タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2024/05/06 ロー
熱に埋もれる・風に舞い踊る髪・恋をしましょう
※妹視点
※現パロ


 どうしようどうしようどうしよう。お兄さま、どうしてぼうっとしてるの? お兄さまが口を開かないと私、何もできない。目の前で私をお兄さまの恋人だと勘違いしてにこにこしてる、お兄さまの想い人に、言い訳も何もできない。だって私が口を挟む隙がないんだもの。かわいいね、仲良しね、そう微笑みながら紡ぐ女の人の言葉がせめて少しでも私を妬ましく思うような負の感情が乗っかっていれば、お兄さまにも少しはチャンスが見えて私がこんなにも焦る必要はなかったのに。お兄さま、勘違いされてるんだよ。好きな人に、お兄さまと私が付き合ってるって。私がお兄さまの妹だってことは、お兄さまにとっては当たり前で語る必要のないことなのかもしれないけど、私たち、一度だって初対面の人に関係性を当てられたことないじゃない。私とお兄さまの外見の共通点はあまりなくて、一目見ただけじゃ兄妹だってわからない。お兄さまは懐に入れた人とそうじゃない人で態度があからさまに違っていて、そんなお兄さまが柔らかく笑う姿は珍しくて、私がお兄さまの恋人だっていう勘違いを余計に助長させてしまう。
 お兄さまは好きな人に妹の私を褒められて嬉しいのかぼんやりしていて相槌しか打てていない。もともと言葉数が多いわけじゃないけど、それにしたって恋にふわつきすぎていて中身のない相槌ばかりしてる。それなのに妹のこととなればいつもより少し饒舌に私のことを褒めちぎるから、勘違いに拍車がかかる。どうしよう。ねえお兄さま、喋るのやめて。私のこと褒めるのやめて。私にも喋らせて。たった一言、妹のラミですって自己紹介するだけでいいの。ねえ、お兄さま。

「本当に可愛いね」
「ああ、ラミは世界一可愛い」
「馬鹿!!」
「ばっ、」

 せっかく口を挟めたのに出てきた言葉はお兄さまに一度だって使ったことのない単語を叫んでしまった。お兄さまが目も口も大きく見開いて私を見下ろしていたけど謝罪する気持ちにはなれない。だってなんで、よりにもよって好きな女の人の前でそんな褒め方するの!

「なんでそんな、誤解されるようなこと言うの!」
「ご、ごかい……? ラミが可愛いのは事実で、」
「好きな人いるくせに私に世界一可愛いなんて言っちゃダメでしょ!」
「エッ」

 お兄さまから聞いたことのない音が零れ落ちて、アッ、と私も口を塞ぐ。なんだか今度は別の誤解を招きかねない叫び方をしてしまった気がする。恋人だと勘違いされてるのに、好きな人がいるくせに、なんて私が言ったら、お兄さまが浮気してる最低な男の人みたいになっちゃってないかな。目玉が落ちそうなほど目を見開いてるお兄さまもちょっと心配だけど、まつげを揺らしながら不思議そうに首を傾げるお兄さまの好きな人の勘違いを解くことの方が大事で頭を整理する間もなく慌てて口を開く。

「あ、あの、あの、違うんです、私、お兄さまの妹で、いつもよく勘違いされるんですけど、恋人なんかじゃなくて、その、……世界一可愛いとか、は、妹に使っちゃダメ、だから怒っちゃっただけで、お兄さまは一途だし、浮気とか絶対しないし、……そ、そういうことじゃなくて、ええと、とにかく私はお兄さまの妹で、その、世界一可愛くはないです」

 お兄さまの世界一可愛いは、好きな人にとっておくべきなのに。馬鹿なお兄さま! しどろもどろになったせいか暫く首を傾げたまままつげを瞬かせていて、お兄さまの好きな人が理解してくれるまでの間心臓が変な音を立てる。どうしよう、変なことも言っちゃった気がする。お兄さまの妹です、だけでよかった。

「……よく勘違いされるの?」

 誤解を解きたかったのに、うまく言葉にできなかったのが悔しくて俯きそうになった瞬間、お兄さまの好きな人が私の目に視線を合わせてくれたからそのまま固まる。

「こんなによく似てるのに?」
「え?」

 じっと私を見つめてから、お兄さまをじっと見上げて、また私に視線が戻ってくる。その間も何を言われたのかよくわからなくて固まったまま頭をぐるぐる回転させる。こんなによく似てるのに? そう、言ってくれた? そんなこと、言われたことない。私たちのことをよく知るコラさんがたまにやっぱり兄妹だから似てるなァ、なんてしみじみ言うくらい。初対面の人にそんなこと言われたことがなくて戸惑う。戸惑うけど、でも、じゃあ、最初から、誤解なんてされてなかった?

「見た目が似てるわけじゃないけど、雰囲気がすごく似てる」

 うまく言えないけど、と困ったように笑いながらも、でも似てるよ、と重ねて紡いでくれた女の人に、ぎゅっと胸が締め付けられる。嬉しい。お兄さまと似てる、って言ってもらえて。お兄さまの妹だってすぐにわかってくれて。お兄さまが好きになる理由がわかって、勘違いされてなくてよかったね、とお兄さまを見上げたら固まったままで困惑する。あ、そうだった、馬鹿、なんてお兄さまに言ったことないこと言っちゃったんだった。謝らなきゃ、と口を開こうとして、気付いた。

「それよりローって好きな人いたんだね?」

 揶揄うように笑うお兄さまの好きな人に、兄妹揃って固まることしかできなかった。どうしよう。お兄さま、ごめんなさい。