タイトルを考えるのが死ぬほど苦手
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2024/10/05 ロビン
友情の枠をぶち壊す・余裕は夜の向こう側・猫のように丸い背中
※夢主に恋人の存在
※なんでも許せる人向け
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「あ、ロビンちゃん!」
こんにちは、と駆け寄れば柔らかな笑みを咲かせてくれるロビンちゃんに沈んでいた気持ちも浮かび上がる。本屋さんで同じ本に手を伸ばしたのがきっかけで仲良くなったばかりの海賊の女の子の友達。せっかく知り合えたのにログが溜まれば出航してしまうのは寂しいけど、でも、出会えたことに後悔なんてなくて少しでも多くの思い出を作りたいから駆け寄った。狭い島だっていうのもあるけど約束もしてないのにこんなにたくさん会えるのはきっと神様の素敵な計らいで、だから会えるうちはたくさん会ってお話ししたい。
「どうかしたの? 何かあった?」
ロビンちゃんと目が合った瞬間にそんな気持ちは吹っ飛んでたはずなのに、聡明で勘のいいロビンちゃんには自分でも気付かないくらいの心の機微に気付かれてしまってすごいと感心すると同時に申し訳なく思う。ロビンちゃんとは楽しいことばかり分かち合いたいのに。
「え、と、……」
「困り事があるのなら助けになりたいわ。……海賊の女の手助けなんてそれこそあなたを困らせてしまうかもしれないけれど」
「そ、そんなことないよ!」
困るなんて、そんなことない。海賊だけど、ロビンちゃんが良い人だってことは知ってる。
「なら教えてくれる? あなたの助けになりたいの」
そっと私の頬を撫でる手が暖かくて、安心して、観念する。
「あの……ロビンちゃんも一回会ったことあると思うんだけど、……彼氏、と連絡がつかなくて」
「あら、酷い彼氏ね」
それで落ち込んでるの?と慰めるようにまた頬を撫でられて首を振る。不思議そうにしてるロビンちゃんに気まずくなりながら口を開く。
「あの、……これ、別に責めてるわけじゃなくて、私はロビンちゃん好きだってこと、ちゃんとわかっててほしいんだけど、」
「私も好きよ、うれしいわ」
うふふ、と甘い声が擽ったくて安心して息を吐く。
「あの、彼氏がね、ロビンちゃんのこと、たぶん、……好き、になっちゃったっぽくて、」
「……へえ?」
「ロビンちゃんに会ってから、ロビンちゃんのことばかり聞いてきて、……連絡先とか、今どこに泊まってるのかとか、」
ロビンちゃんにこの島での思い出は良いものだって思ってもらいたいから、恋人の痴情のもつれなんて恥、知られたくなかった。当たり屋みたいな出来事で申し訳ないから出来ることなら知られずこのまま和やかに出航して欲しかったけど喋ってるうちにロビンちゃんに直接突撃する可能性もあるんだと考えついて焦りが生まれる。
「よそ見する彼氏なんていらないからちゃんとお別れしたかったんだけど、その、急に連絡取れなくなっちゃって、……その、ロビンちゃんのこと疑ってるわけじゃなくて、心配してるんだけど、その、勝手に押しかけられたりとか、……もしかして、してる?」
「いいえ? あなたの彼氏とはあの一度きりよ。……あなたの彼氏、って言うの、癪ね。あなたを傷付けるような存在をそんな肩書きで呼びたくないわ」
「き、傷付いたりとかはあんまりしてなくて、……ただ、フラれるのは私も癪だから私からフりたかったんだけど、連絡つかないから……気まずくなっちゃって自然消滅狙ってるのかなあ。私ははっきりさせたいんだけど」
「うふふ、偉いわね」
するりと何度も頬を撫でられて、とうとう笑みがこぼれてしまう。
「あなたを放ったらかしにする男なんてあなたも放っておいたらいいのよ」
「でも、……狭い島だから、気まずくなるの嫌で、」
「それならいっそ、私たちと旅に出る?」
「え?」
唐突な提案に何度瞬いてもロビンちゃんはずっとにこにこしたまま私を見下ろしていて思わず目を泳がせる。今なんて言われた? 一緒に旅に出る? さすがに聞き間違いだと思ってちらりとロビンちゃんを見上げても、まだにこにこしてるだけ。私が答えるまでロビンちゃん、ずっと微笑んでるのかな。そんなわけがあるはずなくて、目を泳がせながら口を開く。
「えと、……傷心旅行? みたいな感じ?」
きっと私を慰めるために言った言葉が少し前のめりだっただけで、たぶんこれが適切な表現、のはず。
「さっき傷付いてないって言ってたけれど、やっぱり傷付けられたの?」
「え、ち、違うよ、その、……傷付いてないけど、恋人と別れたばかりの旅行は、そういうしかなくて、……ええと、……」
ロビンちゃんの言葉がどこか刺々しく聞こえて思わず驚いたけど、顔を上げた先のロビンちゃんは相変わらず笑みを携えていてぐるぐる考え込んでいたせいで耳が遠くなったんだと頷いて納得する。
「ロビンちゃん、次の島、どこに行くの?」
「うちの航海士さんに聞いてみないと詳しいことはわからないけれど」
春島だったかしらね、と考え込んで付け足された情報に相槌を打って、また私の答えを待つように黙り込んだロビンちゃんに戸惑う。
「……ロビンちゃん、いつ出航なの?」
「明日の朝よ」
「……寂しいね」
「あなたも一緒に来れば寂しくないわ」
やっぱり自意識過剰や勘違いなんかじゃなくて誘われてる気がして戸惑う。
「……私のこと、嫌い?」
「そんなわけないよ!」
「あなたのことほったらかしにするような酷い男がいる島にあなたを置いていきたくなんかないわ」
頬を撫でていた手が離れたのを落ち込む暇なんてなくて、そのまま手を優しく握られて胸が弾む。ほんの少しの友達なのに、こんなにも親身に私に寄り添ってくれて私のことを想ってくれる人はきっともう後にも先にも現れないんだろうな、なんて唐突に理解してその甘い言葉に離れ難くなる。
「でも、……そんな、とつぜん」
「ねえ、一緒に行きましょうよ」
「でも、」
「あなたと離れたくないわ」
柔らかな笑みが崩れて泣きそうに歪んだ瞬間、島に対する未練なんて弾け飛ぶ。
「ロビンちゃんの仲間にいいよって言ってもらえるかなあ……」
「もちろんよ!」
途端に華やいだ笑顔にほっとして、握られた手をぎゅっと握り返した。
▼▼蛇足
「ねえルフィ、攫ってきたい人がいるのだけれど、だめかしら」
「それ聞くのおれであってるかァ?」
「船長の許可は取らないとだめでしょう?」
「おれの許可よりそいつの許可だろ。別におれはいいけど、そいつがずっと船の中で泣いたりしてたらネザメ悪いからちゃんと慰められるか?」
「泣かせたりなんてしないわ、絶対に」
「まあそんならいいけどよ」
「うふふ、ありがとう」
「おれよりそいつの許可取った方がいいと思うけどなァ……」
「もちろん許可はきちんと取るわよ」
それがどういう形であれ。にっこり微笑んだ私にルフィはしょうがねェなァなんて呆れたように笑いながらも撤回はしなかったから喜ぶ。さてどうやって言いくるめようかしら、なんて考えながら至る所に花を咲かせて彼女を探していたら、どこか落ち込んだ彼女を見つけて眉を顰める。まずはあの子の憂いを払わなくちゃ。そう決意したのに、私と目が合った瞬間に朗らかに緩む表情に私の気持ちも緩んでしまいそうになる。
何かあったの、と聞いてもすぐには答えてくれない距離感にもどかしくなりながら聞き出した憂いはとっくに解決していたもので頬が緩みそうになった。
あの男が私を好きになってしまったと面白い勘違いをしている純粋な彼女に声を出して笑いたくなるのをどうにか堪えて神妙に聞くふりをする。私の情報を欲しがったのは、口説きたかったからなんかじゃない。私が悪魔の子だとわかったから、政府に突き出そうとしただけ。まあそれだけなら海賊に誑かされている彼女を守ろうとする男として合格点をあげたけれど、あの男はただ私の体と懸賞金が目当てだった。彼女は今まで幸せそうにしていたから私と出会ってからお金に目が眩んで性格が変わったのかもしれないけれど、目覚めた本性はもうきっと眠ることはない。ただの良い人ならどう排除しようか悩んでいたけれど、自分から排除するきっかけをくれたことだけは感謝してもいいかもしれない。ああ、あと、彼女と私が出会うまでに彼女を幸せにしていたことも。付け入る隙をくれたことも。あら、意外と感謝するべきことがたくさんあるわね、なんて今頃どこかの船の中で目覚めて目を白黒させているだろう男を思って心の中で笑う。感謝の印に、私と同じくらいの懸賞金になるだろう人たちが乗った海賊船をプレゼントしたんだからきっと喜んでくれている。
浮かれたせいで少しせっかちな勧誘だったかしらと慌てたけれど、優しい彼女はやっぱり純粋で私が少し悲しむそぶりを見せればそれだけで私に寄り添ってくれる。可愛い彼女は少しの旅行だと思い込んでいるけれど、あの船に乗ったらもうそこ以上に幸せなところなんて見つからないもの。悪い海賊に騙された可哀想なお姫様。だけど幸せにするからいいでしょう?
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