タイトルを考えるのが死ぬほど苦手
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2024/07/02 ロシナンテ
熱に埋もれる・ひたひたと迫るのは・君の手の大きさに慣れた私の手
※現パロ
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「なあ、今付き合ってるやついる?」
「いたら男の人とこうやってふたりで飲んだりしないでしょ。急にどうしたの」
「告白するための事前調査は必要だろ?」
「……そう、だ、ね、?」
いねェのか、そっかそっか、よかったよかった、と朗らかに笑いながら私の目の前でお酒を飲み進めるロシナンテに頭が働かなくなる。今、私は恋人の有無を尋ねられて、それで、その有無を尋ねられた理由は告白をするため、で、だから、ええと、つまり、。店員さんにおかわりを頼んだロシナンテの声で意識を取り戻して、恥ずかしい勘違いをしているかもしれない可能性に気付く。目の前のロシナンテが私に告白するわけじゃない。だって、もしそうならこんなに明け透けに計画を吐露する訳がない。だからきっと、ロシナンテの友達が私に好意を持ってくれていて、それで、友達として私に探りを入れてきた。きっとそう。恥ずかしい勘違いをそのままロシナンテにぶつけなくて安堵する。大恥をかくところだった。危ない。
「……えっと、……私も知ってる人?」
「何が?」
変な勘違いをしたことが恥ずかしくて、口籠もる私に店員さんから新しいお酒を受け取ったロシナンテが首を傾げる。
「……その、……私のこと好き? な人、」
「………………なな、な、ななんの話だ?」
「……ん?」
言葉にするとほんの少し照れくさい言葉を俯きながら紡いだのにものすごく間があいてから狼狽した声が聞こえて顔を上げる。グラスを傾けてはいるけれど口の中にきちんと流し込めていないお酒がロシナンテの服を濡らしていて慌てて立ち上がる。机の上にあったおしぼりを投げ渡してから身を乗り出して少しでもその惨状をマシにしようとグラスを取り上げる。ドジったと嘆きながらも不幸中の幸いなのかグラスの中身は半分以上溢れることはなく助けられた。
「大丈夫?」
「へーきへーき、おれの服がちっと濡れただけ!」
ごめんな、と、ありがとうを重ねて紡ぐロシナンテにドジはいつものことだよと笑って腰を下ろす。
「そ、そんなことより、……なんでそんな話になったんだ?」
「何が?」
さっきとは真逆のやりとりになったな、なんて思いながらも首を傾げる。
「お、お前のこと好きなやつがどうのこうの、って」
「ん? さっきロシナンテが私に言ったんじゃない」
「?」
「私に告白するための事前調査で、今私に付き合ってる人がいるかどうか聞いたんでしょ?」
「……おれそこまで言っちまったか?」
「?」
そこまで、って、どこまで? ふたりではてなを飛ばして見つめ合う。瞬間、べしん、と大きな手が叩く勢いで顔を覆い隠して瞬く。今の、痛かったでしょ。力加減またドジっちゃったの? 大丈夫、と声をかけようとした私を遮って言葉が聞こえたから口を閉じて耳を澄ます。
「ドジった、」
「……? そうだね、服、大丈夫?」
「そうじゃねェ、……事前調査……」
「? 内緒だったの?」
自然に友達として紹介してくれる予定だったのかもしれない。それでゆっくり仲良くなって、それから告白する計画だったなら確かに大ドジで、勝手に好意をバラしてしまったロシナンテに呆れながらもちょっと笑ってしまう。まあでも、ロシナンテが私に紹介してもいいって思った人なんだから悪い人ではないだろうし、お見合いみたいな顔合わせになっても別にいいかな、なんて呑気に考える。
「どんな人?」
「…………………………、おれ」
「、?」
長い沈黙のあと、紡がれた言葉が耳には入ってるのに脳に届かなくて首を傾げる。顔を覆っていたロシナンテが手を下ろして、その目と視線が混じり合う。叩く勢いで顔を覆っていたから赤くなっているのかな、なんてぼんやり思っていたのに、耳も真っ赤になっているのに気付いて体温が上がる。
「……お前に告白したくて、事前調査したのは、……おれ」
※なんでも許せる人向け蛇足※
目の前で酒やつまみに舌鼓を打ちながら機嫌が良さそうに笑う好きな人におれの目尻もやにさがる。かわいいな。自分でもたまに辟易することがあるドジに、嫌な顔ひとつしないでただおれの心配をして笑ってくれる、数少ない人間の一人。好きになるのに時間はかからなかった。好きな人も、おれのことを好いてくれている。友達として、だけど。それでも十分嬉しくて満足してた。
でも、嫌なことを聞いてしまった。おれが彼女を好きなのは、おれを良く知る人ならみんな知っていてその中にはいらないお節介を焼いてくる奴もいた。当事者の問題だからほっとけと何度も口煩く言っていたのに、身内にだけは異常に甘い男がおれの好きな人を勝手に身辺調査にかけて、そして、その結果をおれの耳に吹き込んできた。好きな人のことを勝手に調べるなんて酷いことしたくなかったのに、勝手に調べた挙句おれにもそれを知らせて、知ってしまったからにはもう引き下がれないのもあいつはわかっていて、後戻りのできない状況に歯噛みする。だけど好きな人が傷付くかもしれないとわかっているなら、もう進むしかなかった。あまりいい噂を聞かない男が彼女を狙っている。それも、そもそもの発端はおれがドンキホーテだからで、ちょくちょく飲みに行く彼女をおれの好きな人だとまではわかっていなくても友人として大事な人間だと判断したらしい。弱みを握ろうと彼女にじわじわと迫る気配に怒りが込み上げた。おれのせいだ。
だからもう、懐に入れて守ろうと思った。身辺調査のせいで今は恋人がいないこともわかっていたし、ただの友達でも弱みとして狙われるのならもういっそ不自然なく彼女のそばにいられることができる関係に落ち着いて守ろうと決意した。……おれのことが嫌いなら無理強いはしないけど、生理的に受け付けないとかいうレベルじゃなければきっとなんとかなる。彼女は優しくて、おれのドジに甘い人で、そんなおれのことを可愛いと思ってくれているのは知っていたから、それにつけ込んだ。
おれのドジは本当だけど、でも、おれも身内に甘いだけで、好きな人以外に見せる顔はきっと褒められたものじゃない。ドジばかり踏んでいるから無害だと思われているのかもしれないけど、おれはそんなに聖人じゃない。嘘をついて騙すことだってできる。それを彼女は知らない。恋人がいないことは知っていたのに、知らないフリでわざとらしい言葉を吐いたって彼女は気付けない。わざと誤解を招く言葉選びでおれを意識させて、わざとなのに人が良いからおれのことを疑わずに恥じて俯く姿が想像以上に愛らしくて口元へ運んでいたはずの液体がだばだばと溢れたのに気付けなかった。酔いからの赤みじゃなく、照れて耳元までほんのり赤く染めた姿が可愛すぎて見惚れたからドジったのに、彼女は本当におれのことを一切疑わず心配してくれてほんの少し良心が痛む。見惚れてドジったおかげで真実味が増したのか、おれの告白を本当にドジで口走ったと信じた彼女がその皮膚を赤く染め上げる。脈が全くなさそうだったならとりあえず今日はおれを男として意識させるだけで終わるはずだったのに、その真っ赤な顔は脈しかなくて締まりのない口元がさらに緩みそうになった。
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