タイトルを考えるのが死ぬほど苦手
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2024/12/15 ロー
君のことが好きなんだ・淋しくても死なないうさぎ・勇気を出す切欠
※現パロ
おあそびからの本編↓
別に見なくても読めます
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「良い匂い、最近のインスタントってすごく美味しいよね、」
目の前の実験にも似たような工程に思いのほか夢中になっていたことに気付いて愕然とした。あんなにも恋焦がれていた恋人が帰ってきた音にも気付かず、スパイス片手に目の前の鍋だけを見つめていたことに冷や汗をかきながらゆっくり振り返る。おれの方が家を空けることの方が多いのに、たった数日いないだけで自分を棚上げして早く帰ってこないかと待ち焦がれていた恋人が幻聴や幻覚なんかじゃなく確かにキッチンの入り口に立っていて、不思議そうに丸まった目がおれの持つスパイスの小瓶を見つめていた。慌ててその手を背後に隠したってキッチンのワークトップにはスパイスの小瓶がいくつも並んでいて、ひとつ視線から逃れたところで意味がない。案の定ひとつずつゆっくり視線で確認する姿にじわりと背中が濡れる。帰ってくるのは明日の朝じゃなかったか。早く会えたのは嬉しいはずなのに、そんなことを思ってしまって心の中で自分をぶん殴った。
バレてしまった。
優しさに漬け込んで仕事以外何もできない男だと常日頃からあんなに演じていたのに。お前がいないとおれは駄目なんだと何もできない男を演じて、このままじゃ激務に食事もできずに倒れでもしてしまうんじゃないかと同情を誘って同棲にまで漕ぎ着けたのに。愛されている自覚はある。同情だけで恋人になってくれたわけじゃないのはわかってる。それでもきっかけはおれが駄目な男でお前がいないと駄目なんだと傅いてそれが上手く転んだ結果だから、今この状況は恋人にとって裏切りでしかなくて心臓が変な音を立てる。
恋人の中でのおれは湯を沸かすだけのカレーしか作れない男だった。せめて出来上がった状態で食べてるだけなら黒足屋にもらっただのなんだの言い訳ができたのに、スパイスを片手に本格的なカレーを作っている現場を抑えられていては言い訳をする余地なんて一ミリもなかった。
「こ、これはち、ちがう、嫌だ別れねェからなおれは絶対に」
言い訳どころか混乱する口は自分勝手な言葉だけ吐いてもう何も取り返しがつかない。
「……ローが作ったの?」
「…………」
「ロー? ねえ、大丈夫? とりあえず続き、つくっ、」
「作らねェお前と話す方が先だ」
「そ、そう……」
コンロの火を落として鍋に蓋をする。隠していたスパイスを仲間の元へ帰して、上着を脱ぐ前にキッチンへ足を運んでくれた恋人の手をぎゅっと掴んだ。帰ってきたばかりで上着も脱いでいないからキャリーケースを転がせば蜻蛉返りのように軽やかに出ていける恋人を逃さないように。だけど掴めたのは左手だけで、右手はするりと逃げられて肝が冷えた。のに、その右手の行き先はおれの目尻で瞬く。
「ちゃんと寝てなかったの?」
「お前が隣にいないと熟睡できない」
外から帰ってきたばかりで冷たい指先がおれの皮膚を滑らせておれの体調を心配してくれる。じゃあ大丈夫か? いや、大丈夫じゃない。他人から見てどんなに馬鹿馬鹿しいことでも嘘は嘘で裏切りは裏切りだ。おれは嘘をついて恋人の優しさに漬け込んだ。
「う、……うそついた、わるい、でも嫌だ別れない」
「さっきから色々すっ飛ばしすぎだよ、まず別れないからその心配はゴミ箱に捨てちゃって」
困ったように笑われながら言われた言葉に固まる。嬉しい。ほっとして、思い直す。いや、駄目だろ、甘やかしすぎだ。駄目男を甘やかしてくれる恋人なのはわかっていたし、それに漬け込んだのもおれだが、だからって嘘を吐かれてたのにそんなに簡単に許しちゃ駄目だろ少しは怒れ。
「別に怒らないよ、……なんでわざとできないフリしたのか、とか、なんでそんなに焦ってるのかがよくわからないから理由は気になるけど、別れるほどのことじゃないよ」
「……だ、…………駄目な男だと、構ってくれるだろ」
ぽかん、と目も口も開いた恋人に目を逸らす。前言撤回は聞きたくない。でもされても仕方ない。たったそれだけのために本当ならできるのに、できないふりをしてお前の時間をたくさん奪った。
「……あは、かわいい」
何が。今おれと喋ってるだろ。急に話を逸らした恋人に自分の今の立場も忘れて眉を顰めて視線を戻した。ら、しっかり目が合って固まる。なに、
「かわいいね」
頬を滑っていた手が首筋に回って踏ん張ることも忘れてそのまま導かれるように引き寄せられて唇に柔らかい感触。何度も触れたことがあるから正体のわかるそれは恋人の唇で、ちゅ、と何回も音を立てて啄まれて瞠目する。可愛いって、おれか? 愛しさが溢れ出るキスの嵐に困惑する。怒られるどころか可愛がられてる。なんでだ。
「駄目でも駄目じゃなくてもローのこと大好きだよ」
言葉でも示されて恐怖に冷えてた心臓が急激に熱を取り戻した。
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