タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2022/03/26


 怪我は出来損ないの証のひとつだった。他の兄弟たちは怪我をしない。ぼろぼろの傷だらけのおれを見て笑い罵り、そして見放され、怪我をすることもなくなったけど閉じ込められた。まあまたすぐに出来損ないだとオモチャにされて傷だらけになったけど。
 まあそんな環境だったから怪我は出来損ないがするもので、だから隠すべきものだと思い込んでいた。オービット号じゃ大勢の人間がいて忙しかったから色々と誤魔化しきれていたのに、ジジイとふたり再出発となれば誤魔化すことなんてできない。すぐに包丁での傷やら火傷やらはジジイの目に触れて、触れたはずなのに目を眇めるだけで特に何も言われなかった。馬鹿でガキだったおれはそれが、その視線が、また見放された視線だと思い込んで反発して、すぐにジジイに追いついて、追い越して綺麗な手でメシを作ってやる、なんて叫んで、そして今度こそジジイに呆れたため息をつかれた。
 ジジイに無言で手を振り上げられて固く目を瞑って衝撃に備えたのに、いつまで経っても痛みは襲って来ずに恐る恐る開いた視界には歳を取って重ねた皺の他に傷やら火傷やらがたくさんついたジジイの大きな手のひらが映って目を丸くした。技術を目で見て盗もうにも早すぎて見えない手際の良いジジイの手が、出来損ないのおれの手なんかよりよっぽど傷だらけだった。それを隠すことなくおれに突きつけ、そしてまた無言のまま料理に戻ったジジイに何も言えなくて、何も聞けなくて、だけど料理の練習をする手の傷だけはいくらついても料理人にとって出来損ないじゃないんじゃないか、そう思えるようになった。