タイトルを考えるのが死ぬほど苦手
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2024/08/17 スモーカー
誘う術を教えて・名前を呼んで、その声で・望むなら犬にでもなるよ
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お前が初めての恋人だから何もわからない。してほしいことがあったらちゃんと言え。されたくないことも言え。
全部が命令形でどこか偉そうに聞こえても、私と別れないために学ぼうとする姿勢は純粋に私を愛してくれているからだとわかったから嬉しくて抱きついたのも良い思い出。ぴき、と固まったスモーカーくんに、恋人ならハグくらい毎日するよね、なんて嬉しさを誤魔化して、スモーカーくんはそれを素直に学んだ。会うたびにぎこちない態度でぎゅうっと私を抱きしめてくれるようになって、嬉しくて浮かれた私は調子に乗ってしまった。歩く時はずっと手を繋ぐのは当たり前だよね、花束貰えるの楽しみだな、愛を伝え合うのは当然だよね、なんて、堅物なスモーカーくんには似合わないロマンチックなことばかり教え込んでそれを疑わずに信じて全部を叶えてくれるから、また嬉しくなって調子に乗って、それの繰り返し。何度目かの時によくわからない花束を選んできたのを仏頂面で渡されてようやく反省した。嫌なことはしなくていいんだよ、と遅まきながらも軌道修正を計ろうとしたのに、花束持ってると抱きしめられねェ、が仏頂面の理由だとわかった瞬間、反省なんて言葉は辞書から消えた。店員さんじゃなくてスモーカーくんがきっと一から選んだんだろう花束を崩したくなくて、だけど隙間なんてないくらいぎゅっと抱きしめたいのも本当で、花束を挟んで難しい顔をする私たちは側から見たらきっとおかしな恋人だった。
壁に背をつけてスモーカーくんを待つ。私よりも花の名前を覚え始めて綺麗な花束を見繕うのにも慣れてきたスモーカーくんが今日私にくれる花束を想像して頬が緩む。でも、最初の方のよくわからない組み合わせの花束も好きだった。スモーカーくんが選んでくれるってだけで、世界で一番嬉しい花束なのは変わらない。周囲がざわつきだした気配に顔を上げて瞬く。……道の真ん中を花束が歩いてきてる? 視線を下に映せば見覚えのある靴で、歩いてきてるのは花束じゃなくてスモーカーくんだってことに気付いて慌てて背中を自由にした。スモーカーくんが埋もれてしまうくらいの花束を抱えられるか不安になって腕を広げて想像してみた瞬間ぶわりと白い煙に包まれて驚く。白い煙を怖がる必要はないけどそれでもびっくりして悲鳴を上げた私に、悪い、と開口一番に謝る声が聞こえて更にびっくりする。顔を上げれば煙を引っ込めたスモーカーくんと目があって、その後ろに白い煙でふわふわと浮かんだ大きな花束が見えた。
「悪かった、」
「なんで謝るの?」
重ねて謝るスモーカーくんが不思議で、私からもぎゅうっと抱きしめ返しながら尋ねる。言いにくそうに唇を噛み締めるから、教えて、と私も重ねて聞いた。
「……仕事が忙しくて、……長い間会えなかった」
「スモーカーくんは悪くないでしょ?」
「……恋人なのに、こんなに会えねェのはおかしいだろ」
スモーカーくんの仕事が忙しいのはわかってるからそういう嘘はつかなかったのに。甘い嘘ばかり教え込んでしまったから、思い悩んでしまったのかな、なんて消えたはずの反省を辞書にまた書き込んでどうすればいいのかぐるぐる考える。
「おかしくないよ、そういうスモーカーくんのこと好きになったんだもん」
「…………寂しくねェのか」
「寂しくないって言ったら嘘になるけど、でもスモーカーくんは悪くないよ。それに、会えない間が長いと会えた時の嬉しさはそれの倍になるんだよ。だから今久しぶりに会えてすっごく嬉しいのに、スモーカーくんが悲しんでると私も悲しくなっちゃう」
スモーカーくんの眉間の皺をほぐしたくて言葉を連ねるけど、どうすればいいのかわからなくて困ってしまう。
「……会えなくてもおれのこと好きでいてくれるか」
「当たり前でしょ、ずっと好きだよ」
間髪入れずに返した私にようやく眉間の皺が緩んでくれて私もほっとする。今度は慰めるためじゃなくいつものようにぎゅうっと胸に擦り寄ってスモーカーくんの陰に隠れない大きな花束に手を伸ばす。白い煙が大きな花束の中から一本だけ花を抜き取って私の手に握らせてくれて、頬が緩んだ。
「今までで一番大きな花束だね」
「………………会えなかった分、増やした」
「嬉しい、いつもありがとう」
「お前が喜ぶなら、なんでもやる」
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