タイトルを考えるのが死ぬほど苦手
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2024/10/09 ゾロ
遠くて近い光・一度でいいからキスをください・息をひそめてやり過ごす
※ボツ
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「ぎゃ今のナシごめんありがとう!」
海軍から逃げ回っていた女が助けを求めて勢いよく飛んだのと、それを助けようと距離を縮める為に加速したおれのタイミングが見事にズレた結果正面衝突し、女の顔が赤くなったり青くなったりほっとしたり絶望したり訳のわからないことになった。とりあえず目の前の敵をぶっ飛ばすことに専念して落ち着いてから腕に抱えた女の未だに点滅してる皮膚の色はとりあえず置いて外傷がないか確認する。なぜか唇の端だけほんの少し切れてるのを見つけて眉を顰めてから思い出す。ぎゃ、は、おれとこいつが勢い余ってぶつかった時の悲鳴で、今のナシごめん、は、唇がぶつかった謝罪で、それから敵を追い払った感謝。唇がぶつかった。どこに? 無意識にぺろりと舌で唇を舐めた瞬間血の味がして、おれの皮膚も赤と青に点滅する。
唇と唇がぶつかった。好きな女と。体温が上がる。なのに、今のナシ、とそれをなかったことにされた。こんなのはキスなんかじゃねェ。事故だ。でも、好きな女に唇と唇が触れ合ったことを拒絶された。血の気が引いて、抱き抱えたままだった女をそっと下ろす。いくら助けてもらったからって嫌いな男とくっついてたくねェだろ。いや、嫌いではねェか。仲間だもんな。仲間だから、駄目なのか。なかったことにしたいのか。そうだな、船で色恋沙汰は面倒だもんな。……わかってるよ。
「うわうわうわどうしようやっちゃったゾロごめん本当にごめん大事にしてたと思うのにこんな事故でほんとごめん今のはノーカンだから! 数に数えちゃ駄目だよ違うよゾロは汚れてないから」
「…………ァア? っぶ、やめ、おい、やめろ!」
自分の袖を引っ張っておれの唇をごしごし拭くからお前の綺麗な服が血で汚れる。やめろ、と顔の前で必死に動く手を払いのけて眉を顰めてさっき言われた言葉の全部を思い出す。大事にしてた、何を。 ………………唇の接触のことか? 別に女と違ってそんな大事にするもんでもねェだろ。おれのことなんだと思ってんだ。確かに今までお前に出会えてなかったからおれの唇は誰とも接触する必要もなくて働くことがなかったが、だからって別に大事にしてたわけじゃねェ。結果的にしたことがなかっただけで、それどころか事故でもお前とのそれが初めての接触になれたのにそれを拒絶されてるからこんなにも死にそうな気分になってる。こんなにしんどいなら、適当にどこかで済ませてればよかった、なんて馬鹿げた考えに陥るほど。
「ごめんね、ゾロ、ああどうしよう、ゾロはきっと、初めてのキスの子と結婚するタイプなのに……私が奪っ、いやちがうノーカン、あれは事故だから、大丈夫、ゾロの初キスはちゃんと好きな子とできる」
あれはノーカン、ノーカン、とぶつぶつと紡ぐ女に更に眉間の皺がよる。お前、おれのことばっか気にしてるけど、ふたりがいねェと起きない事故なんだぞ。
「お前は良いのか」
だから、地を這う声で聞いた。それでとどめを刺されようが別によかった。寧ろとどめを刺してもらおうと思った。
「私は良いんだよ」
「嫌じゃねェのか」
「嫌なわけないでしょ」
おろおろしたまま即答された答えにせっかく括った腹がどこかへ飛んでいって固まる。嫌なわけない。嫌なわけがない?
「……嫌じゃねェなら良いだろ」
「私は嫌じゃないけど、ゾロは駄目」
「……だから、」
「ゾロはこんな事故じゃなくて、ちゃんと好きな人とし、」
括った腹がどこかへ飛んで行った拍子に、頭のネジも一緒に飛んで行ってしまったようで、ぷちんと何かがキレた音に逆らおうとは思わなかった。ぐい、と乱暴に引き寄せて、事故だ事故だと宣う口を今度は自分の意思で塞ぐ。間近にある見開いた目を睨み付けて、また乱暴に距離をとった。
「これは事故じゃねェ」
「え、」
「事故ならお前はなかったことにするんだろ。今のは事故じゃねェぞ。どうすんだよ」
え、え、と口を両手で押さえて混乱する女をじっと睨み付ける。さっきまで赤と青に点滅していた肌の色が、赤一色になって鼻で笑った。
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