タイトルを考えるのが死ぬほど苦手
← →
2024/12/30 ロシナンテ
誰のものでもない・僕と幸せになりませんか・苦い恋を齧る
※現パロ
※なんでも許せる人向け
▼
吐く息がほんの少し震えるのは寒いからじゃなくていつもよりどこか近い距離感で並んで歩くロシナンテくんに緊張してるから。普通に前を向いていたら身長差で顔が見えないからか背中を思い切り丸めて私の顔を覗き込んで、さみィなァ、と屈託なく笑うロシナンテくんに驚いて瞬く。前を見ないで歩いたせいでどてんと大きな音を立てて転んだいつものドジには驚かないけど、さっき向けられたまっすぐな笑顔にどきどきして大丈夫と心配する声が上擦ってしまった。
「今年最後のドジだな、お前巻き込まなくて良かったぜ」
だいじょーぶだいじょーぶ、と笑いながら起き上がった姿に緊張が緩んで微笑む。
「さみィのに付き合ってくれてありがとな」
「煙草今年もやめられなかったね。さっきもローくんに怒られてたでしょ」
わは、と誤魔化すように笑って目を逸らされた。親戚のように仲の良いご近所さんたちで大晦日を過ごすロシナンテくんたちに、なんの縁か私も混ぜてもらえてそれだけでじゅうぶん満足だった。はずなのに、あの暖かい団欒を抜け出して今こうしてロシナンテくんと外を歩いてるのはほんの少し欲張ってしまったせい。煙草が切れたから買ってくる、とカウントダウンも三十分を切ってから言い出したロシナンテくんに私も一緒に行く、と言ったのは考えなしの発言だった。何買うの?なんて誰にも聞かれなかったことに安心して、ロシナンテくんにも断られなくて、ほんの少し、束の間のデート気分。
コートを取りに行ってる間にローくんにきっと煙草をやめろと怒られていたらしいロシナンテくんを改めて思い出して笑う。防寒を終わらせた私を視界に入れた瞬間、ローくんのお叱りから逃げるように私の腕を掴んでしんと冷える外へ二人で飛び出した。こんなに冷え切ってるのに、さっき掴まれた腕だけ、まだあったかい気がする。
「お前は煙草、嫌いか?」
「うーん、体のこと考えたらもう少し減らして欲しいけど…………煙草の匂いのしないロシナンテくん、想像できないしなあ」
「……おれくせェ?」
「くさくないよ」
伝え方を間違ってしまったのか不安そうに尋ねられて慌てて首を振る。煙草の匂いを感じられるくらい、そばにいられるのが嬉しいのに。だけどそんなこと言ったらこの穏やかな関係が終わってしまいそうだから心の奥にしまい込む。大晦日に一緒に過ごせたし、コンビニまでの数分間だけどふたりきりにもなれた。これ以上望んだらばちが当たっちゃう。
「ロシナンテくんは来年の抱負決めてる?」
「おう、来年こそは男として意識してもらう」
一瞬でばちが当たっちゃって傷付く暇もなかった。なんの用事もないのに一緒に抜け出した時点で多くを望んじゃってた。そのばちを確かに受け止めて、そうなんだ、と明るく聞こえるように白い息を吐く。
「………………おれ今なんて言った?」
立ち止まって硬い声で呟いたロシナンテくんに、ドジっちゃったんだな、なんて傷付くのも忘れて笑ってしまう。きっと、当たり障りのない抱負を教えてくれるはずだったのに、芯にしっかり刺さっている本音がこぼれ落ちちゃったのがロシナンテくんの反応からわかった。
「ローが! 出掛ける前に! 余計なこと言うから! あのクソガキ!」
寒さで失恋の痛みが鈍っていた私の目に地団駄を踏んで急にローくんに怒り出したロシナンテくんが映って目を丸くする。
「……お前もちょっとは気にしてくれよ」
「? ……ローくんに何言われたの?」
「そっちじゃね〜……」
大きな体を丸めて道端に蹲ってしまったロシナンテくんに一瞬手が伸びて、慌てて引っ込める。距離感を間違えたから、失恋したのに。懲りないなあ、なんて反省している私の手が大きくて温かい何かに包まれて瞬く。引っ込めたはずの手が、ロシナンテくんに掴まれてる。
「……大晦日に一緒に過ごしてくれるくらいにはおれのこと嫌いじゃねェんだろ?」
「? ??」
当たり前のことを問われて頭にはてなが浮かんで消えてくれない。
「……とことん相手にされてねェのはわかってるけどよォ…………ちょっとはおれのこと男として見てくれよ」
▼▼
「コラさん付き合ってもねェのにここ誘ったのか?! やべェぞまじでなんでたまにやることなすこと怖いんだよ極端なんだよ考えて外堀埋めようとしてんならそれも怖いし何も考えてねェならそれはそれでいい歳した大人がこえーーーよ!!」「しー!! しーー!! 聞こえるだろ!!」「聞こえちまえ!!」「なんでだよ?!」「コラさんやべェからあの人逃がしてやった方がいい!!」「おれの味方しろよ!!」「おれはまともな大人の味方だ!」
← →