タイトルを考えるのが死ぬほど苦手
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2024/03/17 スモーカー
堕ち逝く惰性・過去を塗り替える・君を背に乗せて太陽を目指そうか
※なんでも許せる人向け
※友情出演サンジくん
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私のことはいいから先にこどもたちを避難させて、と力強い目でおれの背中を押した女を探して空を飛ぶ。背中を押されるまでもなく両手にガキどもを何人も抱えて地を蹴ったおれの行動は、大人として、海軍として正しかったと胸を張って言える。それでもきっと、恋人としては不正解で、だから、フラれても仕方がないのは頭では理解していた。きちんと理解していた、はずなのに。実際にそれを目の当たりにした瞬間、心臓が止まった気がした。微かに聞こえた声に振り向かなければよかったと後悔した。置いていった恋人が、見たことのある顔に抱きかかえられ空を飛んでいた。空を飛んでいるのに安全を確信しているのか楽しげに笑う声に唇を噛み締める。おれはお前を持って空を飛んだことはなかった。おれが抱えて飛ぶ、そんな状況に陥らせたくはなかった。いざそんな状況に陥ったらお前を抱えて飛ぶどころかお前を置いて他を助けて、誰かがお前を救う姿を呆然と見ていた。
安全な陸地に両足を無事に下ろした女に大仰しい態度で跪き手の甲に口付けをした気障な男の顔に意識を取り戻す。手配書が似顔絵のせいで気付くのが遅れたが、あれは、麦わらのところの男だ。ようやく体が動いたのも、恋人として女を取り戻すためじゃなく、海軍として海賊を捕まえるためだった。とことんフラれても仕方ない自分自身に鼻で笑いながら十手を握りしめる手に力を込める。おれの存在に気付いたのか、やべ、と顔を顰めながらも器用に女にだけ愛想を振り撒きながら素早く空へ飛んだ海賊に、あ、と名残惜しそうに手を伸ばす姿が視界に入って一瞬速度が落ちてしまった。風を切るように海で待つ船に乗って逃げおおせた海賊に舌打ちをして煙を萎ませながら女の元へ降り立って怪我をしていないか確認する。名残惜しそうに船を見続けるその目がおれの目と絡んで、唇を噛み締めたくなるのを堪えながらどうにか口を開く。お前より先に口を開かなければ。別れを切り出すであろうお前の言葉を遮るために次から次へと言葉を投げつけなければいけないのに、普段から口が上手い方ではないおれには、大丈夫か、と安否を確認する言葉しか思いつかなくて歯噛みした。
「ごめんね」
謝るべきはおれの方のはずなのに女が謝るのは、今からフラれるからだろうか。ぐ、と喉を締め付けて地面を睨みつけるように俯く。
「スモーカーくんが戻ってきてくれるまで捕まえてたかったんだけど……逃げられちゃった」
紡がれた言葉に瞬く。地面から女に恐る恐る視線を戻せば照れくさそうに笑っていて混乱した。フラれるんじゃなかったのか。だって、お前のこと、置いて行った。両手いっぱいにガキどもを抱えて恋人であるお前に背中を向けた。だから、フラれるはずだ。
「……スモーカーくん? もしかして怪我でもした? 大丈夫?」
ぺたぺたとおれの体を触って心配する姿は微塵も別れ話の空気を感じさせない。
「……お前、おれに呆れてないのか」
「……? またデリカシーないことでも言ってたしぎちゃん怒らせたりしたの?」
「……、そうじゃねェ」
「じゃあまたその仏頂面でさっきの子たち泣かせちゃった?」
ぎゅっとおれの首に腕を回して飛び掛かるようにして抱きついてくるから、反射的に慌てて尻を腕に乗せて抱き抱える。落とされやしないと信じきって当たり前のように抱き上げられた顔を見上げればくしゃりと頭を撫でられて固まる。
「怖い顔なだけで世界で一番優しくてかっこいい正義の味方なのにねえ」
可哀想に、と慰めるように何度も頭を撫でてくるその手はおれを嫌いになんてなっていないのがよくわかって、じわりと絶望がほどけた。
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