タイトルを考えるのが死ぬほど苦手
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2024/09/03 ロー
離れないで、離さないで・触れたら壊れてしまいそう・勇気を出す切欠
※シクシクの実の後遺症捏造
※なんでも許せる人向け
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「熱狂的なトラ男ファンの女の子……?」
しまった、再発だ、と思ったのと同時に耳に滑り込んだ声に固まる。ぎ、と油の切れた機械のように体を動かして視線を向ければやっぱり麦わらの一味である女がシクシクの実の後遺症で女に変化したおれをじっと見つめていて目が泳ぐ。どうする。気合を入れればすぐに男に戻れる。戻れる、が、このことを知られたくなかった。好いた女にこの姿を見られて混乱した頭じゃ最適解を導けなくてただ狼狽えて気合を入れることも弁解することもできず薄く口を開くことしかできない。
「トラ男、……じゃなかった、トラファルガー・ローのファンなの?」
はじめてまともに名前を呼ばれたことに喜びたいのに、この現状が情けなさすぎて何もできないでいる。そんなおれに一歩一歩近付いてくる女にじわりと冷や汗が滲む。まさかおれが女になっているとは思いもしなかった女が警戒心も何もなくにこやかに近付いてくるから説教のひとつでもしたいのに、そうすると正体をバラす羽目になるからやっぱり何も言えずに口をはくはくと動かすことしかできない。
「わ、すごい、刺青も全部一緒だ」
いつの間にか距離を詰められてそっと持ち上げられた手に固まる。知らなかった体温を感じて心音が暴れだしたせいで余計にものを考えられなくなる。指で刺青をなぞられて、一緒だ、と微笑む女の顔との初めての距離感に固まってされるがまま。一緒だ、とわかるほど、おれの刺青を知っていてくれていることに喜びたいのに、おれの思考回路がぐちゃぐちゃに踏み荒らされていて息をすることしかできない。
「でも、すごく素敵だけど、服はサイズのあった服を着た方がもっと素敵だと思うよ。……あなたが強いならいいけど私みたいなのにこうして簡単に手を取られてついてくるくらいだから、心配」
いつの間に手を引かれていたのか、人気の少ない場所に導かれていて瞠目する。おれの顔を覗き込む姿は本当に心配そうにしていて、海賊のすることじゃないとまたひとつ説教をしたいのに説教をされているのはなぜかおれの方で戸惑う。
「この島は穏やかな人ばかりで平和だけど、知らない顔に話しかけられてもこうやってついてきちゃ駄目だよ。海賊だったりしたら危ないでしょ?」
あ、でもトラ男のファンだから海賊は好きなのかな、いや、でもトラ男だったらいいけど海賊相手に好意持っちゃ駄目だし、なんてぶつくさ言い出した女をじっと見つめる。おれだったらいいのか。好きな女に、害のある男だと思われていなかったと喜べばいいのか、それとも今目の前にいるおれがその男のファンだと思っているから良いように取りなしてくれているだけなのか判別できない。
「……あの、聞いてる? あっ、……トラ男のファンだから他の海賊の情報ももしかして知ってた……? ごめんね、私も海賊だけど、その、あなたを傷付けるつもりはないよ、怖がらないで」
ただ心配なだけで、とおれが怯えて声を出せずにいると勘違いしたらしい女が途端に焦って無害をアピールして両手を上げたせいで落胆する。ずっと触れていた手が、離れてしまった。緊張で強張っていたせいで、ふ、と溢れた空気が余計に女の勘違いに拍車をかけて矢継ぎ早に謝ってくれているが、お前は別に何も悪いことはしてないだろう。立ち寄った島で、縁もゆかりもない女をただ心配してあげた、馬鹿でお人好しの海賊だ。それでも何も言えずにいるおれに無害アピールを更に重ねようとしたのか一歩後ずさって距離を取ろうとしたから反射的に手を掴んで引き止めてしまう。頭で考える前に動いたせいで女の手首を傷付けてしまったかと焦って顔色を窺っても痛くも痒くもなさそうで筋力も女になっていたことにひとまず安心した。なぜか手首を見つめて女もおれと同じように安心していたのを見て首を傾げる。
「私のこと、怖くない?」
引き止めたことで怖がられていないと安心したのかと気付いて顎を引いた。目の前で見たこともないくらい綻んだ笑顔をぶつけられて目が泳ぐ。どこまでお人好しなんだ、こいつ。
「良かった、でもちゃんと他の海賊には気を付けてね? わかった?」
もう一度頷いて、引き返せなくなったことに覚悟を決めた。
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