タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2024/06/27 ロー
誰のものでもない・包まれる香り・喉が痛むほど叫んだ


「私、ローはやきもち焼きだと思ってた」

 不思議そうに首を傾けて私の話をじっと聞くローに、勝手な偏見を持ってたことを告白する。

「あからさまにたちの悪いナンパはすぐに追い払ってくれるけど、そうじゃなくて普通に言い寄られたりしてるのは私の動向を見守ってくれるでしょ?」

 誰でも彼でも手当たり次第に追い払ったりばらばらにしたりするものだと思い込んでて騒ぎになるんじゃないかってびくびくしてた時期もあるんだよ、なんて付け足せば眉を顰められたから謝る。愛情深い人だって知ってたから、恋人に収まれば潰れてしまうくらいひたむきに愛を注がれると思い込んでいた。でも違った。もちろん私のことを愛してくれているけど、それ以上に私のことを信じてくれている。だからたちの悪い男にはきちんと威嚇して追い払ってくれるし、そうじゃない普通の男相手だと私がロー以外に揺らがないと信じてくれているから見守ってくれている。穏やかに愛されるのは心地が良くてローに同じものを返したいのに変な人はもちろん自分で追い払っちゃうし言い寄られる前にしっかり恋人持ちだということをアピールしてそもそも言い寄らせない鉄壁な姿に私の出る幕がなくて、だから、今みたいに拗ねていじけちゃう。完璧な彼氏をほんの少し、困らせたくて。

「嫉妬とかしないの?」
「お前は恋人がいるのによそにふらつくような奴じゃないだろう」
「信じてくれてるのは嬉しいけど、それでも妬いちゃうことってあるでしょ?」

 私の気持ちは変わらないけど、他の人の気持ちはどうしようもできないんだから。

「お前が好かれるのは不思議なことじゃない」

 私の方がおかしいみたいに不思議そうに首を傾げながら即答されて口籠もる。深すぎる愛はどっしりとしすぎていて、困惑した。困らせようとして、墓穴を掘ったような感じになってしまって戸惑う。なんだろう、ちょっと、信じられていて嬉しいとかそういうのとはまた違う気がしてきた。

「……最悪、おれがフラれて、別の男のもとに行ってしまったとしても、お前が幸せならそれでいい」
「え、?」
「お前が生きてくれるならおれはそれだけでいい」

 生きててくれるだけでいい、と重ねて落とされた言葉に固まる。じわり、とローの言葉が脳に染み込む。とても深くて重たい気持ちで愛されてはいた。でも、信じられていたわけじゃなかった。ローと私は恋人だったはずなのに、何も通じ合えていなかった。それを痛感して、ぎゅ、と痛む胸を抑えてローを見上げる。私の様子の変化にすぐに気付いて、どうした、と恋人の顔から医者の顔になったけど、今私に必要なのはお医者さんのローじゃなくて恋人のローだったのに。

「私のこと、信じてくれてなかったんだね」
「? そんなわけない、」
「私が、ロー以外のこと好きになるかもしれないって、思って、……私が、……私が幸せに生きられるのは、ローのそばだけなのに、」

 ローのこと、好きなのに。

「ち、違う、そういうことじゃない、今のお前の気持ちを疑ってるわけじゃない、違う、」

 お医者さんのローがいなくなって、恋人のローが戻ってきてくれたけど、悲しみは癒えなくて、それどころかじわじわと涙が溢れそうになって俯く。わかってる。もしも、の話でしょ。でも、もしも、でも、私の気持ちを疑われたのが悲しかった。生きてるだけでいい、なんて、ローの最大級の愛情だってこともわかってる。でも、私は、ローと一緒に、ローのそばで生きていたいのに。

「私、ちゃんと、ローより先に死なないように頑張る、……ローに悲しい思いなんてさせない、……だからローも、私のこと、手放そうとしないで、」

 生きてるだけでいいなんて、そんなこと言わないで。