タイトルを考えるのが死ぬほど苦手
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2024/06/05 ゾロ
じりじりと焼け焦げる・どこにいても気にしてる・キスの合間に濡れた吐息で
※見聞色の都合のいい解釈と捏造
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「見聞色ってどんな感じ?」
「……どんな感じって言われてもな」
おれの横へ腰を下ろして暫くもじもじしていた女にまどろっこしいななんだよと聞こうとしたのよりどうにか早く口を開いてくれた。無駄に喧嘩にならずに済んだと安堵するよりもその内容に酒を飲む手も止まって考え込む。
「……別に得意なわけでもねェし、」
「でも習得してるでしょ?」
「まあ、……うん、そうだな」
歯切れの悪い返事に、気恥ずかしそうにしていた女が不思議そうに首を傾げた。おれのはそもそも見聞色というより敵との戦闘で気配や殺気を感じ取れるように慣れていった感覚のほうが強くて、人の機微に疎いおれにはルフィみたいに動物の心の声が聞こえるわけでもねェしウソップみたいに人の感情に寄り添えるわけでもねェ。だから、見聞色のあれそれを聞きたいなら戦闘面でしかそれを使いこなせないおれよりルフィたちに聞いたほうがいいだろ。だがそれを言ってしまえばこの女はすぐにそれもそうかとおれの横からすり抜けて他の男のもとへいってしまいそうで、曖昧に誤魔化すような態度になってしまった。
「……使えるようになりてェのか?」
「んん……そりゃ強くなるに越したことはないけど、そうじゃなくて、」
お互いにどこか歯切れの悪い会話で手慰みに酒を煽った。
「……心の声が聞こえるって聞いて」
「ああ……」
そういやルフィが騒いでたこともあったな、と思って頷いた瞬間、ワッと悲鳴をあげて机に顔を伏せられてギョッとする。おいなんだどうした。ううう、と呻き声まで聞こえて狼狽する。今度こそ酒は手放した。触れていいのか、別に介助なら大丈夫だろ、と自分を納得させて小さな背中を控えめにさする。ほんの少しでも力を加えたら折ってしまいそうで不安になりながら、どんな敵と相対するよりも気を張ってその柔らかな背中を慰める。払い除けられなかったことに安心して、呻き声がどんどん震えて泣く一歩手前になるから安心が吹っ飛んで困惑する。おい、どうしたんだよ。
「やだ! やっぱり聞こえるんだ!」
「お、おい、どうした、大丈夫か、」
「私がゾロのこと好きだっていつからバレてたの?!」
「は、」
わぁん、と顔を伏せながら泣く女の言葉が脳を直接ぶん殴ってきて固まる。今何言った、こいつ。
「ちゃんと、ちゃんと、ゾロの邪魔にならないように、頑張ってたのに、……ゾロが、世界一になったら、自分の口でちゃんと、言う、つもりだったのに、」
嗚咽混じりに聞こえてくる言葉のひとつひとつが全部おれの脳をぶん殴ってくるから脳がきちんと働かない。
「お、おい、まて、なあ、まてって」
「こんな形でバレるんじゃなくて、ちゃんと、こ、」
「だから、待てって!」
さっきあんなに力加減に気を付けていたのも忘れて両肩を引っ掴んで身を起こさせる。目を涙でいっぱいに潤ませて泣く女とばっちり視線が絡んで一瞬言葉に詰まったが、これ以上泣かせて目玉を落とされても困るからと勇気を振り絞る。
「さっきも言ったがおれは、見聞色別に得意じゃねェ」
「でも、さっき、心の声が聞こえるって納得してた、」
「そういやルフィがそんなこともできたなって思い出してただけだ」
女の言葉が衝撃で前後が吹っ飛んでしまったさっきのやりとりをどうにか思い出して答える。ぱちぱちと瞬きを繰り返すたびにぽろぽろと涙が頬を伝うから肝が冷える。
「…………ゾロ、は、こころの声、きこえ、ない?」
「……聞こえねェ」
「私がゾロのこと、す、」
「言うな。……お前の気持ちは知らなかった、おれは何も聞いてない」
またアレを言われるんじゃないかと思って慌てて肩から手を離して口を覆う。言うな、と口を隠したのが何故かこいつの柔い心を傷付けてしまったみたいで、またぼろりと大粒の涙が溢れたのを見て慌てて口を開く。
「……こういうのは、男の方から言うもんだろ」
ぱち、ぱち、と瞬きを繰り返すのをじっと見て、息を吸う。
「おれは、心が読めるわけじゃねェし、……心が読めたとしてもそれをどうすればいいのかわからないし、どっちにしろ絶対にまた、お前を泣かせる。……努力はするが、泣かせねェなんて絶対無理だ。お前のこと幸せにできるやつは他にもっといる、……それでもお前がおれで良いって言ってくれんなら、……おれは、お前と添い遂げたい」
ぱち、と瞬いた目から涙がこぼれおちなくてほっとしながら、言葉を選ぶ。
「……世界一になってからなんて言うなよ、……好きな女を邪魔に思ったことなんてない」
返事が聞きたくて、塞いでいた口から手を退ける。濡れた頬が痛々しくて服の裾で拭いながら、じっと待った。想いは通じ合っていた。でも、おれの不甲斐ない告白のせいで頷かれないかもしれない。泣かせない約束もできない男に今この瞬間幻滅したかもしれない。それでも別に構わなかった。お前が幸せになれるなら、お前の横にいるのは誰だっていい。お前が見聞色持ちだったらよかったのに。そうしたら口下手なおれの言葉なんかよりお前に伝わる。
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