。おれの何が嫌だったんだ。急に暇になったりしたら会いにきてよ、だなんて照れ隠しに笑いながら合鍵を渡された日のことを思い出す。おれの仕事は急な呼び出しも多くデートのスケジュールもうまく組めたことがないからと渡された合鍵だった。急に暇になることより、急に忙しくなってお前とのデートを台無しにすることの方が多いのに。その時点で愛想を尽かされても仕方がないのに、仕事をしてるローのこと大好き、と慰めてくれて、疲れてるのに会いに来てくれて嬉しいと喜んでくれる姿におれの方こそ喜んで。なのに。合鍵を渡されたのも急なら、それが奪われるのも急なのは当然のことなんだろうか。とうとう愛想を尽かされたんだろうか。わかってる。お前のことを何より一番にできないおれが悪い。こんなにも追い縋ってる今この瞬間にも、呼び出しがかかったらおれはすぐに駆け出してしまう。だから、おれだって一番にされなくたって文句言わない。何番目でもいい。
「頼む、……捨てないでくれ」
「ロー、なんの話してるの?」
「鍵、渡したくない、……別れたくない」
頼む、と何度も縋るおれに呆れたのか静まり返った空間に目を伏せる。頼むから、うん、と頷いてほしい。仕方ないなあ、と甘やかす声が耳を滑ってほしい。でも、おれを甘やかしてくれていたのはおれのことを好きだったからで、合鍵を取り上げようとする今、おれのことを甘やかすお前はどこかに消えていなくなってしまったんだろうか。どうすればいいんだ。
「え、……あ、……ごめんなさい」
とうとう謝罪まで他人行儀にまでなってしまったことに胸を針で滅多刺しにされる。目をぎゅっと閉じて現実から逃げて、耳も塞ぎたくなったが鍵を渡したくなくて手をそこから離せないから塞げない。
「ねえ、ロー、違うの、ごめん、鍵の調子が悪くて今日交換するの、だから、一旦返却して、新しい合鍵渡すまで待っててほしくて、それで、ごめんなさい、勘違いさせる言い方しちゃった、泣かないで」
「……泣いてねェ」
反射的に言い返したが、目の前の恋人が紡ぐ言葉が脳にうまく運べなくて混乱する。別れたくなさすぎて、都合の良い幻聴を生んでしまったんだろうか。唐突に頬に何かが触れて閉じていた視界を開いた。固く閉じていたせいで目の前が一瞬ちらついたが、視界いっぱいに広がるのはおれの好きな女、で。おれを心配そうに見上げて優しく頬を撫でてくれていた。この目は、おれを嫌ってなんかない。なら、さっきの言葉は都合の良い幻聴なんかじゃなくて、本当に放たれた言葉で手の力がようやく少し緩む。
「……おれのこと、嫌いになったりしてないか」
「そんなわけない。変に傷付けちゃってごめんなさい。私の方こそ嫌わないで」
「嫌うわけねェ。……おれが、お前の一番、か?」
「一番も何番もないよ、ローだけ」
おれ自身お前を一番にできていないのに、浅ましくも言葉を求めて、理想以上の言葉を貰えて胸が詰まった。
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