タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2024/08/02 スモーカー
残された希望・人肌を求めて・恋をしましょう
※平和になったいつかの未来


「暇を持て余してるスモーカーくん見るのまだ慣れない」

 面白いと笑って揶揄ってもスモーカーくんはあくびをして目尻に涙を溜めて私をちらりと見るだけ。綺麗に積み上がった石を崩しては積み上げて、崩しては積み上げて、の遊びにも飽きてしまったらしいスモーカーくんに頬を緩める。だらだらしてるスモーカーくんを見られるのは良いことだ。だって世界が平和ってことだから。スモーカーくんが守った世界が今日も平和に続いている。忙しない背中ばかり見ていてすっかり顔も忘れそうになっていたけれど、今じゃもう増えない傷跡の場所をしっかり暗記できたくらい顔を突き合わせてばかりいる。

「……邪魔なら帰る」
「邪魔じゃないけど」

 じっと見つめていればぶすっとあからさまに拗ねたスモーカーくんに声を出して笑って近寄って隣に座る。

「おじさんが拗ねても可愛くないよ」
「別に可愛くしようなんざ思ってねェ」

 可愛くないよ、なんて言いながらも手持ち無沙汰に拗ねるスモーカーくんがほんの少し可愛くて言えばやっぱり少しの自覚もなくて緩む頬がちっとも引き締まらなくて困る。拗ねたのは否定せずに背中を丸めてまた石をせっせと積み上げる姿を見守る。外に出ればパトロールだと勘違いされて、せっかく平和になったんだから今までの分ちゃんと休んで、と島の人たちに追い返されてしまう。島の人たちはこの平和に貢献してくれたスモーカーくんに心から休んで欲しくて善意で言ってくれてるのはわかるけど、家で缶詰になるのが性に合わないスモーカーくんにとっては少し可哀想で眉が下がる。手持ち無沙汰なスモーカーくんがせめてもの外出に私の家を選んで避難するのを追い出すほど私は酷くないからここ最近はずっと一緒にいた。

「カジノと石積み以外にも何か新しい趣味見つけたら?」

 だけど意気消沈して閉じこもってばかりいるスモーカーくんを見るのはやっぱり可哀想で口を挟む。

「例えばなんだ」
「うーん、……趣味じゃなくても、せっかく時間が増えたんだから恋をしてみるとか」

 うんうん考えて、急に閃く。今までは恋をしている時間も余裕もなかったけれど、こんなに暇を持て余してしまっている今なら恋をする時間もできる。世界の平和に貢献したスモーカーくんの名前は売れているし、良い人なのはお墨付きだし、多少のデリカシーのなさなんて全然気にされない、はず。出会いを求める場所に行けばいろんな人から引っ張りだこで選り取り見取りになるだろうな、なんて想像してなぜか私が誇らしげな気持ちになる。

「……それはおれひとりでするもんじゃないだろ」
「恋はひとりでするものだと思ってた。恋が実ったらふたりで築き上げるものになるけど」

 石を最後まで積み上げて丸まった背中が伸びて顔を向けられる。

「……実る気しねェしな」
「……もしかしてもう恋はしてるの?」
「一般論だろ。おれみてェなつまらん男についてきてくれる女はいねェ」

 はっ、と鼻で笑われて首を傾げる。ちょっとデリカシーないだけでつまらなくもないしモテないわけじゃないのに。

「いっぱいいるよ」
「……お前は」
「私? うーん、」
「……ほら見ろ」
「えっ、違うよ、誤解だよ!」

 チッと、大きな舌打ちをして視線を逸らされたから慌ててフォローする。せっかく積み上げた石をまた白い煙で解体するスモーカーくんに誤解されたくなくて言葉を重ねるのに全然聞く耳をもってくれない。

「私なんかにスモーカーくんは勿体無いよって方だよ! 今じゃ知らない人がいないスモーカーくんが、今も変わらず私と友達してくれるのが嬉しいのに」
「ふん」

 さっきなんかよりもっと拗ねたスモーカーくんが大きな背中を丸めてまた石を積み始めておろおろする。さっきの拗ねたスモーカーくんはなんだか可愛らしかったけど、私の気持ちを曲解して拗ねられるのは全然微笑ましくない。早く誤解を解きたくて全然こっちを見てくれないスモーカーくんの服を掴んで揺さぶっても軸が全くぶれない置き物のような肉体に私の体力が削られていくだけ。

「ねえスモーカーくん、勘違いだってば、拗ねないで」
「拗ねてねェ、揺らすな」
「ちっとも揺れてないくせに! 勘違いしないでったら!」
「勘違いなんざしてねェ。最初から知ってた。……でも別に良い」

 時間はまだまだたっぷりある、とぶすくれた声を私を見ずに落とすスモーカーくんに必死で弁解することしかできなかった。