タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2022/04/01


「あ、サンジくん、今日のおやつも美味しそうだね、ありがとう」
「んんんどおおいたしましてえええ! エッアレッおれが持ってくよ?!」
「んふふ、今日はだめ。回収もしにきちゃだめだよ」
「ンエッ?! なんで?!」
「今日は女部屋で美味しいデザート片手に恋バナ大会するから♡」
「?! いやいやおれはほらただのウエイターだし? 別に盗み聞きとかもしないし?」
「だめ」
「ハイ、わかりました、行きません」

 扉を開いた瞬間騒がしいやりとりは聞きたくなくても耳に入ってきた。盗み聞きしたわけじゃねェ。誰もが入れるダイニングでそんな会話をするほうが悪い。クソコックを言いくるめることに夢中でおれが来たことにも気付かなかったのか背中がおれの体に激突しそうになって腕で支えれば、目を丸くしておれを見上げるから思わず舌打ちをする。ごめんね、と笑いながらトレイに乗った人数分のデザートを落とさぬよう体勢を整えて今度こそダイニングを出ようとしたのにふと立ち止まって眉を顰める。ほんの少し首を傾けておれに視線を向けた女のにんまり笑う。何故だかぎくりとして視線を彷徨わせる前に言葉をぶつけられる。

「ゾロも盗み聞きはしないでね」
「色ボケコックじゃあるまいし誰がするか」
「テメェ誰が色ボケコックだボケマリモ」
「テメェしかいねえだろ」

 背後で崩れ落ちていたクソコックがゆらりと立ち上がった気配と怒気に刀に手をかけて応戦しようとしたのに振り返る前に怒気が霧散して手が行き場を失う。

「やっべマリモに構ってる場合じゃなかった。今日のおやつはアイスだから溶ける前にとっとと他の奴らにもくばってこねェと! お前のはカウンターに置いてるから勝手に食え。それじゃあレディ、楽しんで♡」
「うん、ありがとう」

 慌ただしくカウンターのアイスを指差されて何もかもがやかましいコックがダイニングを出て一瞬で静けさが戻ってくる。なのにいつもなら落ち着くはずの静けさがなんだか気不味い。なんでだ、と考える暇もなく楽しげな笑い声が聞こえてぎくりと肩が跳ねそうになる。気まずい原因が分かっても理由が分からなくて苛立ちを隠せないおれを不思議そうに下から覗き込む姿に視線を逸らしたくても目の前の女は逸らさせてくれない。またあのおれを無性に振り回すにんまりとした表情を浮かべられて、ぴく、とこめかみが引き攣る。

「盗み聞きじゃなければ来てもいいよ、当事者だからね」

  ▼▼

「テメェ今のどういうこっ、」
「あ? ……何お前ずっとそこに突っ立ってたのか? とうとうマリモが本当のマリモになっちまったのか可哀想に。そろそろあいつら食い終わるからルフィに取られんぞ」

 意味がわからなくて叫んだ瞬間、目の前にいたはずのやつがコックに変わっていて最後まで言葉を紡げず尻窄む。料理人の指がカウンターを指し示して釣られて視線を向ければ今さっきまでアイスの頂点に乗っかっていたはずの苺が溶けたアイスに埋もれて沈んでいた。