タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2022/03/28


「おれァ今、機嫌が悪い」

 その言葉とともに蹴り壊されたらしい何かの音に体に緊張が走って息を呑む。口を塞がれているおかげで悲鳴を上げずに済んだけど、目も塞がれているから今何が起きているのか分からない。狭い箱に押し込まれていることは分かっていて、だけど目も口も手も足も縛られている今、そんなことがわかったってどうしようもない。この箱の耐久性がどんなものかわからない今は、不安を感じていることだけが事実。
 呻き声や何かが壊れる音、今日初めて聞いたくせに今日だけで人生で一番多く聞いたような気がする銃声。箱の中で身を縮ませて出来る限り静かにする。だって、今箱の外で大暴れしてる人が私を助けてくれる人かどうかはまだわからないから。私を誘拐した悪い人たちの仲間割れかもしれない。ここまで大騒動になったのは初めてだけど小競り合いをしていたのはよく聞こえてた。全く違う派閥の悪い人たちが間の悪いことに乗り込んできただけかもしれない。大暴れしている人が海軍であれば、私の救いの神なんだけれど、海軍がたった一人でこんなあからさまに悪い奴らのアジトに乗り込むわけがない。声が一人しかしないしそもそも、海軍じゃねェよ、なんて絶望的な言葉も聞こえた。
 どっちが勝とうと結局悪い人の手中に私の命が掴まれているという事実は変わらない。一際大きな音で何かが壊れる音がして静かになったから私も息を潜める。せめてこのまま見つからずにいれば、そう願ったのも束の間静かだった空間にごそごそと何かを漁る音が加わる。

「クソッ、どこにいるんだ」

 そして絶望。誰かを探している。誘拐されているのはこの場で私一人。私を探している? どんどん物音が近付いて、私が詰め込まれている箱に何かが触れた。ああ、だめだ、見つかった。

「……いた! くそこいつら麗しのレディを縛り上げた上になんて狭い場所にいやいやそんなこと言ってる場合じゃねェ! 今すぐ助けてあげるからね、レディ、安心して」

 狭い箱から優しく抱き上げられたかと思えば落とされる言葉に身を硬くしていた緊張がどこかに飛んでいきそうになる。助けてあげる、? その言葉通り優しい手つきでどこかにおろされ、塞がれていた口が解放されて唇が震える。

「次は目の布を外すよ、眩しいかもしれねェから気を付けて」

 この人は乗り込んできた人と同じ声の持ち主なんだろうか。だってあんなこの世の怒りを何もかも詰め込んだ低く怖い声の持ち主だった。それがこんなこの世の甘くて美味しいものをことこと何日も煮込んだかのような甘ったるくて優しい声。そのふたつがどうしても合致しない。
 だから彼の言った忠告をきちんと聞けてなかった。しゅるりと視界を塞いでいた布がほどかれた瞬間、ぴかぴかと目の前に星が散る。

「ま、ぶし」
「えっだっ、大丈夫?! ちょっ、チョッパー!」

 また体が浮いて瞠目すればその眩しさの原因がわかった。照明の光なんかよりよっぽどきらきら光るそれは、今私を心配そうに抱いてどこかに連れて行こうとする彼の綺麗な金色の髪。