タイトルを考えるのが死ぬほど苦手
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2024/04/11 ルフィ
これだけじゃ足りないのです・無垢な瞳が瞬く・何よりも君が欲しい
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「おれはケッコンしたくねェんだ」
「知ってるよ」
「お前にもケッコンしてほしくねェ」
「……それは初めて聞いた」
「初めて言ったからな」
ルフィの主張はみんなが知るところで雑誌を読みながら適当に相槌を打っていたのに、続いた言葉は知らない主張で思わずページを捲る手を止めて顔を上げた。暇でつまらなそうに机にべったり頬をくっつけていたルフィが、私が顔を上げたことに相手をしてもらえると思ったのかきらきら輝く瞳で同じく顔を上げたからばっちり視線が絡まって瞬く。暇で暇でたまらないとだらんとしていた空気が、わくわく、うきうき、と浮かれるのが目に見えて伝わって首を傾げる。ああ、なるほど。あまりにも私がルフィを構わないから、構ってほしくて突飛なことを言い出したのか。納得して嘘をついてまで構われようとした寂しがりやな五歳児の船長のことを放置していたのをほんの少し反省して口を開く。チャンバラごっこに付き合って、なんて言われてしまえばまた耳を塞いで雑誌に目を戻すけど、話に付き合うくらいなら私にだってできる。
「ルフィは結婚の何が嫌なの?」
「自由じゃなくなること!」
元気いっぱい答える姿は本当に五歳児のようで思わず笑う。私が楽しそうにしているからかルフィもさっきまでの退屈でつまらなそうなぶすくれた表情じゃなくて嬉しそうに頬が綻んでいる。とても億を超える懸賞金がつけられている海賊だとは思えない。雑誌を閉じた私に本格的に構ってもらえると思って嬉しさが頂点に達したのか私たちを挟んでいた机をぴょんと飛び越えて隣に移動したのがかわいい。キャプテンに思う感情ではないけど。
「なんで自由じゃなくなると思うの?」
「……うーん? そう言われるとなんでだろ」
うんうん腕を組みながら考えるルフィに笑う。確かに結婚は責任が伴うことだから独り身の時に比べれば自由に物事を決められなくはなるけれど、そんなの今一緒に仲間と過ごす時間だって意見の相違があっても擦り合わせて一緒に生活することができてるんだから結婚もできないことはないと思う。
「ルフィはサンジくんみたいに世界中のレディを好きになる予定でもあるの?」
「? 好きな奴は普通ひとりだろ? サンジはちょっと、……例外だけど、まあサンジはああいうやつだから」
移り気な意味での自由ならそれは確かに結婚には向いてないと思うけれどルフィの感性はどうやら海賊にしては一途な答えが返ってきて思わず瞬く。好きとか嫌いとか、仲間としての意味じゃなく恋愛としての意味での説明をしないといけないところから始まると思っていたから、一応その区別はついたことに驚いてしまった。サンジくんの意味合いとはまた違いながらもそれでもお前らのことみんな好きだぞ、とか五歳児なら言うと思ったのに。恋愛の好きと友達の好きは違うってこと、理解してたんだ。これからは認識を八歳児くらいに改めようかな。
「じゃあ別に結婚しても自由じゃなくなるなんてことないと思うけど」
「お前も?」
「ん?」
「ケッコンしてもお前は自由か?」
私が雑誌を閉じてルフィを構おうとしたきっかけの言葉が形を変えて飛んできて首を傾げる。構ってほしいがための突飛な言葉だと思い込んでたけど違ったのかもしれない。ルフィは自由を愛していて、仲間のことも愛してくれていて、だから自由じゃなくなると思っていた結婚は仲間にもしないでほしいと本当に思っていただけなのかも。キャプテンからの愛に嬉しくなって頬が緩む。
「そうだね、船を降りろって言われないなら結婚しても自由だと思うよ」
結婚してもきっと私の一番の優先順位はここだから、何も変わらないと思う。私ばかりが自由で相手にとっては酷いから結婚できないと思うけど。だから頷いたのに、ルフィは私のそんな想いも知らずに腕を組んでうんうんと唸り込んでいる。八歳児にはちょっと難しかったかな。
「……なんでケッコンしたら船降りろって言われるんだ?」
「おれと一緒に島に残ってくれ、とか、おれの船に来い、とかそういうプロポーズされたら嫌だもん」
「誰にそんなの言われたんだ」
じっ、と、丸い目が私を探るように見つめてきて緩んでいた頬が引き攣ってたじろぐ。知らないところでクルーが奪われるところだったと誤解してしまったんだろうかと焦って言葉を続ける。
「え、……いや、誰っていうか、……そうじゃなくて、そういうこと言われるなら私もそれは自由じゃないし結婚したくないなって、話……」
「船から離れるケッコンはちゃんとオコトワリできんのか?」
「う、うん、この船に乗ったままでいいなら考えるけど」
「このままのケッコンは自由で良いもんなのか?」
それはそれで私にだけ都合の良い結婚だけど、まあ理想を語るだけならそうだなあ、と頷く。この船のみんなでルフィが海賊王になる姿を見守ることを捨てないでいいなら、それはまあ、自由で良いことのはず、だよね。ルフィの黒くて丸い目玉が私を貫くからなんだか座りが悪くなる。
「そっかそっか、なるほどな」
途端に何かを納得したように頷いてニカッと破顔したルフィに瞬く。八歳児が結婚について知識をアップデートしたらしいことに私も微笑ましくなってまた頬を緩めようとした、のに。
「なら、ケッコンしよう!」
「…………ん?!」
「ん? ケッコンしよう!」
「聞こえなかったわけじゃないよ!」
「でもケッコンするってどうすんだ? ユビワとフリフリの白い服探してくればいいのか?」
またルフィの突飛な発言に振り回されて混乱する。やっぱり好きの種類を理解なんかしてなかった! 八歳児じゃなくて五歳児! なんなら三歳児?! 勝手に話を進めて、指輪やドレスを探しに行こうとしたルフィの腕を掴んでうにょんと伸びてしまった。扉に手をかけようとして腕がついてこなかったことに気付いてなんだなんだと戻ってきてくれたからよかったけど、ここで腕を掴まなければどこかのお店が三歳児の被害を受けるところだった危ない。
「なんだよ」
「なんだよじゃないよ。あのね、結婚ってそういうんじゃないよ」
「なにが?」
「だから、ええと、そりゃ私もルフィもお互いのこと大好きだけど、そういうんじゃないんだよ」
「そーゆーのってなんだよ」
だから、友情と恋情はちょっと違うんだよ。三歳児になんて説明すればいいのかわからなくて口籠もる。大好きなお母さんと結婚したいと言ってる可愛らしい子どもと一緒でそれくらいの熱量で好きだと言ってくれるのは勿論嬉しい。でも本当の三歳児とは違ってルフィは十九歳で行動力だけは有り余るほどある。三歳児なら行動できないうちに月日が経って好きには種類がいくつかあるって理解できるけど、ルフィは三歳児の頭脳で十九歳のすぐさま行動にうつせる力があるから好きに種類があることに気付くまで見守れない。今すぐにでも誤解を解かないといけなかった。だけど、なんて誤解を解けば良いんだろう。
「ええとその、だから、結婚は、その、……キスとかしたい人とするんだよ、……さすがにキスはわかるよね……?」
「む、バカにしてるだろ!」
馬鹿にしてるわけじゃなくて三歳児だと思ってるんだよ、なんて訂正したら機嫌を損ねてしまいそうだから黙ってルフィを見る。よかった、キスは知ってそう。
「ケッコンって、自由じゃなくなるからしたくねェと思ってたし、させたくねェとも思ってたけど、別に変わんねェならしてェ!」
「……変わらないならしなくてもいいじゃん。私ずっとこの船にいたいよ?」
好きの最上級が結婚だと思い込んでしまってるルフィを宥めようと言葉を紡ぐ。ルフィの友情と恋の違いのわからない子どもっぽさに呆れたいのは私なのに、ばっかだなァ、と心底呆れた声と表情を向けられて思わずムッとする。
「自由なのは変わんねェけど、キスしてェからケッコンすんじゃねェか!」
「え」
「ケッコンしてねェのにキスしちゃダメだろ? おれは自由じゃなくなるの嫌だったし、お前が他の誰かとキスするのは嫌だったからケッコンしてほしくなかったけど、別に自由で変わんねェならケッコンしてお前とキスしてェ」
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