タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2024/07/05 スモーカー
か細い声が耳に残る・ばくんと心臓が跳ねる・一緒でいい、一緒がいい
※ntflの顔面に引っ張られてる


「好きな人ができたの?」
「…………誰から聞いた」
「ヒナちゃん」
「くそ、」

 あいつめ、と顔を手のひらで覆って項垂れるスモーカーくんを覗き込む。身長差があるから別にのけぞらなくたって距離はあるのに、わざわざ背筋を伸ばすから遠ざかった顔に瞬いた。近い、なんて言われても、身長差で近くないからただの事実で否定する。

「ヒナちゃんが意気地なしって怒ってたよ」
「なんであいつが怒るんだ、関係ねェだろ」

 関係なくないのに。みんなスモーカーくんには幸せになってほしいんだよ。私だってそう。ヒナちゃんがぷんすこ怒ってたのだって、本当に意気地なしって思ってるわけじゃなくて幸せになってほしいのにそれを自分から手放そうとしてるスモーカーくんに気付いてもどかしくなってるだけ。
 呆れたようなため息が降ってきて見上げてもまだ顔を覆ったままのスモーカーくんとは目が合わない。

「口説かないの?」
「……どいつもこいつもお節介だな」
「みんなスモーカーくんのことが好きなんだよ」

 そうかい、と呆れたような、諦めたような返事が返ってきて私もヒナちゃんみたいにもどかしくなる。

「……おれに口説かれても困るだろ」
「どうして?」
「……お前らだって散々おれにデリカシーがねェだのなんだの文句つけてただろ」

 それはまあそうだけど、なんて頷いてしまったから、ほらみろ、だなんて拗ねた声が聞こえてきたから慌てる。

「たまにデリカシーないけど、それを上回る魅力がスモーカーくんにはあるんだから自信持って口説いてみればいいのに」
「他人事だと思いやがって……口説き方なんてわかんねェよ」
「じっと見つめるだけでも大抵の女の子は落ちちゃうでしょ」

 はあ、と盛大なため息が上から降ってきたと同時に長らく隠されていたスモーカーくんの目と視線が絡む。外野のくせにうるさい私に怒ってるのか、責め立てるようなじっとりとした目つきに気圧されてへらりと笑う。でも、別に適当なこと言ったわけじゃない。スモーカーくんがその好きな人とどのくらいの距離感なのかは知らないけど、たまに余計なことを言ってしまう口を閉じてその何もかもを射抜くような目で見つめるだけの方がきっと伝わると思う。ほら、目は口ほどに物を言うって言うし。なんて、その尋問めいた目付きにスモーカーくんに追い詰められて勝手にペラペラと自供してしまう海賊の気持ちになりながら言い訳を心の中で紡いだ。そんな私に文句を言う気すら起きないのか、その目がじっと私を射抜いたままもう一度大きなため息を吐かれてしまった。茶化してると思われたのかな。スモーカーくんに幸せになってほしいのは本当なのに。

「……………………落ちねェじゃねェか」

 肩を落としそうになった私に降ってきた言葉に瞬く。スモーカーくん、今、なんて、

「見つめるだけでいいとか適当なこと言いやがって」

 馬鹿が、と煙と共に吐き捨てられて気付いた時にはもうスモーカーくんの背中しか見えなかった。