タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2024/09/27 ゾロ
じりじりと焼け焦げる・あなたが好きです・午睡の憂鬱


「ゾロ、あんまりお昼寝しない方がいいよ」
「あ?」
「ちょっと寝言がね……」

 寝ていたおれをじっと見ていたのか目を覚ました瞬間目の前に現れた女が困ったような笑みを浮かべていて眉を顰める。壁を背に座り込んで寝ていたおれの前に座って眉を垂れ下げて困ってるみたいだが、寝起きばなに言われたおれの方が困る。寝言がなんだってんだ。

「……うるさかったか」
「……ううん、……うるさくはないんだけど、小さな声だから、……でもちょっと、……お昼寝するにしても男部屋でゆっくり寝ない?」
「何かあった時に対処できねェ。外で寝るのは見張りも兼ねてる」
「そうだよねえ、……いつもありがとう、ゾロが居てくれるだけですごく安心」

 どういたしまして、と鼻で笑ってもまだ困ったままの笑顔が消えない女をじっと見た。そんなに困らせてるのか。おれの寝言が? うるさい以外で寝言で困ることってなんだよ。そりゃまあ小さな寝言だったとしてもずっと喋ってりゃ鬱陶しいかもしれねェが、起きても喉が渇いてたりすることはないしそこまで喋ってねェんだろ? 小さくぽつぽつとこぼすくらいの寝言の何がそんなにお前を困らせているのかがわからなくておれも困る。どうにかしたくても、自覚がねェ。

「……ゾロがね、たぶん、秘密にしてること、こぼすことあるんだ」

 視線が外れて隣に移動して座り込んだ女が覚悟を決めたように息を吸って前を見たまま紡いだ言葉に固まる。秘密にしてること、

「………………、たとえば」
「……ゾロから聞いてないことは私、知らないよ」
「……聞いてるから言ってんだろ」
「でも聞いてない」

 きゅ、と口を引き締めた横顔をじっと見つめてため息をつく。

「でもお前はそれに困ってんだろ」

 困るとはちょっと違うかも、と困ったように笑うから頭を掻く。困ってんじゃねェか。

「……お前に隠し事する気はねェよ」
「別に仲間だからってなんでも言わなきゃいけないことないよ。……ただ、秘密にしてるのに勝手に聞いちゃうのは申し訳ないから」

 ごめんね、と何も悪くないはずの女が謝罪を口にして固まる。前を向いていた顔がおれの方を向いて気まずそうに視線を彷徨わせながらもしっかり目を合わせて謝る誠実な姿に、腹の底に抱えていた気持ちを勝手に聞かせるだけじゃなく謝らせまでしたおれの不甲斐なさが際立って手のひらで顔を覆って俯く。隠し事をするつもりはなかった。それは本当だ。

「……お前は何も悪くないだろ。まさか寝てるおれに先を越されるとは思ってなかったが、……本当に隠すつもりはなかった。ただ、……時期じゃねェなと思ってただけで」
「……時期?」
「世界一になれてねェのに浮かれたこと言ってもかっこつかねェだろ」

 くそ、と顔を覆った手をどけてまたしっかり目を合わせる。戸惑っている女の目をじっと見つめて、視線が揺らがないように気合を入れて口を開く。もうお前に何度言ってしまったのかわからないが、意識して紡ぐのはおれにとってはこれが初めてで、心臓が変な音を立てる。

「……お前のことが好きだ、……本当は世界一になってから言いたかった。隠してたつもりはねェ、そんな器用なことできねェからな、……まさか寝言で告っちまってるとは思わなかったが、……おい?」

 え、え、とどんどん体の皮膚を真っ赤にさせて戸惑う姿に自分の緊張も吹っ飛んで心配になる。お前、おれが寝言で告ってた時もそんな感じになってたのか? そりゃ困るよな、本当に悪かった、そこまで戸惑うとは思ってなかったんだよ。大丈夫か、と口にしようとしたおれよりも先に開いた口に耳を澄ませる。

「それははじめてきいた!!」

 ぴゃっ、と尻を浮かせて飛び跳ねた女がおれの前から走り去って、心配に伸ばした手が宙ぶらりんに浮いたまま硬直した。