タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2024/03/31 ロー
か細い声が耳に残る・吊り上った唇に目を奪われる・全部棄てたら君をくれる?


 最初は自惚れていた。ニコ屋と話す度に話の内容が分からずとも必ず輪に入ってきたり、ナミ屋に金をふんだくられている時もさりげなくナミ屋を遠ざけておれの財布を守ってくれたり、おれから女を遠ざけようとする姿はまるで嫉妬に駆られた女のようだったから。ふたりで話す時は穏やかで、なのに第三者が入ればほんの少し機嫌が悪くなる。好いた女にそんな態度を取られて良い気になっていた。馬鹿な勘違いだった。第三者はニコ屋やナミ屋ではなく、おれだった。
 あの女はおれを、威嚇していた。
 おれも自惚れた勘違いをしていたが、好いた女にとんでもない勘違いをされている現状に慌てて誤解を解こうとすればするほど泥沼に陥る。もとより言葉選びがうまいとは思っていない。ただこうまで伝わらないとは思ってもいなかった。ついてきてくれるクルーたちはおれのことをおれ以上に理解しておれの心をうまく汲み取ってくれていたんだなとこんなことでしみじみ感謝する羽目になるとは思わなかった。
 ニコ屋やナミ屋には興味がないと言えば言うほど、隠されていた敵意がどんどん表に出て、今では二人きりの時も若干眉根を寄せられている。それをクルーに相談すれば、そりゃ仲間貶されていい気分になる人いないでしょ、なんて至極当然の呆れを返されて固まった。違う。別にニコ屋やナミ屋を貶そうと思ったわけじゃない。ただおれの興味はあいつらには注がれないんだと、そう言いたかっただけで。後悔しても後の祭りで項垂れる。馬鹿みたいな勘違いはもう二度としないから、せめてふたりで穏やかに話せていたあの頃に戻りたい。そう思いながら合流した瞬間、女の元へ急ぐ。

「…………威嚇してる私が言うのもなんだけどさ、素っ気なくするのはよくないと思うよ」

 目の前に立って見下ろした瞬間呆れた言葉をぶつけられて、船の中で考えてきたいろいろな言葉が吹っ飛んでしまう。素っ気ないことをした自覚はなかった。クルーの奴らには自覚するより先におれの恋心に気付かれていたくらいわかりやすかったらしいのに、と考えて、これもキャプテンとして甘やかされていただけだったのかと反省する。最初はただ自惚れていただけで、その次は勘違いを解くのに必死で、素っ気ないと言われれば確かにそうでしかなくて眉間に皺が寄った。

「……悪い、素っ気なくしたつもりはない。もともと表情にあまり出ない人間で、これでも努力してるつもり、」
「? 私に謝られても」

 久しぶりの好きな女を目の前にして更に硬くなった声色と表情筋に舌打ちをしそうになったのに、不思議そうに首を傾げられておれも言葉が止まる。いや、だってお前が今、素っ気ないのは駄目だって言ったから、そうだな、って思って頷いたのに、なんで言った側が突き放すんだ。

「表情に出にくいのはわかったけど、ナミちゃんやロビンちゃんにはちゃんと愛情表現できる男の人じゃないと認めないから」
「認められても困る」

 会わない間に更に勘違いを暴走させていたままだった女に何も考えずに反射的に言葉が飛び出た。認められても困る。考えてから同じことをもう一度改めて思う。好きな女に他の女へ好意があることを認められても困る。本当に困る。あまりの言葉に固かった表情が一瞬で解け落ちて虚無感にさいなまれた。本当に困る。やめてくれ。

「?! 勝手に奪うから私が認める必要なんてないってこと?! 今のは誘拐の宣戦布告?!」
「は?! ちがう!! なんでそうなるんだ馬鹿なのかお前は!!」

 とうとう好きな女に罵倒してしまって頭を抱える。おれがこの歳にして初めて浮ついた恋をして言葉足らずなせいもあるが、こいつがこの件に関してだけ途端に大馬鹿になってしまうのも悪い。お前、こんなに察しの悪い女じゃないだろう。麦わら屋たちの中では話の通じる部類の人間のくせに、どうしてニコ屋やナミ屋が関わると馬鹿になるんだ。

「ナミちゃんやロビンちゃんは絶対にあげないから!!」
「いらねェ!!」
「い、いらない?! うちのどこに出しても恥ずかしくないかわいい子たちに文句付けるって言うの?!」

 言葉は確かに悪かったかもしれないがお望み通り拒否したのにそれはそれで怒り狂う姿にもうどうすればいいのかわからなくなる。