タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2024/10/25 スモーカー
込み上げる劣情・合わせたてのひら・サイズの合わない指輪
※ボツ


「今まででもらって一番嬉しかったプレゼントって何?」
「え〜…………指輪?」

 途端に爆発するような黄色い声が上がって、爆弾発言を落とした女の声がかき消されてしまった。いくら耳が良くたって、ここまで騒々しく何人もの声があちこちであがれば役に立ちやしない。まあ当の張本人が気圧されるほど詰め寄られてるせいで音にできないものは拾えないってのもあるが。バレないようにこそこそと退散してさっきから頭の中でなんと繰り返される問答に舌打ちをした。
 今まででもらって一番嬉しかったプレゼントが、指輪だと? あいつに男の影なんてなかったはずだ。なぜならおれが、あいつに近寄る男どもを蹴散らしていたから。それがなんで指輪なんか。指輪なんざ、最後に贈るもんだろ。誰に貰ったんだ。そんなことを素直に聞ける性分なら近寄る男どもを陰でこそこそ蹴散らす卑怯な真似なんてせずに正々堂々と告白でもして振られるなりなんなりできてた。それができないから、こそこそ盗み聞きをして落ち込んでいる。
 くそ、誰があいつに指輪なんか、

  ▼▼

 スモーカーくんと幼い頃に祭りで鉢合わせたことがある。子どもだけでお小遣いを握りしめていくような小さなお祭り。でも幼かった頃にはそれはとても大きな催し事で、楽しくて、浮かれすぎたせいで転んで道の隅っこですんすん泣いて蹲っていた私に、スモーカーくんが手を差し伸べてくれた。泣く私に少ないお小遣いで宝石の代わりに飴玉がついた指輪を買ってくれて、それが私にとっていちばんの思い出。好きな人から指輪を貰えた。本物の指輪じゃなくても、スモーカーくんにそんな気持ちが一切なくても、その事実は私の心をずっと優しく包んでくれている。小さな時から正義の人で、大人になった今も腐ることなくずっと正義の味方なスモーカーくんが大好き。だけど、だからこそ、私なんかじゃスモーカーくんの隣に立つのに相応しくない。スモーカーくんはずっと、みんなの平和を、安全を守ってくれてる。スモーカーくんのことを好きなあんなにもわかりやすい女の子に気付けないからスモーカーくんにとってだけ唐突な告白にいつも困ったような申し訳なさそうな顔で断ってるのを知ってる。告白さえすれば区切りをつけられるのに、私はあの女の子たちみたいに勇気も覚悟も持てなくて、ずっと、飴のなくなった指輪に囚われ続けてる。いつか、偽物なんかじゃなく本物の指輪を誰かに渡すスモーカーくんに祝福の言葉を贈るまでは、小さな頃の思い出に浸ったっていいでしょう?