タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2024/11/02 スモーカー
誰も知らない二人だけの秘密・どうしてこんなにも、・言葉より息が詰まる


 部下どもの持っていたバケツの中に入っていた汚い水を思い切り被ってしまった女に、執務室の中にある簡易的な浴室を貸してやる羽目になったのを頭を抱える代わりに葉巻をいつもより一本増やして耐える。守るべき一般市民に泥水をかぶせた馬鹿なあいつらはあとで締めるとして、いくら汚れを落とす必要があるといっても自分の執務室に誘い込んでしまったおれは誰が締めてくれるんだ。くそ。だがしかし、女海兵もいくらかはいるとはいえ基本的に男所帯で誰でも入れるシャワー室を貸すのは憚られる。だからおれがしたことは正しいはずだ。せめてたしぎやヒナがいてくれればこんなことに悩まずに済んだのに、こういう時に限ってあいつらは出払っていた。くそ、耳が良いのを苛立ったことなんてないのに。
 イヤッ、と水音に混じって微かな悲鳴が耳に届いた瞬間、足を動かすよりも早く煙になって風呂場へと直行した。扉を開けるのも惜しんで煙のまま隙間から水の滴る浴室に滑り込んで尻餅をついて腰を抜かしている無防備な姿をした女を抱き込む。形を取り戻して浴室を警戒しても、この女が悲鳴をあげるような敵は見当たらない。そもそもおれのせいで狭い浴室が更に手狭になって、もうひとり入る隙間なんてない。何に悲鳴をあげたのかわからなくて濡れた女の顔を覗き込む。ふるふると震えておれにしがみつく姿はやはり怯えていて、それでも何に怯えているのかはわからない。

「おい、どうした」
「む、……むし、」
「あ?」

 虫、と涙に震える声に探すべきサイズ感を間違えていたことを悟ってため息をついた。水の滴る壁を見やれば確かにこいつの嫌いそうな虫がいて煙でそれを包み込む。しがみつく女にそれを見えないようにしながら煙のままそれを外に放り出して濡れた頭を見下ろした。

「おい、もういねェ」

 ぎゅ、と目を閉じてほんとう?と掠れた声で聞かれて一瞬呻く。

「そんな変な嘘つかねェ」
「あ、ありがとう、」

 重ね重ねごめんなさい、と安堵した声で謝られてもそもそもきっかけはうちの部下どもの不手際のせいだしお前が謝ることなんてひとつもない。虫か、と改めて不法侵入者がいなかったことに安堵して、固まった。急な虫の登場に驚いてそのまま腰を抜かしたのかシャワーが流れっぱなしで暖かい湯が頭からかかるのは別に良い。そうじゃなくて、おれも、お前もびしょ濡れになってしまったのはここが浴室だからで、つまりこいつは裸なわけで、。
 思考回路がぱちんとハマった瞬間、固く目を閉じる。不可抗力とはいえ、裸を見てしまった。どころか、密着していて柔らかさを直に感じてしまっている。

「……す、すもーかー、くん、……み、みた?」

 隠すものがないからか、おれに密着することで隠そうとしているせいで余計に柔らかさを感じてしまって呻きそうになる喉を堪えながら見てねェと搾り出す。

「変な嘘つかないで、……し、仕方ない、よ、……助けてくれてありがとう」

 震える声は全く割り切れていなさそうだが、どうやらおれを責めないでいてくれるらしい女にとりあえずほっとして暗闇の中立ち上がる。離れた体温に安堵した瞬間油断してたのか壁にドンと額をぶつけて今度こそ呻いた。大丈夫、と潤んだ声で聞かれても答えられずに入ってきた時とは違ってきちんと扉を押して形を保ったまま外へ出た。後ろで扉が閉まった音と、もう一度小さな礼が聞こえてどっと疲れたまま目を開いてすっ転んだ。女が裸ということは、つまり、さっきまで着ていた服がどこかにあるということで、その中に下着も含まれるのは至って当然で、…………くそ、おれは何も見てねェ!!