タイトルを考えるのが死ぬほど苦手
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2022/03/27
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なんの能力だか知らないが、レディの細い指とおれの指が真っ赤な糸で繋がれる。ぴん、と張った糸はよくある運命の赤い糸のように見えて、敵と相対している状況なのに思わず頬が緩んだ。おれと、レディ。本当に赤い糸で繋がってればいいのに。こうして目に見える運命だったらきっとレディだっておれの言葉を信じてくれる。おれの言葉を軽いナンパと同じように扱わず、うっとりと頬を染めて信じてくれる。
目の前に敵がいたのにそんな風にふわふわしていたから、だから天罰がくだったんだろうか。
「今すぐこれをほどいて!!」
初めて聞くレディの激昂。敵と遭遇すればいつも邪魔になるだろうからと(レディがどこにいようが邪魔だなんてそんなこと思わないけど)一歩下がっておれの後ろへ隠れるレディが、一歩どころか怒りのままに二歩三歩敵へ近付き力強く凛と響く言葉をまっすぐに投げつけている。
ああ、運命の赤い糸、だなんて浮かれていたのはおれだけ。
「……ごめん、すぐやっつけるから、好きでもねェ男とこんなのつけるの嫌なのはわかるけどもうちっとだけ我慢してくれるかい?」
もう一度ごめんね、と呟こうとしたおれの言葉はレディの背中に届かない。届かなくてよかった。不謹慎なことを考えていた自業自得だとはいえ、レディがこうまで激昂してほどいて欲しがっている事実に胸がえぐられて声が震えて掠れていた。音にすらなっていなかったかもしれない。みっともなく涙を流して困らせるのは本意ではないから、グッと堪えた。レディの激昂っぷりに敵もどこか狼狽えているからどうにかなっているけど、今にも詰め寄りそうなレディの前に立ち塞がって守らなきゃいけないのに、絶望の深さにそれすらできなくて情けない。ぐ、と唇を噛んで傷心を打ち消して足を奮い立たせようと前を向く。レディの美しい凜とした佇まいをこれ以上敵の目に晒して危険な目に合わせたくない。そう思って一歩、二歩、並んで、そして次の足を踏み出せばレディを背中に守れる、はずだった。
「サンジくんの大事なコックさんの手になんてひどいことするの!」
真横に立つレディの言葉に驚いて思わず敵から目を離して見下ろす。驚きすぎて唇を噛み締めることを忘れてしまって、堪えていた涙がぽろりとこぼれおちる。威嚇をする猫のようにいきりたっていたレディがおれの気配に気付いたのか、強い目力で睨みつけていた視線をふとおれに向けた瞬間、綺麗なビー玉のようにまんまるくなってしまった目と目が合う。レディの言葉を脳が噛み砕く前に手が何かに包まれてまた何度も目を瞬くからぽろぽろと情けなく涙が零れ落ちる。一体何に手を包まれたのか確認するために視線を落とせばレディの柔らかな手がおれの手を絡め取っていて驚いて食い入るように見つめる。糸を、あんなにほどいてほしがっていたのに、糸なんかよりよっぽど直接的に繋がっている手の光景がおかしくて訳が分からなくなる。
「大丈夫、大丈夫だよ、泣かないで。サンジくんの大事な手は私が守るからね。大丈夫だよ、こうして繋いでればきっと大丈夫。安心して、こんな糸にサンジくんの手は傷付けさせないからね。大丈夫」
泣かないで、と真っ直ぐな目がおれを貫いて、馬鹿な勘違いをしていた自分を恥じる。レディはただただおれの、料理人であるおれの手のことを考えてくれていた。なのにおれは赤い運命の糸だのなんだの浮かれて勘違いして落ち込んで。馬鹿だ。大馬鹿だ。
「大丈夫、こんなひどいことする敵、私がやっつけてあげる」
心配しないで、と柔らかく微笑むレディに、ぎゅっと心臓を鷲掴みにされた。
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