タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2024/05/13 ロビン
月を見る猫・真っ赤な唇は半月よりも綺麗に・泣かないで、愛しい人


「かわいい」
「……私?」

 うん、と頷かれて頬に手を当てて首を傾げる。容姿を褒められることは多かった。うっとりとした純粋な視線にも、じっとりとした下品な視線にも慣れている。だけれどもそれは、綺麗、と言われることが多くて、可愛い、だなんて言われたことはなかった。だから、じっと視線が私に向かっているのにその視線を素直に受け止めることができなくて首を傾げている。可愛いっていうのは、砂漠のお姫様や、ナミや、あなたのような見た目のことを言うのであって、私に向けられるものではない。サンジは誰に対してもああだから例外。

「かわいいね」
「……あなたの方がかわいらしいわよ」
「わかってないところもかわいい」

 大好き、と笑われて口を閉じる。まだ、このまっすぐな好意を素直に受け止めることができない。世界を敵に回してまで私を守ってくれた人たちが、私を裏切ることなんてないとわかっているけれど、わかっているからこそ毎回胸がいっぱいになって何も返せなくなる。

「……嫌なわけじゃないのよ」
「わかってるよ、照れ屋さんなだけだもんね」

 かわいい、とまた紡がれて視線が泳ぐ。

「でもね、嫌がってもいいんだよ」
「……どうしてそんなことを言うの?」
「だって私のはみんなと違うから」

 嫌がるわけ、ないのに。照れてるだけだってあなたもわかってくれてるのに、どうしてそんなことを言うの。何が違うって言うの。わからなくて、泳ぐ視線を彼女の瞳にしっかりくっつける。少しの機微も見逃さないように。

「ロビンちゃん、他の人のはちゃんとわかってるのに。特別なのは嬉しいけど、ちゃんと嫌がってね」
「……何を言ってるのかわからないわ」

 特別なのは当然で、嫌がらないのも当然よ。あなたたちにならこの身を捧げてもいいと思えるんだから。なのにどうしてそれを否定するの。

「泣かないで」
「泣いてないわ」

 視界は滲んでない。少しの機微も見逃したくなかったのに、泣きそうになるほど胸が痛いのは事実で思わず俯いて目を逸らす。だけど、平均より身長の高い私が俯いたところで意味がない。一歩懐に近付いただけで彼女の心配そうな顔が視界いっぱいに広がってどうしようもなくなる。

「泣かせたいわけじゃなかったんだよ、ごめんね、ちょっと先に進みたかっただけなの。ロビンちゃんがこんなに鈍いとは思わなくて、……悲しませてごめんね」

 鈍くなんかない。鈍かったら、この年齢まで生きてこれない人生を送ってきた。確かにこの船に乗ってから彼らに甘えることも覚えたけれど、鈍くなんかないわ。

「……あとでひっぱたいてね」

 あなたに暴力なんて絶対振るわない、そう言おうとしたのに、私の声は彼女に飲み込まれて固まる。ふに、と柔らかい何かが私の唇を覆って、何か、は、そんなの、目の前にいる彼女でしかなくて、彼女の何が触れ、……?

「私の好きはこういう好きだから、……ちゃんと、他の男の人にするみたいに私のことも警戒してね」